自分で選択したこと
「君を守るといいながら、ある意味では弱いんだ。ボクは」
光夜叉は悲しげに笑っている。
「ボクはヒカルの魂を…命で『チカラ』を使い、あやかしを退治している。これからも、ボクを使っていくかい?」
「どうする?」と投げ掛けられても………。
命を削り、あやかしを退治する覚悟を問われ、僕は黙ってしまった。
今、どのくらいの寿命となっているのだろうか?
何歳まで生きられる? 何年くらい残っている?
「大丈夫だよ、すぐに命が尽きることはないよ。君のお母さんから返してもらった分はまだ残っているから。でもね、それでももっと欲しくてどうしようもないことがあるの」
光夜叉の紅い瞳が血のように濃く深みを増して僕を見つめた。
「それでも、ボクを使いたい? 断ってもいいよ。君はお人好しだから難しいかもしれないけど。現にボクを呼んだってことは久瀬 昴のところに行きたいでしょ?」
「助けに行きたいんでしょ?」と言う光夜叉に僕を息をついた。
「そうだよ。僕は自分でやると決めたんだ。
久瀬、一人に行かせたくないんだ。だから、光夜叉……君が僕の魂で『チカラ』を得るというなら、使えばいい。僕も君を剣として使う」
「分かった。なら、はやく本来の姿を思い出してね」
僕の中に戻ったのだろう。光夜叉の姿はなかった。
久瀬の後を追おうと静かな教室を後にした。
「久瀬!」
久瀬の後ろ姿を見付け、僕は呼ぶ。
「何一人で行こうとするんだ」
「神代」
「見るって言った時、自分は最後までやろうって思ったんだ」
自分が頼りないことは分かっている。
何ができるか分からないけど、置いていかれるなんて悲しいではないか。
「僕も探す…といってもあそこに行くってことでいいだよね?」
「そうやね。もう依頼者の兄は元動物病院に向かっているだろうから。止めなければな」
「間に合うだろうか」
僕の言葉に久瀬は困ったように笑って「できる限りのことはしよう」と言った。
できる限り。確かにそうだ。
出来ることしか自分達にはできないのだ。
できないことにずっと囚われてしまってはいけない。
僕達はただの人間に過ぎないのだから。
― ― ― ― ― ― ― ―
隣町と自分住む町のちょうど境界線にその病院は建ってあった。
人の手入れがされていない駐車場へと入る道は自転車の車輪程の道幅しかなく、草木に隠されている。
「着いているのだろうか?」
「あれから連絡がこないから、何とも言えないが先に着いてるんじゃないか」
バスに乗り、ここに到着をしたのはお昼を過ぎた頃。久瀬に連絡をした時に依頼者を捜しにいったのであれば、先に着いているかもしれない。
「暗くなってきたなぁ」
嫌にどんよりと灰色の雲が空を覆うのを見上げ、ひと雨降りそうだと思いながら先を急いだ。
「どうやって呪いを解く気なんだ?」
「現場にいってどんな呪いか確認しなければ判断できへん。それにだいたいは判らないことが多いから、封じた方が速いんや。あと、さっきお札を渡したやろ?」
本家から取り寄せた封印用のお札だ。
俺が作ったもんより強力やから襲われたらお見舞いしてやれ……とバスに乗っている時に渡されたお札はズボンのポケットに入っている。
それを確め、僕は頷いた。
「本当はすべて丸投げしたいが、今はそう訳にいかないから。巻き込んでゴメン」
「もう謝らなくていいよ。僕は久瀬についてきただけだ」
「昴でええよ」
「え?」
「名前で呼んでや。友達やろ? 俺ら」
僕は再び頷く。
久瀬を下の名前で呼ぶとスバルは嬉しそうにはにかんで僕のことも名前で呼んだ。
「ヒカル! 何があっても守るからな」
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ノリで書いているところがあるので、物語に矛盾点があるのかヒヤヒヤしながら突き進んでいます。
オリジナルで長編を書くのは初めてに近く自分の腕磨きのために書いています。
(あと、光夜叉という気に食わない(笑)キャラを書きかったので)
読者様には思うところがあるかもしれませんが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。




