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光夜叉  作者: ソラネ
第二章
36/128

失望した?


  動画として収められた映像は衝撃的なもので再生し終わった後、しばらくはその場で固まっていた。

先に口を開いたのは久瀬からだった。


「行かなきゃアカンか」

「行くってあそこに?」


 元動物病院に行くという久瀬に正気なのかと疑った。

自分だったら行きたくない。

動画の内容が本当であるならば、あそこに行ったら消されてしまうのではないか。


それに久瀬は『呪われた』っていうが、あの動画が届いたからって本当に呪われているのかも分からないじゃないか。

そう久瀬に言ったところ。


「夢にみるようになった」


 久瀬は『呪われた』ことに否定はしなかった。


「呪いって暗示なんよ。主に思い込みで生きてるもんは大抵かかっている。良いも悪いも含めてな」


 心当たりは無いか?と久瀬は聞く。

黙っている僕を見て久瀬は話を続ける。


「どうすれば、人を呪いで殺すことができるか。それは自らの手で居場所を手放すことだよ。手放す理由はなんだっていい。居場所を手放すようにあやかしはあの手この手で人を呪うんだ」


 例えば、誰かに嫌われている、恨まれている、存在を否定される……精神を疲労させて傷付けてあちら側に僕たちを追い立てようする。

耐えきれず自分から居場所を手放させて堕ちてくるのを待っている。


「呪いを解くには原因をなんとかするしかないんや」


 久瀬の言っていることは分かる。

僕も『蜘蛛』と対峙し、向き合わなければいつまでも母に対しての感情に一端の折り合いがつかなかった。


「だけど、あそこに行かなくたって他に何か解決する方法はあるのでは……」

「俺はそうかもしれないが、依頼者逹は違う。

今朝、依頼者の兄から連絡があった。妹がいなくなった、捜しに行くっていう内容のな」

「それって……」


 昨日、僕と会ってから依頼者は消えたということではないか。


「呪いは拡散されつつある。誰かが止めなきゃあかんやろ?」


 僕に歯を見せて笑うと久瀬は出ていった。


 どうすれば、よかったのか。

あの時、逃げなければ依頼者を助けられたかもしれない。

僕も久瀬と一緒に元動物病院へ行くべきではないのか?

でも、自分が行って何ができるのだろうか。


今の僕には何もできない。


 依頼者を置いて逃げた時、光夜叉は僕を襲った。

契約した時とは違い、僕から強引に何か『チカラ』を奪おうとしていた。

僕は光夜叉を拒絶した。僕を守るといったアイツはあちら側に連れていこうとする奴らとどこが違うのか分からなくなった。


あぁ、そっか。僕は光夜叉が怖いのか。


「光夜叉」


 僕はアイツの名前を口にしていた。


――なぁに?


 彼は自分の中に住んでいるので、すぐに応えてくれた。


「君もあちら側……『あやかし』なのか?」

「そうだよ」


 僕の目の前に姿を現し、光夜叉は自分の口で応えた。

にっこりと笑った顔が「それがどうした、何か問題があるのか?」と言っていた。


「僕の血や肉、魂は君たちあやかしにとって『チカラ』を得る…ご馳走なんだよね。君もそうなんだろ?」


 光夜叉は表情を崩さず、僕を見つめている。それは僕の言葉に否定はしないということだ。


「君は僕の何を食べて『チカラ』を得ているんだ?」

「それを聞いたところで君はボクを責めるのかい」

「別に責めるつもりはない。光夜叉がいなければ、僕は今頃あちら側にいた。

僕は知りたいのは君は僕の何を得ているのか、だ」


 痕も何もない綺麗な頬を確認して聞き返した。


「君には実体がない。いったいどうやって存在している?」

「……魂だよ。ボクは魂を喰らうことで『チカラ』を得ている」

「アレをする意味は?」

「『チカラ』を得るためさ。ボクは『チカラ』がないと剣としての役目を全うできない」


 「失望した?」と小首を傾げて光夜叉は聞いてきた。


「君を守ることが使命なんていいながら、ある意味では弱いんだ。ボクは」


 悲しげに光夜叉は笑った。


お読みいただき、ありがとうございます。


長編を書くのって難しいですね!

キャラの性格がブレブレしてきます(汗)

特に主人公は主体性がないので性格が周りの登場人物に影響されます。

光夜叉はブレているようで、一番人格はしっかりしているで、まだ書きやすい子ですね。

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