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光夜叉  作者: ソラネ
第二章
31/128

依頼者の兄の話。


「ねぇ、いいの? 僕といて」


 がやがやと賑わっている学校の食堂の一角。

二人がけのテーブルに僕と久瀬は座り、昼食をとっていた。


「他の人とご飯食べなくていいのか?」

「別にええよ。神代とバイトの件で話したいことあったしな」


 旨みを含んだ湯気を漂わせている醤油ラーメンに手を合わせて「いただきます」と久瀬は言うとふーふーと息を吹かせ、麺を啜っている。


滅多に来ない食堂に居心地の悪さを覚えながら、売店で買った焼きそばパンを齧り、バイトの件について話を聞いた。


「この前、会った依頼者たちのこと覚えてとる?」


 強引に連れていかれたファミレスで出会った兄妹を思い出しながら、こくりと頷く。


「その兄さんと連絡をとって次の金曜日に会う約束になった。そこで、神代にも来てほしいと思ってん」


 何か用事はあるか?と久瀬は聞いてきた。


「特に用事はないよ」

「じゃあ、一緒に話を聞こうか。

あと、ここの場所、教えてくれないか?」


 依頼者の妹が訪れたという心霊スポットのことだった。

昔は動物病院で夫婦が経営していたが、潰れてしまった場所。

潰れた理由というか、噂は様々あって…夫の多額な借金のせいだったり、狂犬病で狂った夫婦がその病院に訪れた人々を襲っていたとかだったり、夫婦は動物を虐待していて呪われてしまったなどがある。


 十数年で尾びれに背びれにと噂が追加され、どこからともなく流れた噂だと思うし、信じてはいない。


「教えるのは構わないけれど、行かない方がいいんじゃないのか?」


 僕は絶対に行きたくない。

噂が嘘であったとしてもあの映像が映された場所に行く気になんかなれない。


「だと思った。さすがにムリに誘ったりしないさ。ただ、依頼者の兄さんとは一緒に会ってほしいなー」

「まぁ、それくらいだったら……」

「あんがと」


 依頼者の兄を会うことについて承諾すると嬉しそうに笑った。


「ずっと一人だったから神代とこういう話ができてめっちゃうれしいわぁ」



― ― ― ― ― ― ― ―



 金曜日になり、僕と久瀬は依頼者の兄とファミレスで再会した。

学校帰りだったのだろう。互いに制服だ。


「妹抜きでコンタクトをとってきたのには何か理由が?」


 幽霊なんて信じていなかっただろう、と丁寧な口調で疑問を投げかける。


「ああ、信じていないさ。お前たちは胡散臭いからな。でも、他に伝手はないから連絡させてもらった。後日、この分を追加で支払って もいい」

「いえ、この件に含まれる話であるなら、いりません」


 相談だけなら聞きますよ、と久瀬は言った。


「妹のことだ」

「妹さん? あの依頼してきた妹さんですか?」

「あぁ、そうだ。アイツはおかしい」


 依頼者の兄は語る。


「あの日、おそらく胆試しに行ってきたという帰りだと思われる。

両親が共働きで帰宅が遅いのをいいことに妹は夜遅くに帰ってきた。たまたま廊下に出た俺は妹と鉢合せした」


 玄関でぼんやり立つ妹に「そこで何をしているのか?」と聞こうとした時、妹は土足のまま上がろうとし、慌てて止めたという。


「寝ぼけていたのだろうと思い、その時は特に気になることはなかったが……なんというか妹の言動?、仕種に違和感を感じるというか……」


 何とも微妙なため、妹の違和感の正体を言い表せられないと言いつつ、話を続けた。


「何といえば伝わるかな。家族だから何となく分かる感覚っていうのか……アイツ、あの時、怯えていたように見えただろ?」

「見えた……?」


 依頼者たちと初めてここで会った時を思い返す。

依頼者の妹は、怖い夢とあの動画のせいで自分の身が危ないと、呪いで殺されるじゃないかと怯えていた。


「兄さんから見て妹さんは嘘をついているということですか?」

「はっきりとウソかなんて分からないさ。んなこと、でも時々アイツはおかしいんだよ。

アイツに黙って下校時に行ってきたんだ、この前。そしたら、アイツ…平然と笑って友達と帰っていったんだよ。あの動画に怯えてたクセに……」


 妹へ違和感を持った兄は、下校する時間に妹が通う中学校に行き、校門から出てきた妹は友達たちと楽しく雑談しながら、帰っていくところを目の当たりにした。


最初に相談を受ける前にその光景を見たため、今回妹が相談をするのなら自分も……と思ったんだそうだ。


「アイツは……普通だった」

「じゃあ、あの相談内容はウソだった?」


 僕の言葉に依頼者の兄は首を横に振った。


「アイツは、そういうものを少なからず信じる方だ。だから、あの日、オカルト系のオフ会にも参加したり、お前らみたいなやつに助けを求めたりしているんだよ」


 だからこそ、下校時に見た妹の姿に違和感を覚え、過ごしていく内にますます腑に落ちないところが増えていったのだと依頼者の兄は話した。


「怖がっている人間があんなに普通にしていられるんだよ」


 依頼者の妹のことを信用するな、と彼女の家族である兄は言った。


お待たせしてすみません&ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

世界の片隅でしがない社会人を送ってますため、続きを更新ができないことがあるかもしれません。

気長に待っていただけますと、幸いです。

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