二人の依頼者 2
「どういうことか説明してくれないか?」
依頼者の二人がファミレスから出ていった後、僕は反対側の席に座り直した久瀬に問いかけた。
「俺の仕事に君を巻き込んでみただけ。
普通に勧誘しても神代は断ったやろ?」
当たり前だ。何故、自分から厄介事に首を突っ込まれなきゃいけないのか。
「でも、今回からではない方が良かったかもしれないなぁ……まぁ、何事も経験が大事やしな、いっか」
何一人で納得してるんでしょうか。
「それと少し神代のやり方が怖いねん」
「はぁ……」
「この前、黒い虫を追い払ったとこを見てふと思ったんや。
力にのみこまれるじゃないかって。
手に余る能力は命に関わることが多々ある。
力がある分、すごいけど……身を滅ぼすじゃないか見てて怖いんよ」
久瀬がいうには、力があるからこそ、凶器を持って振り回す子供に見えるのだそうだ。
「だから、俺と一緒にバイトして能力の扱いについて身に付けてみない? それとついでにあやかしを退治して人助けしてお金を稼ぐ………ええやん」
何がええやん、なのか。
全然良くないし勝手に巻き込まないでほしい。
…でも、この力の扱い方かぁ。
あまり、自覚はなかったけれど、光夜叉に誘導されて剣をふるっているからなぁ。
それにあのヘンテコな形から変わるかもしれない。
光夜叉からは僕が忘れているから本来の姿じゃないだって言われているが。
「俺、引っ越したばかりで土地勘がないからさ、神代にも協力してほしいねん。お願い!」
付き合ってほしいと久瀬は手を合わせ、頼まれた。
「……分かった。今回だけ協力する。勝手に巻き込まないでくれ」
力になるか分からないけれど。
渋々、僕は久瀬の仕事に協力することにした。
「あ、そうそう」と久瀬は鞄から長方形の紙を取り出し、僕の前に置いた。
「お札?」
「うん。必要になるかもしれない。協力してもらう以上、神代に危ない目にあわせたくないからな」
久瀬はお札の効力を説明し始める。
一度だけ危害を弾いて、浄化するらしい。
また、これを作ったのは久瀬自身だという。
「俺、なぜか昔からこういった道具作りと簡単な浄化ができてん。一族の中でも珍しいって言われててな。でも、お払いには向かないからこっちに……あ、これは関係ない話やな」
特に気にしなかったが、久瀬は誤魔化すように笑って話題を変えていく。
「あの兄妹…主に妹さんから話を聞いて何か気になる点ってある?」
「気になる点…?」
思い返しても何も浮かばず、首を傾げつつも「特には、ない」と応えた。
「うーん、何も感じなかったかー」
「気になることでもあったのか?」
「気にすることがないってことが気になる。
あの動画は『穢れ』が酷くて何も見えなかったんやけど、妹さんには呪いがかけられた風には視えなかった」
荒々しく酷い動画の画質は、『穢れ』のせいだと久瀬は言う。
悪霊やあやかしから発する気が『穢れ』となって空間を満たしているから、見えにくくなっているらしい。
その場に肝試しで行ったにも関わらず、『穢れ』を貰わないことが不思議でしかたないと。
「彼女の元からの体質か、それか何か別の理由があるかもしれんが、喫煙所に入って煙草の臭いが付かないみたいなものや」
例えがおっさんっぽいが、久瀬が言っていることが分かる気がする。
心霊スポットに行ったのがきっかけなはずなのに何も纏わり憑いていないのが、不思議だと思う。
「とにもかくにも、まずはお兄さんと会ってみてからだなぁ。妹さんに隠れて会いたいようやし」
久瀬はそういうと飲み物を取りにテーブルを離れた。
新年、あけましておめでとうございます。
最近、ブクマやポイント、閲覧者が増えてびっくりしつつ、とても嬉しく思います。
これからもお話が増えていくと思うので、よろしくお願いいたします。




