二人の依頼者
(こんな話、聞いてないんだけど……)
非難がましく隣に座る久瀬を睨む。
言ってないからな、と目で軽く返され、久瀬はテーブルを挟んで向こう側に座る『依頼者』に視線を向き直した。
テスト期間が終わり、あとは帰るだけになった時、久瀬が僕を強引に学校から連れ出され、隣町のファミレスにいた。
そこには待ち合わせにしていたらしい二人の男女がいた。
その二人も学校帰りらしく、女の方は中学の制服を、男の方は高校の制服を着ている。
「あの、本当に助けてくれるんですか!?」
自己紹介もそこそこに先に口を開いたのは、女の方だった。
少し顔が強張られせ、どこか焦った様子だ。
「可能な限り助けるつもりです。なので、どんなことで依頼されたのかお聞きしても?」
久瀬は口元だけ笑みを作り、相談内容を話すよう促した。
敬語な上にいつもはしない表情で話す久瀬の姿におかしな気分にさせた。
「私にも信じられないことなんですけど……」
一瞬、顔を下に向け、隣に座る男と僕たちを見回した後、制服のポケットから携帯を取り出しつつ、話し始めた。
「先月……ネットの友達と肝試しに行ったんです。その時は特に起きず、解散になったのですが、それからずっと怖い夢をみるようになって……」
携帯の操作をし、真っ黒い画面を表示させた。
「この前、ダイレクトメールでこれが届いていたんです」
知らないアカントから届いたのだという女はそのまま指をタップして再生させた。
ずっと暗く粗い画質の画面が表示され、
はじめは何が映っているのかさっぱり分からなかった。
だが、再生が進む内に室内で撮られた映像であることが分かり、画質の乱れだと思っていたところは、何かが動いているのだと判別できるようになってくる。
(奥で何か揺れている……?)
画面中央の奥、天上から吊るされた物体がブランコのように揺れている。
急にざわざわと人の声が聞こえ始め……一気に音が膨れ上がった。
中央の奥で何が揺れているのが、一瞬であったが見えた。そこで再生は終了した。
……人、だった。
一瞬しか見えなかったが、中央の奥で揺れていたのは人だった。
本物であるのか、作り物であるのか判別することはできなかったけれども、お腹の中に重たいものがずしりと乗った。
嫌な気分だ。
「ごめんなさい」
顔色を悪くした女は、携帯を置いたままトイレへと速足で消えていく。
「俺はよく出来た映像だと思っている」
今まで女の隣で黙っていた男が口を開く。
「この動画を見たことがあるんですか?」
「ああ。ただ、妹は大げさに言っているだけだ」
そう言った男はテーブルの上にメモの切れ端を載せ、久瀬の前に置いた。
「これは?」
「俺の連絡先だ。あらためて相談したい。妹にはそのことは話さないでほしい」
「分かった。後でこっちから連絡しますね」
久瀬はメモの切れ端を受け取ると素早く鞄の中に閉まった。
「ところで、お兄さんにはそういった動画などは届いていないのですか?」
「あぁ、届いていない」
「周りでおかしなことは?」
「特には……」
「すみません」と女は戻り、座った。
「大丈夫ですか?」
僕は声を掛けると顔色が悪くはあったが、小さく笑みを浮かべ「大丈夫です」と返ってきた。
「この動画に映っている場所に見覚えはありますか?」
「おそらく肝試しに行った潰れた病院だと思う……でも、はっきりとは分からないです」
「病院か……」
「ここから車で一時間ほど…けっこう、ここら辺では有名なスポットなんです」
「どこにあるか知っとる?」と僕を見て久瀬は聞いてきたので、頷いた。
行ったことはないけれど、どこにあるのか通りやだいたいの場所は把握している。
「私も……こんな風に、怖い夢と同じようになるじゃないかって怖くて……お願いです、助けてください」
「怖い夢と動画が同じなんです」と女は首を擦りながら言った。
閲覧、ありがとうございます。
のんびり投稿なので、お待たせしてしまうこともあるかと思いますが、これからもよろしくお願いします!




