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光夜叉  作者: ソラネ
第二章
27/128

僕は借りているだけ

*投稿が遅くなってすみません。



「お前ってやっぱりすごいな!」


 少し興奮した様子で僕……光夜叉を見つめ、話し続ける。


「まさか一瞬で散らすなんて、すごい力だ」

「ボクを褒める前に次からアレを何とかした方がいいよ? 君は曲りなりにもお払いできるんでしょ?」

「あれ? 興味ない風にしてて、俺のSNS上のバイト、知っていた?」


 ニコッと口元だけ小さな笑みを浮かべた。

何も知らない自分は、二人のやりとりをただ眺めていたが、光夜叉は交代しよと言ったので戻ってくる。

自分で自分の身体を動かせるのを確認していると久瀬は少し引き締めた顔をして。


「なぁ、神代。俺の仕事を手伝ってくれへん?」

「嫌だ」

「即答やなぁ。なぁ~、頼むよ。このとおりや」


 手を合わせて久瀬は自分の仕事を手伝ってほしいとせがんでくる。


「神代の力があれば、困っている人を解決できるかもしれん。それほど、あの力…あやかしを払うあの能力はすごいんや。使わないなんてもったいない」

「僕がすごいわけでは……」


 褒めてくれているところ悪いが、アレをやったのは光夜叉であって僕自身ではない。


「俺を助けると思って、な?」


 嫌だと断っていると腕を掴み、「お願いだ」とぐっと久瀬は迫った。


「ごめん。僕にはできない」


 手を払い除けた。

ドキドキしながら、久瀬を見る。


「そっか。それは残念や」と引いた久瀬の目は言葉とは裏腹に見えた。




 

――君ってさ。実際はお人好しだよね?


「それって今、聞くことなのか」


――だって、掃除を押し付けられた上に閉じ込められるって……。

それとして助けてって呼べよかったのにね。


「今はしなくていいよ、その話は……」


 久瀬がいない間に僕のところにやってきた同級生たちは今日は塾でテストだから、早めに行かなきゃいけないなどで自分に体育館倉庫の掃除を押し付けてきた。


何が「どうせ、ヒマでしょ?」だよ。

断れないように言葉で退路を削られた僕は仕方なく引き受けたものの……。

案の定、誰かに閉じ込められてしまい、見回りにきた用務員のおじいさんに出してもらった頃には外は暗くなっていた。


「もう、六時か……」


 テスト前のため、部活動はしておらず、生徒はおそらく僕くらいしかいない。

携帯画面を覗き、時間を確認しつつ暗い廊下を歩き、教室に着くと鞄を掴んだ。


――行きはよいよい。帰りはこわい。

お月さまが大きい日はよくみえるっていうよね。


 何がよく視えるっていうのか。

非常灯の明かりしかないなか脅かすようなことを言わないでほしい。


「よかったね。ボクがついていて」


 いつの間にか姿を現した光夜叉が背中から僕の肩に腕を回した。


「少なくとも君を『常闇の住人』から守ってあげられるよ」


 甘えるように抱きついてきた光夜叉を気にも止めず、廊下を歩く。


 階段を下りようとした時、下の階からペタ…ペタ…と人が歩く音が響いてきた。


 自分以外にも誰か残っているのか。


 その足音はこちらに向かっているようで、辺りの暗さから一際、不気味に感じ階段を下りずにいた。


「ボク、ちょっとみてくるよ」


 僕の身体を通り抜けて階段を下り、角を曲がった光夜叉の姿は一瞬だけ見えなくなったが、すぐに引き返してきた。


「引き返そう。静かに、喋られないで」


 何を見たのかと聞こうとした時、口を塞がれ、階段を足跡を立てず戻るように言ってきた。

僕は光夜叉をいうようになるべく音を立てないようにしながら階段を上がった。


「気付かれる前に別のところから学校を出よう」


 階段を上り切ると廊下を歩き、別の階段の方へと向かう。げた箱から遠回りになるが仕方ない。

二階の廊下の窓から外を歩く人影が校舎の陰に消えていくのを見えた気がした。


「あっ……」


 偶然か、何かのいたずらか。

僕の横側の窓に蝙蝠が激突し、バシッと音を立てた。


「ヒカル、はやく隠れて!」


 ペタペタペタペタ……と足音が速く大きくなるのを耳にし、近くの教室に入るとそっと扉を閉めた。


息を潜めていると階段を上ってきた何が教室の扉前でピタッと足音が止まった。


 はやくどこかに行け!


 扉の向こう側にいる気配に向けて念じる。

音の出所を探しているのか音がした付近から、なかなか去ろうとしない。

それどころか気配が強くなってきている。


教室へと近付いてくる足音に、どうするのかと光夜叉を見た。

光夜叉は首を横に振り、「我慢して」と口を動かした。


 いつもなら退治をしたがるくせに。

そんなに相手は強いってことだろうか。


ドン、と扉を叩く音に緊張が走る。


どうか教室の扉を開けないでくれ、という願いが通じたのか。

数回、ドン、ドンと叩く音が響いた後、ペタペタと離れていく足音がした。


充分に離れたことを確認し、教室から出ると速足でげた箱まで行き、校舎から出ると振り返らずに走った。



「ついてきてないよね?」


 比較的に外灯で明るい道に入り、僕は走るのをやめて歩く。

「いないよ、大丈夫」と光夜叉は、頭上を泳ぎ、周囲を見回して言った。

振り返って何もないことを確認し、安堵の息をついた。


「何故、あの時君は退治することを選ばなかったんだ?」

「主様を守るのにそれがいいと選択しただけだよ」

「相手は強かったのか?」

「無理に相手にしたくなかっただけ。穢れが強いと君とボクも耐えるのが辛くなる」

「穢れ?」


 今まであやかしを退治してきたけれど、何も感じなかった。


「いずれボクと深く関われば、君も分かるよ」


 光夜叉は僕と向き合うと胸に手を当てた。



いつも読んでいただき、ありがとうございます!

前月、ブクマやポイントが増えてて嬉しかったです。

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