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光夜叉  作者: ソラネ
第二章
26/128

影虫

※bl要素が少しあります。ご注意ください。


「おはよう、ヒカル」


 目を覚ますと鼻の先に光夜叉の顔があり、眉が寄る。


「何をしようとしている……」

「おはようのチューをしようと思って」

「嫌だよ。離れろよ」


 チェ…と言いながら僕から離れ、ぷかぷかと風船のように浮かび泳ぐ。


「誰にも邪魔されないと思ったのになぁ」

「そもそも何でキスをしたがるのか」

「う~ん、まず一つはやさし~く起こそうと思って。ほら、もう遅刻だよってね」

「えっ」


 時計を見れば、後20分で遅刻確定だ。


「あとは~……あれ? 待ってよぉ」


 チューはともかくもう少し早く起こせよ、と思いつつ、素早く支度を終え家を出ると学校まで走った。




「遅刻だぞ」


 出席簿を取り始めていた担任の織部が教室をゆっくり入る僕に気付いて言った。


「あ、そうだ。遅刻した罰として放課後、理科準備室をするように」


 今思い付いたようで、織部は「頼んだぞ」と言うと残りの出席簿を付けて教室を後にした。


雑用を押し付けれてしまった。

席につき、ため息を吐いた。


「俺も手伝うぜ」

「何が?」

「放課後の掃除だよ……ハッ、もしやバックレる気か? 神代って見た目に反して結構、わるぅやな」

「そういう君は、意外だね」

「意外? 見た目どおり真面目な男やで」


 そんなに不良っぽく見えるかなぁって呟き、首を傾げていた。

確かに不良っぽくは見えないが、真面目なヤツに全然見えない。むしろ、遊んでそうだ。


「おい、スバル。この前貸したCD、持ってきたんだろうな」

「あ! わりぃ。明日持っているわー」

「そういって明日も忘れてきたら、取りにいくぞ」


 うん、友達と遊んでそうだ。

クラスのカースト内上位にいるグループの輪に入っていくのを見てて思った。


なぜ、僕に話しかけてくるのやら。

クラスにはたくさんの友達がいて一人にはならないだろうし、わざわざこっちに話しかけてこなくてもいいのでは?

それとも、何か裏があるのだろうか。

周囲から奇異な目で見られても構わないような………。


――卑屈になりすぎ。


 僕の穿った思考にストップをかける。


――色々、考えたって他人の思惑なんて測れっこないよ。明かされるまでずっと悩んでいるつもり?


 時間のムダだと光夜叉は言いたげにフッ、と息を吐いた。


――それより、今日の放課後。一人で学校にいる気? 君のことだから狙われると思うよ。


 誰でもいいから誰かと一緒にいた方がいい、と光夜叉は話す。


誰でもいいと言われても、頼れる人は限られてくる。

他人に頼るくらいなら、放課後は残らずに帰えろうか。


 うぅ…と悩んでいる内に放課後になってしまった。


「準備室はこっちじゃないぞー。そっちにあるとすれば玄関だ」


 普通に帰ろうとしたところを織部に見つかってしまい、諦めて理科準備室に向かった。


 仕方ない。さっさと掃除をして帰ろう。


「カミシロ、なぁ、神代、待って。俺も行くから」

「いいよ、自分一人でも平気」

「ちゃう、ちゃう。俺もオリベに任命されちまったの」


 タイミング悪く織部の視界に入ってしまい、僕と一緒に久瀬も理科準備室の掃除を任されてしまったらしい。


「俺は遅刻しておらへんのに!」と言う久瀬は完全にとばっちりであった。



「まぁ、いいや。ちゃちゃと掃除をしてしまおう」


 理科準備室に着くと僕と久瀬は掃除用具を持ってホコリなどを掃いていく。


「うわっ」


 久瀬の声のすぐ後にどさどさと部屋の隅に積んであった段ボールが崩れる音が室内に響いた。


「すごい音したけど、中の物、壊れてない? 割れていない?」

「ゲホゲホ…っいじょうや。中はただのガラタクみたいだ」


 埃が舞い、咳き込みながら段ボールの中を確認した久瀬は応えた。


 段ボールの中は教材や用具など何に使うか分からない物などが入っていた。

それらを詰め直し、元の場所に戻そうと持ち上げた際、影がモゾモゾと動いた気がした。

 目を凝らしてみると無数の黒い小さな虫が散り散りになって逃げた。


 ぞぞぞ……と背筋にかけて悪寒が駆け上がった。


「さっさと終わらそう」


 なるべく段ボールに触れないように目に見えて汚れている箇所を中心に掃除を進めていった。

わざわざ、段ボールを退かして背筋を凍らす必要もない。


「なぁ、神代ってこういうのに結構、強かったりする?」

「え……」


 見上げたまま久瀬は聞いてきた。

こういうのって何?と思いながら、不意に天井を見上げ、自分の顔が引き攣るのが分かった。


 天井には、ところところ大きなシミのような黒い塊が張り付いてあった。

それがモゾモゾと動いているように見えるのは目の錯覚であってほしい。


「虫…だよな? なんでこんな……」


 一部、蛍光灯が点かず暗くなった周りを黒い影になった箇所にもさっき見た虫が無数に密集していた。


「とにかくここから出よう。こっちに落ちてこられたら嫌だわー」


 トラウマもんだわ~と言う久瀬に同意し、僕はこくこくと頷く。

黒い天井からはやく抜け出したいと迫る心が理科準備室の扉に向かう足に少しずつ速くなってくる。


――待って。


「待って」


 光夜叉も気付いたのだろう。

僕と同じタイミングで声をあげた。


「なんや、はよここから出よ……げッ」


 あと少しで扉に手をかけれるというのに……と一歩先を進んでいた久瀬は僕の方を振り返り、動きを止めた。


久瀬も気付いたのだろう。

黒い虫が僕たちの影に迫り、足元の側まできていることに。


「僕たちの動きに合わせてこっちに移動しているんだ」


 まるで影を食べつつ、無数の虫は僕たちのもとへ迫ってきているみたいだ


「動かなければ止まってるみたいだけど……」

「せやけど、このままここで突っ立っていろっていうんか? すぐそこにドアがあるんや。一気にいけば、出られるかもしれん」


 久瀬の言うとおりだ。

あと二、三歩ほど足を踏み出せば扉の前に辿り着ける、だが。


「追いつかれればどうなるのかな」

「分からん。イヤな想像しかでぇへん」


 無数の虫に包まれるなんて勘弁だ。


「久瀬は、アレの要因って分かるか?」

「おそらくというか、おおかた『あやかし』絡みやろうな。めっちゃ臭うん」

「この虫自体がそうなのかな……」

「たぶんな」


 僕はぎゅっと唇を結んだ後、光夜叉と呼んだ。


 ここから出るために力を貸してほしい。


――いいの? ボクが出てきても?


 いいよ。他に良い方法を思い付かないんだ。


――わかった。力を貸すよ。だから、目をつぶってボクに代わるから。


 フッと身体が軽くなる。

テレビ画面を眺めているかのような視界が広がっている。

光夜叉は僕の身体をしゃがませ、虫が群がる方へ手を翳した。


「何を始めるんや?」


 僕の行動を見ていた久瀬は、驚きの声をあげる。


「……ッ! 突然、何するや!?」


 翳した手から閃光が放たれる。

一瞬、室内に満ちた光で眩んだ視界がはっきりしてくると黒い虫はどこにもいなかった。


「虫が、消えた……?」

「だいたいはね。でも、一部は陰に隠れてるから気を付けて。さぁ、さっさと出ようか」


 クスッと笑う僕に久瀬は目を見張った。


 そりゃあ、驚くよな。

普段、愛想のない自分が笑ったのだから。


 光夜叉は気にも止めず、扉の方へ向かうのを見て久瀬も歩き出し、理科準備室から無事に出ることができた。

いつも作品を読んでいただき、ありがとうございます。

お話を書きたい欲で拙い文章なりにもここまで書くことできました。

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