変り者の転校生 2
「神代!」
授業が終わり、久瀬が周りの人たちと仲良さげに談笑しているのを横目にそそくさと教室を出たところ呼び止められた。
「ちょっと、待って。一緒に帰らんか?」
慌てて教室を出てきたのか、リュックの中から乱雑に入れられた教科書やノートなどが覗かせている。
「クラスの誰かと帰らなくていいのか?」
「?おう、今日は神代とい…帰ろうと思ってん」
一緒に帰ることに対して何も応えず先に進んだが、久瀬は特に気にせずに隣を歩き、話しかけてきた。
「なぁ、なぁ、いつからなん?」
「何が」
「あやかしを視えるようになったのは?」
「さぁ?」
どう答えようか迷う。
興味本位で聞かれた質問だ。下手に返して
笑われるだけだ。
――ん? どうして、「あやかし」って分かるだろうね……。
退治しているところを見たってことは、久瀬もあやかしを視えるのでは? とそんな疑問に辿り着く。
動揺しすぎて気付いていなかった。
「久瀬は、その……視えるのか?」
久瀬は至極あっさりと「そうだ」と応えが返ってきた。
自分もそうだろう?と聞かれ、頷いた。
「それで相談されることもあるよ」
携帯をちらりと翳す。
SNS上のアカウントで占いをしたり、幽霊やあやかしについての相談を受けたりするのだそうだ。
「俺と同じく視える人がおるって思って、
話しかけたんや。なっかなか居らんし、そんな体質なやつ……珍しくて。
あ、突然やったからびっくりさせてしもうてごめんな~」
「へぇー」と軽く言葉を受け流す。
視えるという共通点があるのに、彼に深く関心を持てないのは自分の性格上の問題で、それだけで仲間意識を持てなかった。
でも、同世代で視える人と出会ったのは初めてであり、心のどこかで気になっているのは事実であった。
「確かに視えるけど、それだけだよ」
「そんなわけない、退治もしててすごいやん」
キラキラした笑顔で褒められ、無ず痒さを覚え、戸惑った。
襲われるから対処しているだけだけど……。
「これからも俺と仲良くしたってーな」
「俺はこっちだから」と別れ道で久瀬は手を振り、それぞれの家路と向かった。
悪い人では無さそう。
――ホントに~? すぐに信用しない方がいいよ。
ボク達の『チカラ』目当てで仲良くしようとしているかも。
そうかな? まぁ…そうかもね。
でも、僕なんかすぐに役に立たないって分かるよ。
光夜叉がいなければ、僕は何もできないのだ。
すぐに僕から関心を無くして、別の誰かの輪の中に入っていくだろう。
自分はそれを眺め、輪の外でいつもと変わらない日常を送るのである。
――ボクは君がいなければ、何もできないよ。
そんな想像をしたせいか光夜叉は悲しげに呟いた。
「神代、おはよー」
「オハヨウ……」
翌日、教室に入ったのを確認した久瀬が声をかけてきた。
僕も教室内にいた他の生徒も驚いているのを知ってか知らずか久瀬はこっちにやってきた。
「今日も声、ちっちゃいなぁ。てか、驚いた顔をしてどないしたん?」
「いや、なんでもないよ。気にしなくていい」
向こうで何か囁かれているけど、気にしないようにするが、好奇心に晒されるのは、好きではない。
「そういえば、連絡先交換してないことに帰ってきたから思い出してな」
携帯を翳し「教えて」と久瀬は言った。
断る理由を思い浮かばなかったため、複雑な顔をしながら連絡先の交換をした。
周りを見回したつもりもないが、視線を向けられているのは分かる。
(どうして、こんなやつと…?)と思われているだろう。
伊藤とその仲間によって自分に貼られたレッテルは、重い。
「おーい、スバルー」
「ナニィー? じゃあ、あとで連絡するな」
えへへ、と嬉しそうに笑う久瀬に気付けよと思うが、空気を読めないらしく交換後は元の場所に戻っていった。
そもそも、みんなおかしい。
自分の席につき、あらためて教室内で見回して思った。
伊藤について誰も何も言わないのだ。
出席をとる際、伊藤の名前があげられなかったり、伊藤の席だった場所が久瀬の席になっていたり……。
伊藤が居ないことに誰も気にしていなかった。
でも、伊藤たちがもたらした自分の評価は消えたわけではない。
伊藤がいなくなった穴を伊藤の友達たちが、久瀬が、埋めていた。
奇妙な空間に放り込まれたみたいだ。
いずれ、自分もまた伊藤の存在を忘れてその空間に馴染んでしまうのだろうか。
それでは、あまりにも…………。
ガヤガヤとした教室内は、朝のチャイムと共にかき消されていった。
久瀬 昴はエセ関西弁でしゃべってます。
転校が多い子なので、親しみやすいように、だとそうです。そんな設定にしてます(変な関西弁ですみません)




