捕まっちゃったね
「覚悟するんだ、蜘蛛」
そう言い放ったのを聞いて、僕は思わず『声』=『少年』を見た。
……見たといっても意識を傾けたといった方が正しい表現かもしれない。
――ここから出るには『蜘蛛』を退治しなきゃ出られないよ?
あっさりと返ってきた言葉に僕は唖然とし、どうやって倒すんだと見つめ返えせば少年は困ったように。
――ボクはあくまで『チカラ』を貸すだけだよ。
その『チカラ』を君が使いこなさなきゃ……。
けど、今回はボクも一緒に退治するつもりさ。
急に『チカラ』を使いこなせる人なんてなかなかいないからね、と『少年』は言いながら、『蜘蛛』が放つ『糸』をふわりと躱していく。
いつもより身体が軽い。
身体能力が向上している気がした。
<羽虫ノ如ク跳ビヨッテ…オ前ガ…オ前のノセイデッ……>
跳ぶように攻撃を躱す姿に『蜘蛛』は苛立つのか罵る言葉を口々に吐いているが、こっちは『糸』に捕まれないよう避けるしかない。
――躱しているだけじゃ切りがないね。
『少年』も気付いているのか今の状況に「どうしたものか」という声が聞こえた。
どうすればいい?と聞くとう~ん、と考え唸っている。
――あの『糸』がやっかいなんだよねぇ。
何か手はないのか?
――あるには、あるんだけど……
『少年』は迷う。その隙が油断を呼んだ。
(あ……)
突如、頭上から黒い塊が降ってくる。
気付き、振り向き様に避けようとするが押し倒されてしまう。
「しまった」
仰向けになった状態で目の前にはある黒い物体を眺める。
あの黒い蜘蛛だ。
短い毛が胴体に生え揃っているのを見て、ぞわぞわと走り抜ける悪寒と目眩を覚えながら固まってしまった。
<ツカマエタ>
『蜘蛛』は笑った。
知らぬ間に『糸』で誘導をかけられていたようだ。
――あーあ、捕まっちゃったね。
『少年』は慌てる様子をなく僕を見て言った。
「なんでそこにいるの?」という問いかけにニコッと微笑んで。
――やっぱり、痛いのって嫌じゃない?
「――――ッ!」
ザクッと肩に蜘蛛の脚が突き刺さる。
痛みを避けるため、僕から離れたのだ。




