あの人と同じ顔の鬼
23/4/4にて、投稿したものを再投稿しております。
また、本日2度目の投稿になります。
槐と同じ顔をした鬼が僕たちの前にいた。
(なんだろう。雰囲気が違う…?)
僕たちが鬼に気付いたように鬼もこっちの存在に気付いているだろう。
だが、こっちに見向きもせず、どこか憂いた横顔が遠くを見ていた。
「ボクではダメなんだ」
動向を見ていると鬼はぽつりと呟いた。
(ボク…?)
「主は応えてくれない。やっぱり、器がないとダメなのかな?」
鬼の手には、水晶が輝いている。
「き…汚い手で主に触るな……!」
光夜叉の表情が激怒に変わったのを見てあの水晶は結界の『核』…槐の魂だと悟る。
鬼に向かおうと僕から離れるが、すぐに膝を付き、倒れた。
それでも、鬼へ、いや、槐のもとに這うとする。
「蘇ってくれないんだ。カラダ、使っていいよっていったのに、応えてくれないんだ 」
ねぇ、どうすればいい?と僕たちに聞いてくるが、視線は水晶を見つめていた。
「気に入らないのかな。代用品だし。
君らならさ、もしかしたら応えてくれるんじゃない? 外に出てくるようにいってよ」
「む、ムリだよ」
「どうして? こんな小さい塊の中に閉じ込められてるの、可哀相でしょ?」
彼女はきっと応えない。僕にはそう確信があった。
彼女は会おうと思えば誰かに会えるのだ。
魂の繋りがないなら、繋りがある僕を通して会えばいいのだ。
だが、それをしない。会う気がないのだ。
「きっと応えない。君と同じ鬼になることをあの人は望まない」
そう伝えると鬼はそっかと小さく呟き。
「きっと報われないようにできてるんだよ」
鬼は嘆く。
「誰かの犠牲の上に成り立つ世界なら、世界の方が滅べがいい」
恨みを隠った声だった。
鬼は、あやかしに肉体を与えた。
ここには、たくさんのあやかしが蔓延っている。
現世で居場所の失い、肉体のない数多のあやかしが常闇の王が眠るこの地に集まっている。
彼らは光の中にいるよりも闇の中に潜むことを好む。
鬼は、何百、何千…というあやかしに『器』を与えてしまった。
「どうする?」
共食いを始めたあやかしを鬼は冷めた眼で眺める。
「ここで喰われるか、逃げるか。君次第だよ」
今、喰われたくないならば地の果てまで逃げろ、と鬼は笑った。
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