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光夜叉  作者: ソラネ
第四章
114/128

君を生かす理由はある?


 カサカサカサカサ。


日の当たらない暗い場所から小さな物音が聞こえてくる。

音のした方で視線を向けると一瞬だけ何かと目が合った気がしたが、何もない。


(監視されてるなぁ)


 昼だというのに窓が少ないのか日当たりが悪く、暗い箇所が多々ある。

そこから眼が、部屋から出た時やトイレ、居間など出入りするごとに覗いてくる。


何か異変があればアレが知らせるのだろう。


(逃げる気なんてないのに)


 織部宅に連れてこられて一夜を過ごした。逃げるならとっくに家から出てる。


織部は家に居ないようで人の気を感じないほど静かだった。

夜中も物音がしなかったので、もしかすると昨日の夕方頃に出てってから家に帰ってきていないのかもしれない。


なお、杏寿は僕の部屋に朝食を持ってきてくれた後、学校に行ったようだ。


(外にもチラホラと変なのが徘徊してるな)


 リビングの窓から見た庭には、四つん這いで歩くケモノが家の周りを徘徊していた。


そういうモノを慣れない人が視たら腰を抜かす造型だ。

一瞬だけ人に映るからドキリとする。

窓に近付くと僕の前に立ち憚った。これ以上、出ていかせないように。


(織部の使い魔? 見れば見るほど異質だ。別のものをムリヤリ繋げたみたいだ)


 痛々しくなってくる。

目を逸らし窓から離れれば、ケモノも徘徊を再開した。


一人で住むには、大きい一軒家。

複数の家族が暮らせそうな広さ。


配置された家具も少し傷んでいたり、埃をかぶっていたりもするが、長く大切に使われていた痕跡を感じ取れた。


(写真くらい……片付けたらどうだろうか)


 飾り棚に置かれた写真たてには、家族三人の写真が幸せそうに飾られていた。



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



 暗闇って恐怖を駆り立てるための脅しだよね、と耳元で囁かれる。


夕方、織部宅から『ウラマチ』へと連れてこられ、神社の一室に閉じ込められた。

それも目隠されたうえに手首を縛られて。


――こうなるよね。君が余計なことをするから。


 視覚を奪われているせいかやけにハッキリと光夜叉の声が聞こえる。


余計なこと……それはあの家の周りを徘徊してるケモノを退治したことだ。

その後、すぐに戻ってきた織部の前で監視していた『眼』も刺した。


――そりゃあ、拘束されるよね。

まぁ、アレを退治したとしても外には出られないからね。これはただの腹いせだね。


 織部宅にいたモノは、監視と脅しだ。近付けさせないための。


強力な結界が織部宅の敷地内に張り巡らされていた。

触れれば人の皮膚を焦がし、アヤカシは塵にするほどの威力をもっていた。


光夜叉はそれを楽しそうに僕に教えた。


――杏寿って子、逃がそうとしてくれたみたいだけど。ムリだろうね。とても痛くて痛くて……死んでたかも?


 さっきから何が言いたいんだ。


不安を煽ることばかり。君の方こそ僕を怖がらせて楽しんでるだけじゃないか。


――だって、思わない? 君を生かす気なんて無いってことに。


 僕は意味が分からず、応えられない。


――どっちでもいいんだろうね。生きてても死んでいても身体さえ残っていれば。

何も君に伝えないのってそういうことでしょ。君の命は関係ないって。


 君をこんな場所に放り込むんだもの…と光夜叉の言葉にあらためて自分は数多の気配をひしひしと感じた。


「ヒ……」


 思わず引き攣った声が漏れる。

いつの間に無数のアヤカシに囲まれていたのか。

自分の身体に纏わりつく空気が僕たちの様子を窺っている気がした。


けれど、こっちに近付いてこないのは、光夜叉がいるからだ。寄せ付けないようにしているのだろう。


――ねぇ、主。今からおこなう儀式って本当にボクを別の器に移すためかなぁ?



――ボクには、君を殺そうとしているしか見えないよ。


 

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

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