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光夜叉  作者: ソラネ
第四章
112/128

道をつくって。

今月五回目の投稿です。

※三人称視点です。


「ごめん! うまく聞き出せんやった」


 東絛と合流した直後久瀬は謝った。


「仕方ない。元々教える気なんてなかったんだ」

「でも、明日の夕方…ウラマチにある神社に来いって、杏寿にいわれた」

「……」


 東絛は考え込むように黙った。そして――。


「……入り口」

「は?」

「ツ……姫川さんは今もお前の家にいるのか?」

「まだ帰らずにおるけど」


 記憶を失った姫川は自分の家に居づらくなり、久瀬の家から学校に通っていた。


今日も中学校と高校の中間値点にある公園で待ち合わせし、一緒に帰宅しているのだと言う。

高校より先に中学校の授業が終わってるため、すでに公園にいるだろうということで二人はそっちに向かった。




「ウラマチにある神社に来るよういわれたんですね」


 公園の入り口で待っていた姫川に神代が織部に連れてかれたことを二人は伝えた。

また、杏寿から明日の夕方にウラマチの神社に行けば神代と会えると云われた旨も合わせて云った。


「それってどこら辺にあるとこ? まだ上手く把握できなくて」

「あ~。そこは昔…があって……アイツが…………」

「だから、……がいたのね」

「なぁ、ウラマチに何があるってゆうんや?」


 東絛と姫川は小声で話し合うのを見て久瀬は割って入った。


「俺にも分かりやすいように説明してや」


 「このままじゃ内容に付いてこれなくなる」と言う久瀬に姫川は「そうねぇ…」と呟く。


「あそこは、おそらく『入り口』なのよ」

「入り口? 何のや?」

「異界であったり、アチラ側の住人…あやかしの住み処だったり……人やあやかしによっては様々な『入り口』よ」


 「きっと今世の記憶を奪われたのも近くなんだわ」と姫川は小さな声が口から零れた。


「でも、それらは『入り口』に過ぎない」


 静かになった姫川に代わるように東絛が言葉を紡ぐ。


「もっと奥に在るのは、結界の核であり、あやかしを統べる常闇の王だ」


 断言する東絛に久瀬は疑問をぶつけた。


「なぁ、本当に先輩は何者なんだ?

なんで常闇の王の封印場所を知ってる。俺だって知らへん。そんな本家しか……本家すら知っとるか分からへんようこと……」


 「なぜ、知っているんだ?」と久瀬は訊く。


「あやかしやら妖怪やらの大将が居る場所に行くんや。ヒカルを助ける時、自分の判断を鈍らせとうない」

「俺は……普通の人間と変わらない」

「普通の人間? どこがや!」


 線引きしようとする東絛に血が上る。


「何も視えへん人のことを普通の人間ってゆうんや。俺らは……俺らは、違うやろ」

「そうだね。血が、魂が、何かが、少しみんなと違うんだろうね。でも、俺は死にかけたことで過去を見ただけにすぎない。

何者だと聞かれても普通の人間と変わらないとしか答えられない」

「そんなわけないやろ。ヒカルとずっといて……」

「……近くにいただけだ」

「は?」

「昔、先祖が『龍』を信仰していたが。

君よりも『チカラ』は無いんだ。たまたま手に入ってきた『龍』の記憶を頼り動いているだけだ」


 お前が羨ましいよ、と寂しそうに東絛は目を伏せた。


「『チカラ』があるお前が。浄化のチカラを持ってるんだろう。

ヒカルにまだ自我があるのは、久瀬が無意識に浄化で進行を遅らせてるからだ。

俺には穢れを消すことができない」


 ずっと近くにいて助けられないんだ。


東絛の言葉に久瀬は口を閉じた。

これ以上、口を開けば互いを傷付ける台詞しか出てこない気がしたからだ。


今、したいことはそうじゃないと分かっているからだ。


「スバル……あなたを仲間外れにする気なんてないわ」


 二人を静観していた姫川は告げる。


「あなたの『チカラ』はどうしても必要になってくる。道をつくってほしい」


 深淵(ソコ)に続く道を……。

そう言って姫川は憐愍(れんびん)を纏った表情で微笑んだ。


「千年経っても縛られ続けるなんて……本当に理不尽ね」


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

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