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光夜叉  作者: ソラネ
第四章
110/128

ぬけがらとなる前に

今月3回目の更新です。



 神代(カミシロ) (ヒカル)が二階の階段から一階まで落ちた。


それは、体育の授業が終わり、生徒らが教室へ戻る時に起きた出来事であった。


犯人は神代と同じクラスメイトの男子生徒だった。

以前から神代に対し、特に当たりが強かったと他の生徒らが話す。


その後、加害者の生徒は三ヶ月の停学が下り、彼の姿は学校で見かる人はいなくなった。



「……今回は四針と頭部を縫うケガで済みましたが、これ以上彼を守ることは難しいと思われます」


 病院のロビーで他人の迷惑にならぬよう小声で電話口に男は話す。


数分前から男はどこかへ電話をかけ、学校で神代がケガを負ったこと、自分は付き添いで病院にいることなど事情を話している。


「儀式の遂行をはやめることを推奨いたします。ご検討を……ええ、それでは」


 男が電話を切るとちょうど看護師が男の方に歩いてくるのは見えた。

その看護師は救急車に搬送された神代に付き添った男を見ていた。


「神代さんのお連れの方ですね。保護者の人と繋がりましたでしょうか?」

「いえ、繋がりませんでした。学校の方には連絡はしましたが……」

「そうですか、困りましたね。とりあえず先生がお呼びです。来ていただけさませんか?」


 看護師は保護者の代わりとして男…織部(オリベ) 九郎(クロウ)を医師のもとへ案内した。






「もう病院にはいませんよ」


 受付の女性は応えた。


「入院履歴にもありませんので、診断後ご帰宅されたかと思います」


「そうですか」と返し、東絛は病院の受付場から離れた。


 東絛は授業を終え、下校時間になった後すぐに病院を訪れた。

六時限目が始まる前、神代が病院に搬送されたと久瀬から連絡があり、迎えに来たのだ。


(入れ違いか。だとしたら家にいるかも……)


 神代の家に向かおうとした時、東絛の携帯に着信が入る。

携帯に表示される画面には久瀬(クゼ) (スバル)の名前が表示されていた。


「東絛先輩、ヒカルに会えましたか?」


 着信を取ると久瀬の焦った声が鼓膜を揺らす。

その声音から嫌な予感がよぎった。


「病院にいなかった」

「クソ。やられた。

先輩、アイツ…織部先生も学校におらへんのや。おそらく一緒に病院へ行ったんや」


 まだ織部は学校に戻ってきていない

と久瀬は言う。

だとしたら、織部はどこにいるんだ?

神代も病院にはいない。今も二人は一緒にいるのではないか。

学校にも病院にもいない二人は今、どこに?


何か目的を達成するため、織部は動いたのではないかと東絛は思った。

神代は織部に連れ去られた可能性があると。


「何か心当たりはないか? 織部先生が行きそうな場所に」

「行きそうな場所……まさか本家に連れていった?」

「いや、どうだろう。ずっと神代の一族をこの町から出さなかった人達だ。ヒカルを外に出さないだろう。何か起きるか分からないからな」


 本家は『鬼』を恐がっている。


だから、生活費を渡し、一人ではただただ広い家に神代を放っておけるのだ。


そんな本家が本拠地に神代を連れてくるよう織部に命じるのは考え辛かった。

何より神代の中に潜む『鬼』が結界から離れようとはしないだろう。むしろ、拒むはずだ。


「なぁ、織部 杏寿はまだ学校にいるか? 確認してきてくれ」

「…? なんでや?」

「その子も関わってるかもしれない」

「……わかった。見てくる」


 久瀬は「またあとでかけ直す」と言うと通話を切った。

今は学校は放課後だ。織部 杏樹はとっくに下校したかもしれない。

でも、ヒカルの居場所を見つける手がかりは彼女しか思いつかなかった。


 東絛は過去(ユメ)の記憶を追慕する。


主の死に荒れ狂う『鬼』の魂が宿った『(チカラ)』の鞘になった女がいた。


女は自分自身の胎、次に生まれ来る娘の胎へと『鬼』と『剣』を封印し続ける術をつくり、施した。


それと同時に女児しか生まれない呪いをその術の上からかけ重ねた。


……そう本来であれば彼女の子孫は『女』しか生まれないのだ。


では、なぜ神代 光は生まれたのか――?


(呪いが弱まったのか、術が変化したのか)


それは分からない。だが、神代家の血を継ぐ女の胎により『鬼』は封印している。出来ているのだ。


(本家の人達は杏寿という子を使って何かしようとしている。だから、ヒカルに結婚しろといったんだ)


どんな方法で『鬼』と『剣』を移す気でいるのかしらないが、神代の魂は無事では済まないだろう。


神代 光の母のように魂のない抜け殻になってしまう。


(ヒカルの身が危ない)


 東絛は病院を出て学校へと向かった。

ここまでご閲覧くださり、感謝いたします。

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