五話 再会
俺たちは今、別の領主が統治する城壁に囲まれた移動ができる街、別名『陸の戦艦』に向かっている。
陸の戦艦は街自体が巨大なミスリルの円盤の上にできており、戦闘状態になると1メートルくらい浮く。なんでもミスリルに彫ってある重力魔法陣に魔力を流し込むと3日間ほど浮いているらしい。他にも防衛機能に特化した武装が配備されていて、防衛戦で無敗を誇るとか。
その陸の戦艦に行こうと街道を歩いていると、あることを忘れていた事に気づく。
「そういやぁ、俺お前達の名前まだ聞いてなかったな。なんて名前なんだ?」
そう聞くとドワーフの方はクレハ、エルフの方はミハエルだと教えてくれた。
俺の名前はゼロ=ガロットだと言うと素晴らしい名だとか褒めちぎってきた、気分は悪くはないが恥ずかしいからやめさせた。
確か、クレハは使役魔法わ使えたはずだ。
「クレハ、ちょっといいか?」
「なんですか?」
俺は使役魔法がいつでも使えるのか、発動条件は何かなど疑問点を聞いていくつか分かった事があった。
・飽和魔力が多くないと発動不能。
・俺が半径1メートル以内にいる事。
・使役したい魔物の上位の魔物もしくは神獣をテイムしていること。
主に上記の条件が挙げられた。他にも色々と細々とした条件はあったがカバンの中で行えば全く問題なさそうだ。
街の宿屋ででも試してみよう。
それから特に変わった事もなく街について審査の列に並んでいると…
「お〜い、ゼロさ〜ん!」
呼ばれたから、取り敢えず振り向いてみたら…
「あんたは確か…盗賊に襲われてた商人だよな?」
「その節はお世話になりました。」
俺に何かようか?と聞くと商人は、
「実は私はこの街のお嬢様の専属商人でして、貴方が助けてくれたことを連絡した所、お嬢様があってお礼をしたいと。」
少し俺は考えた…あの隊長が おかしな報告をして、こうなったとしたらこれは罠だからだ。
しかし、商人が行っているとおりなら行ったほうがいいだろう。
考えた結果、いくつか商人に質問をして、大丈夫そうだということがわかったからお嬢様とやらに会いにいく事にした。
そのことを商人に伝えると、商人に馬車に乗ってれと言われ、乗り込んだ。
(ちなみにクレハとミハエルは、鞄に小さな家を2つ建ててそこにいてもらっている。)
その馬車は、審査の列に並ばずに街に入ることができた。
これからどうするかを考えていると、お嬢様の屋敷についたようだ。
馬車から降りると、執事さんが応接間まで案内してくれた。
それから少しすると、お嬢様と屈強そうな男が入ってきた。
「この度は、私の商人を救っていただき、誠にありがとうございます。」
いきなりあたまを下げてきたので少し慌ててしまった。あたまを上げるよう頼んでやっと上げてもらえた。
「それでは、お礼は…白金貨3枚、これでどうですか?」
「し…白金貨3枚!?」
俺は目が飛び出そうになるほど驚いた。だって白金貨と言ったら黒金貨1000枚分もある。
俺たち平民は絶対に見ることすら出来ない代物だからだ。
「足らないでしょうか?」
不安そうにお嬢様が俺を見た…なるほど少なくて驚いたと思ったのか。
「いえ、白金貨を貰えるとは思っていなかったので驚いただけです。」
お嬢様はそうですかと言い、
財布から白金貨3枚を取り出して渡してきた。
「では最後にお名前を聞いてもよろしいですか?」
商人から伝わっているはずだがまぁいいか。
「ゼロ=ガロットです。」
鉄仮面を貫いていた屈強そうな男が初めて驚いた。するとお嬢様が…
「良かったですねダン。息子さんに会えましたよ。では積もる話もあるでしょうからここで失礼します。それとダン、今日から3日休暇をあげます。息子さんと遊んであげなさい。」
俺は驚いた、まさか死んだと思っていた父が生きていたなんて…
「あ〜なんだ…その、すまなかったな、帰ってやれなくて。」
その言葉を聞いて怒りが込み上げてきた。
「そう思うんだったらさっさと帰ってこいよ!父さん、あんたのせいで母さんが、どれだけ悲しんだことか!」
俺は怒鳴った思いをひたすらぶつけた。
それを父さんは、真剣な表情で聞いていた。
それが終わると父さんは、理由を説明し始めた。
「俺は、生活費を稼ぐために、とあるダンジョンに潜っていたんだ。だがそこで罠が作動して、かなり深い階層飛ばされたんだ。そのダンジョンから脱出したが半年前だ。その時俺はかなり衰弱していて遂に倒れてしまった所をお嬢様に助けられた。お嬢様は帰ってもいいと言ってくれたが、礼もせずに帰っても駄目だと思ったから俺は一年だけここで働く事にした。」
そういう理由を聞かされては、もう何も言えない。それからは、父さんがいたらこんなことあんな事が楽だったんだけどなぁ。とか笑い合ったりして少しずつだが仲を良くしていって屋敷から出る頃には昔から一緒にいた親子のようになっていた。
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