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剣聖と大賢者の弟子  作者: Lizard
3/4

③大賢者と剣聖の弟子

主人公初登場(*ノωノ)

勇者四人が召喚された、その次の日。


部屋の戸をノックする音が廊下に響いていた。

この部屋はレイロード帝国皇帝、アルガスト・レイロードの自室である。


「レイロード様!!ハイドラ様から返事の便りが届きました!!」


そんな部屋の戸を叩いているのは、ローブを身に纏い白く長い髭を生やした老人、グリムであった。



「真か!返事はどうじゃった?」

「まだ開封しておりません。念の為検査して()()()()の類は無かったと」

「ふむ・・・・・・ほう・・・・」

「どんな内容だったのですか?」

「うむ、やはりそう簡単に修行をつけてはくれないようじゃ。嫌だ、と書かれている。ある意味らしいと言えばらしいがな」


アルガストはくっくっ、と肩を震わせて笑った。


「・・・そうですか」


グリムは肩を落とした。

予想はしていたものの、やはり期待はあったからだ。


「ただな、代わりに弟子を送る、と」

「え?弟子、ですか?」

「ああ・・・前に一度子供を拾ったと聞いたことはあったな。恐らくその子じゃろう」

「ということは・・・まだ若いのでは?」

「ああ。まだ齢17だそうじゃ」

「齢17・・・」


レイロードもグリムも落胆してしまった。

剣聖と大賢者の弟子と言っても、その年では当の二人とは比べるべくもないだろう、と。

そう考えたからだった。

その考えは一般的に言えば正しいだろう。

――一般的に言えば


「その弟子というのは、いつ来るのですか?」

「それがの・・・手紙を読んだら謁見の間へ向かえ、と」

「・・・?どういうことでしょうか」

「分からんわい。ただ、勇者も呼んでおけ、とも書かれておる。これは嘘や冗談ではないじゃろう」

「あのお二方ならばそうでしょうね・・・」


アルガストとグリムは、手紙の通りに勇者四人を呼び謁見の間、勇者達とアルガストが初めて邂逅(かいこう)した場所へと向かった。


◇◇◇◇◇◇


「(なぁ、なんで俺達ここに呼ばれたんだ?)」

「(知らねぇけど、なんか用があるんだろ)」

「(考えても無駄よ。待ってれば分かるでしょ)」


勇者四人は皇帝の側で待機している。


(ふむ・・・この後はどうしたらいいんじゃ・・・)


勇者たちが小声で現状を考察する中、当の皇帝、アルガスト自身もどうすればいいのか分かっていなかった。


そして、その時は突然やってきた。



「お初にお目にかかります、皇帝陛下」

「「「「「!?!?」」」」」


その場にいた全員が声の方を向き、ただ驚愕するしかなかった。



全員の視線の先、そこには端整な顔つきの白い髪をした青年がいた。

声がするまで誰も気づかなかった。

つまり、勇者四人や皇帝、グリムはおろか、()()()()()()()ダラドですらも気づかなかったのだ。



「・・・お主が、ハイドラ殿とバルディオン殿の弟子か?」

「その通りです。大賢者アリアと剣聖リルティアが弟子、ライトと申します」

(おもて)を上げよ。此度はよくぞ来てくれた。それで、話を受けてくれると思ってもよいのか?」

普段は所謂お爺ちゃん口調に近いアルガストは、皇帝として喋る時だけ威厳の溢れる口調へと変わる。

これは幼い頃から皇帝として生きてきたせいで身についたものであった。



「はい。私の社会勉強に、ということで師匠が私を送り出した次第です」

「・・・なるほど」

アルガストは、大賢者と剣聖の性格を知っている。

ただ協力をしてくれるだけなわけがない、と考えていたのだが、弟子の為というならばまだ頷けた。


(本音を言えば、勇者の修行を社会勉強目的にされるのは・・・あまり嬉しいことではないのじゃがの)

 それでも大賢者と剣聖、の弟子が協力してくれるというのだ。

弟子の為なら大賢者と剣聖も多少は手伝ってくれるのではないか、という思いもあるが、どちらにしろ無下には出来ない。

魔王を敵に回すよりも恐ろしい。それがアルガストの大賢者と剣聖に対する評価であった。



「それでは、紹介しておこうか。こちらの四人が勇者だ」

「そうでしょうね」


既に勇者たちは皇帝に対して自己紹介を済ませている。

ライトはまだ勇者が誰か知らない、という考え来る配慮だったのだが。

既に気づいていたようで、大した驚きもなかった。



「一つ聞いてよろしいでしょうか?」

「構わん。私とは対等だと思ってくれ」


アルガストの言葉を聞いて驚いたのは、グリムとダラドを除いた兵士と勇者だった。

当然だろう。一国の、それも皇帝が何の権力ももたないであろう相手と対等だと言うのだから。

勇者達は相手もまさか王様なのか、と考えていたが、兵士たちはそんなことはないと知っていた。



大賢者と剣聖・・・それはどの国にも所属せず、全ての種族に対して敵対も協力もしない。それでいて圧倒的な武力を持つため、どの国も、それこそ魔王すらも何とかして仲間に出来ないか、と考える相手だった。

弟子とはいえその二人に近しい人物だ。上から目線に指図など出来るはずがない。



「勇者四人は・・・魔王と戦うことに決めた、ということですか?」

「そうだ。当然、本人の意思は尊重しておる」

「ふむ・・・薬品や契約も使っていないようですね」

その言葉は帝国が無理矢理勇者を戦わせようとしているのではないか?と疑う言葉であった。

しかし、アルガストもわずかに顔を顰める程度で、誰も指摘するものはいなかった。

勇者四人は驚愕していたが。



「無論だ。そのようなもので無理矢理従わせるつもりはない」

「なるほど・・・それでは、勇者達にはどこまでしてよろしいのですか?」

「どこまで、とは・・・?」

「修行の話です。私は安全な場所でずっと鍛錬を重ねる、などと言う生ぬるいことをするつもりはありませんから」

それはつまり、どこまで危険な目にあわせていいのか?ということだ。



「・・・申し訳ないが、それは勇者達に直接聞いてくれないか?」

「それもそうですね。それでは―――あなた達はどこまで覚悟していますか?」

ライトは刃弥達に呼びかける。

その眼には、お前たちには覚悟はあるのか、という疑問が宿っていた。



「出来る限りのことはやる――やります」

美奈が答え、それに他の三人が頷く。

全員、既に四人で話し合っていた。

覚悟は決めていたのだ。



「分かりました。敬語はいりませんので、よろしくお願いします」

「――!よっ、よろしくお願いします!!」

「「「よろしくお願いします!!」」」


敬語はいらないと言われた直後にも関わらず敬語使っていることに、勇者は気づかない。



「それでは――そこの・・・そこの方」

「・・・私か、ですか?」

「そうです。あと普段通りで構いません」

ライトが尋ねたのは騎士団長ダラドであった。



「あなたは?」

「私はレイロード騎士団団長ダラド・ファールだ」

「やはりそうでしたか。それでは・・・そうですね。一週間で勇者四人を戦えるようにしてもらえませんか?」

「・・・?どういうことだ?」

「私は人に教えることはやったことがありません。なので基礎だけであれば騎士団に任せた方がよいでしょう?」

ライトは人当たりの良い笑みを浮かべながらそう言った。

それは紛れもない正論だった。



「・・・分かった。その間、君はどうするんだ?」

「とりあえず、この国を見て回ろうかと。知識は身に付けているつもりですが、今までは山にこもっていたので。社会勉強だと言ったでしょう?」

「なるほど・・・」

「ライト殿」

「―?どうしました?」


ダラドとの会話の中で突然皇帝、アルガストが呼びかける。



「寝床はどうするのだ?必要であれば宿をとるか、もしくは王城の一室をお貸しするが」

「ああ、気にしないでください。何とかできるので」

「・・・そうか」


アルガストにとっては王城に留まっていてくれれば、というのが本音であった。

これまでの話を聞いていると、礼儀や常識もある程度学んでいるようであったが、ずっと山にこもっていたのであれば問題を起こすかもしれないの思ったためである。

それは必ずしもライトが引き起こすとは限らず、他の者が馬鹿な真似をしでかすかもしれない。そうなれば大賢者と剣聖を敵に回すかも・・・という考えもあったが。

いや、むしろ後半がメインだったのだが。



「それでは、一週間後にまた来ます」

「あっ、ああ。分かった」


次の瞬間、ライトは謁見の間の外へと歩いて―――


「「「「「―!!???」」」」」


行ったかとその場にいた全員が認識した瞬間、ライトの姿が消えた。



「・・・少なくとも、普通ではないようですね」

「そうだな・・・」


ライトがいなくなった謁見の間に、アルガストとダラドの呟きが漏れる。



「グリム、結界はどうじゃ?」

「はい・・・壊れた様子はありません。恐らく、一部の結界を解除したのではないかと・・・」

「ハイドラ殿の技術、か」

「恐らくですが・・・」



勇者四人は人が突然消えるという事態を前にして、ただ呆然と立ち尽くしていた。


次回、ライト視点


「ライトが消えた謁見の間に」って書こうとした意味が変わるので止めました(´・ω・`)

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