②あの二人
勇者たちの運命や如何に
―――こちら勇者、こちら勇者刃弥
俺達四人は、現在―――
――――如何にも謁見の間、な所で皇帝と遭遇しております
「ふむ・・・お主たちが勇者か」
「ハ、ハイ・・・」
「は、初めまして」
俺含め四人はこれでもかというほど緊張しきっている。
やっべ会話できる気がしねぇ。
「まず、謝らせてほしい。勝手に召喚したこと―――すまなかった」
そう言って皇帝は玉座から立ち上がり、
蹲り・・・地面に手を付け・・・
ああ、土下座ね。うん、土下座・・・・・・・・・
ってっちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!???
皇帝ですよね!?
「あっ、あのっ、皇帝様がそんな風に頭を下げるのは――」
「いや、これは当然のことじゃ。立場の上下など関係はない。私は加害者で、お主たちは被害者じゃからな」
「「「「えっ・・・」」」」
まさかこんな風に謝られるとは思ってなかった。
っていうか、ぶっちゃけ俺は「わーい異世界だー」くらいにしか考えてなかったし・・・!
日本での生活は退屈な感じがしてたしなぁ。
他の三人は知らないけど・・・
「とっ、とにかく、頭を上げてください・・・私は召喚されたことはもう気にしていないので・・・」
「俺もです」
「私も」
「俺もだ、です」
とりあえず海に便乗。
意外とみんな気にしてないっぽいなぁ。
「・・・そう言ってもらえると助かる。とりあえず、恐らく説明が必要じゃろうからな。ダラド」
「はっ」
玉座に座った皇帝に代わり、鎧を身に着けた・・・
アレだな。騎士だ。絶対騎士だよこの人。
イケメンというより、勇ましいタイプのかっこよさ。
「私はレイロード騎士団団長、ダラド・ファールだ。よろしく頼む」
「「「「よろしくお願いします」」」」
「まず、我々の願いは君たちに魔王を倒してもらうことだ。勿論君たちの意思を尊重するがな」
「魔王・・・」
魔王か・・・小説なんかじゃ実は人間側が悪、なんてこともあるからな。
気を付けてきこう。
「魔王についても説明が必要だったな。現在人族を積極的に滅ぼそうとしているのは一人だけだ」
いやちょっとまって。
え、何?魔王複数いるタイプ?
「言葉のせいで誤解を招くかもしれないが、魔王は全員が人族と敵対しているわけじゃない。敵対している、という意味では七人。その内自分から攻撃を仕掛けてまで滅ぼそうとしているのは一人だ」
おっと、いきなりテンプレが消えかけてるんですが。
魔王=悪の図式は成り立たないと。りょーかい
「しかし、一人と言ってもその部下や手下の軍も含めれば、相当な数になる。戦況が大きく傾いているわけではないが、我々は劣勢だ。このままでは近い将来敗北することになる・・・君たちの力を借りなければならないのは、申し訳ない。私の力不足だ」
うーん、いい人そう。
これで演技だったら超演技派俳優クラスだわ。
「あの、質問良いですか?」
「勿論だ」
手を上げたのは美奈だった。
「私たちはかなり平和な場所で生きてきました。そんな相手に勝てるような力があるとは思えないのですが・・・」
「ああ、先にその説明をすべきだったか。試しに、自分の力が知りたい、と考えながらアビリティと唱えてくれ。頭の中で意識するだけでも大丈夫だけどな」
まさか・・・これは・・・!?
「「「「アビリティ」」」」
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| 名前:高槻刃弥
| 種族:人
| 職業:火の勇者
| Lv:1
| 生命力>>128
| 魔力>>56
| 膂力>>172
| スキル...[剣術Ⅴ]、[魔術・聖Ⅲ]、[走駆Ⅱ]、[勇猛果敢]
| 固有能力:[火天]
| 称号『異界の勇者』
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ステータス画面きたあああああああ!!
テンション上っがるぅ!!
やっべスキルとかあるんですけど!
《異界の勇者》なんですけど!
あ・・・でもこれで実はステータスめっちゃ低い、とかだったら嫌なんだけど。
「失礼ながら[鑑定]させてもらいました。四人とも平均的な一般人の10倍ほどの基礎値です」
皇帝の側に控えていたローブ姿の爺さんが言うには、俺たちのステータスはめっちゃ高いっぽい。
基礎値ってこの生命力・魔力・膂力のことかな?
「ほう・・・さすがは勇者ですな」
ダラドさんが感心したような、というか獰猛な、笑顔を浮かべている。
アレまさかこの人ってバトルジャンキー系?
まぁでも、これでわざわざ勇者を召喚した理由が分かった。
「分かったな?お主たちはこの世界に来る途中で普通ではない力を得ておる。勇者の力は強大。故に召喚させてもらった。しかし・・・そのままでは魔王どころか、その手下の誰であろうと勝つことは難しい。お主らが儂らに協力してくれると言うならば、相当な危険が伴う。召喚しておいてなんじゃが、自分たちなら出来る、などと言う考えはやめておけ。お主たちがやりたいことを教えてほしい。勿論、こちらとしては協力して欲しいところじゃが、無理強いはせん。じっくり考え、明日にでも答えを―――」
「「「「やります!!!」」」」
俺達四人が叫んだのはほの同時だった。
四人とも驚いて他の三人を見回している。
・・・こいつらも前の世界じゃ不満だったのかもな。
俺としては、召喚されてスローライフを送る、なんて選択肢はない。
それじゃあ前の世界と大して変わらない。
多少の危険は覚悟の上だ。どうせなら冒険がしたいんだ。
・・・・・・ごめんやっぱ痛いのはやめてほしい。
俺たちが即答したことに皇帝は目を丸くしている。
「そうか・・・しかし、先ほども言ったように、過信は禁物じゃ。自分なら出来る、と考えているだけならばやめておけ」
皇帝はどうやら俺たちが軽い考えで受けたのではないかと懸念しているらしい。
話が本当なら自分の国のピンチだろうに・・・
「俺がやりたいだけす。簡単に勝てると考えてるわけでもありません。なので、出来れば鍛えていただきたいのですが」
俺の言葉に、皇帝・・・と俺意外の三人も目を丸くし・・・
ってオイ。何だその「お前本当に刃弥か?」って感じの顔は。
「・・・そうか。それなら止めはせん。ダラド、この四人をみっちりしごいてやってくれ」
「承りました」
そう言ってダラドさんと皇帝がニヤッと笑い・・・
あ、コレやっちまったかも。
その笑顔を見た瞬間にそう思った。
「レイロード様。発言よろしいでしょうか」
「?構わん。どうした?」
喋り出したのはさっきのローブの爺さんだった。
髭なげぇ・・・
「勇者様達は既に全員が魔術系のスキルを持っています。さらには属性ごとの固有能力も。大賢者と剣聖に修行を施してもらえるよう持ち掛けてみませんか?」
「むぅ・・・確かにそれが出来ればいいのじゃがな」
「あの二人は・・・私が修行を付けてもらいたいくらいですが。協力してもらえるでしょうか・・・」
「確かにあの二人は基本中立です。しかし、相手にとって利益があれば、全面協力とまではいかなくとも修行くらいならば問題ないのでは」
「ふむ・・・確かにそれぐらいならばやってもらえるかもしれんな。駄目で元々、とりあえず呼びかけだけでもしておこう。グリム、お主の使い魔を送れ。文面は儂が書く」
「はっ!」
うおう、とりあえずあの二人って誰だ。
そして爺さんの名前グリムなんだな。
っていうか騎士団長のダラドさんが修行をつけてもらいたいって・・・
うむ、色々気になるけど。
「四人の勇者よ。部屋まで案内させる。お主たちは休んでおけ。修行は明日からじゃ」
俺達四人はそれぞれ自室に案内された。
そして色々あったせいで疲れていた俺は、すぐに眠りについた。
ちなみに案内してくれたのはメイドさん。
めっっっっさ可愛かった!!!(心の叫び)
主人公登場は次回(´・ω・`)