エロピンク見習いの一日
「よく寝た」
オレ、ことエロピンク見習いの朝は早い。
こっそりメイドの目を盗んでやらなくてはならない事があるからだ。
何しろこの世界の大気は汚染されておらずオゾン層は丈夫そうだが、太陽光の通りが強く、平たく言えば日焼けが気になる。
前世での自分はティーン時代のケア不足がたたって気がついた時は若いうちからシミだのそばかすが出来ていた。
それをごまかすために真っ白になるまでファンデを塗り込み、ごまかしていたので一時は妖怪白塗りだとか
粉ふきババァとか悪口を言われていた。
どんな墓場で運動会のメンバーだよ。
なのでスキンケアと日焼け防止対策はかかせない。
と、いうかしていないと不安になる。
たとえればパンツなしで歩いているような不安だ。
スキルは必要の母というか。
幸いにして何とかしてスキンケア用品を整えたくあがいていたら「鑑定」スキルと「調合」スキルが
ある事に気が付いて自分で化粧品を自作している。
義父の商会で扱っている既存の化粧品もあるんだけど「鑑定」したらあまり肌によくない成分を含んでいたり効果がイマイチだったりしたので安全、安心にこだわって作っている。
これはウチの商会が悪徳という訳ではなく、一般流通しているものがそういうものしかないからだ。
いつか誰かが改善してくれると良いのだが、スキンケア商品というのは生きていくのに必須なものじゃないからなかなか改良していかないようなのだ。
基礎化粧品でお肌を整えたら日焼け止めを塗り込み、髪に艶をあたえるクリームを刷り込み髪型も整える。
まだ子どもなので、そんなに肌を甘やかさないものを。
保湿やUV等の効果のあるものにしている。
肌や髪の手入れなど、かつての生で毎日のルーチンだったので煩わしいことはないし、やらないと返って落ち着かない。
お守りみたいなもんだ。
最後に整えた髪をわざと乱して白い寝間着のシャツをはだけさせてしどけない姿になってもう一度ベットに横たわったら完成だ。
ふふふ悪魔め、今日こそこのエロピンク様を見て顔を赤らめ、うろたえてみせろ。
「坊ちゃま、朝ですよ」
オレのお世話をメインでしているレダが起こしに来る。
「おはよう。レダ、今日も君は完璧にうつく…へぶし!」
肌をチラ見せして流し目で寝起きのスーパーセクシーなオレに目もくれず、レダは掛布団を引っ剥がした。
今日も魅力値が足りなかったようだ。
リリアなら顔を真っ赤にするところなのに!
くそう、情緒もお遊びも解さないカタブツめ~。
「お早くなさってください。」
レダは商会の方も手伝っているから忙しいのはわかっている。
だけどいつも眉間に皺をよせ、悲壮感すら漂わせているのを見ているともっと肩の力を抜いたらいいのにと思ってしまう。
なんだか前世の自分を見ているようでせつないのだ。
レダにとっては、商人の家に引き取られたのに商売に興味をもたないオレに対して思うところがあって渋い顔になる部分もあるかもしれないけどさ。
マイクの居場所をオレが奪っちゃいけないと思うわけ。
「行ってきまーす」
着替えて飯を食ってチャラエロ先生に課せられている基礎運動を行った後、オレは商売の手伝いもせずに
遊びに出かける。
とは言っても、最近皆集まりよくないんだけどな。
だんだんと大人の邪魔にならない程度に成長してきた仲間達は実家の手伝いをしたり、小遣い稼ぎに野山に採集に出ていたりする。
義務教育があって、子どもは遊ぶのが仕事なんていい時代にはまだ当分追いつかないみたいだ。
こっちの世界じゃ子どもといえども食うためには働かなければならない。
先生は今日は本来の警備の仕事で午後にならないと帰らないみたいだし、いつもの集合場所の広場に行ってみたんだけど、オレらよりずっと小さい子達しかいなかった。
オレもこの広場を卒業する頃合いかもしれないな。
ブラブラと元来た道を引き返していると弟の手を引いたリリアとばったり会った。
反対の手には薬草採集のための籠を下げている。
「あ!ジュノ!」
リリアはパァァァっとうれしそうな表情になるとオレに駆け寄ってきた。
「こんなとこでジュノに会えるだなんて!」
「やあリリア。可愛い君に会えてオレもうれしいよ」
って言ってもご近所さんなんで、比較的頻繁に顔を合わせてるんだけどな。
「薬草かい?おばさん、調子よくないの?」
リリアの母親はリリアの弟を産んだ後、調子を崩していてずっと伏せっている。
オレも気にはしていたんだが。
「うん。昨日から熱があって…それでアルトが採ってきてくれたの」
「へぇ、アルトの奴やさしいな」
アルトにはそういう所があった、オレのように口で仕事しないが、態度で示す。
いい奴だ。
「オレも精がつきそうなもの、あとで持ってくよ」
(商会の物からな!オレって最低)
「ありがとう!無理しないで!」
リリアは手を振って去っていく。
あの薬草が生えてるところってあそこだな。
うまくするとアルトはまだそこにいるはずだ。
ちょっとからかいにいってこよう。