オレは見ていただけですけどね?
さすが選定されたメンバーだ。
オレ見てるだけで大丈夫みたい。
魔物は全部で7匹。
真ん中に超デカブツが陣取り他の雑魚6匹を従えている。
比較的安心なはずのこの渡し場にこんなにでかい魔物が現れるなんてな。
これも魔王の影響なのだろうか。
「まずは水から釣り出す!」
斥候のマティアスが針つきの暗器を投げた。
それはその魔物のヒレのような場所にささると返しが飛び出て抜けないようになる。
「一本釣りだ!」
水から出されたそいつは地面でのたくっていたが、その首をガッっとあげてくると鋭い歯を見せつけながら飛びかかってくる。
「丘にあがればこっちのモンだ!」
大剣を構えて戦士のドランが走り出し勢いをつけて斬りつける。
「神よわが身に奇跡を与えたまえ」
隣では神官のロベルトが神聖魔法を発動している。
「しびれちまいなっ!」
電撃系の魔法なのだろう。パーシが杖から稲光のような光を出して攻撃した。
えっと水を伝ってみんなしびれちゃいそうなんだけど大丈夫なの?
え?大丈夫?それ何かの補正なの?
今ので3匹。
「姫様!今です」
「私を腰ぬけの魔剣だよりのどこかの王子と一緒にするなよっ!」
さりげなく今回魔王討伐に不参加だったグラーシアの王子をディスりながら、王女と騎士は二人で協力しながら戦っていた。
そしてアルトは、さすが勇者だ。
残りの2匹を瞬殺していた。
オレは聖女係りなので聖女を守って、魔物には挑まない。
でも、魔物の攻撃には対処するけどね。
あっという間に子分格の6匹が打倒され、デカブツだけになる。
…おそらくあいつがボスなのだろう、そいつが尾ひれで川の水を掻きまわすと、川から水があふれてきて足をとられた王女が転んだ。
「姫様っ!!ッ!!ごぼっ!」
騎士ケインがすかさず王女のもとに駆け寄ろうとしたが、続けて到達した波に押し流され水の中に沈む。
「ケイン!」
「このやろう!」
一匹目をしとめた戦士ドランがデカブツの尾に斬りかかるが反対に跳ね飛ばされてしまい川に沈む。
奴、筋肉で重そうなんだけど。泳げる?浮かぶ?大丈夫?
筋肉重いせいで沈んでない?
心配で水面を覗き込むとドランが水を蹴って水面に顔を出した。
せわしなく息を吸っているが大丈夫、泳げるみたいだ。よかった。
その時、矢がオレの背後より飛来してきてデカブツの身体にむかって飛んでいった。
どうやら関所の兵士が気が付いて加勢にきてくれたようだ。
でも危ないから!フレンドリーファイヤーしそうだからやめてあげて!
デカブツに届いた矢も鱗にはじかれてるし!やめてやめて!
「凍りつけ!」
魔法使いのパーシは今度は氷系の魔法を使用したようだ。
一瞬、デカブツが凍って動きを止めるが、威力が足りないのか一瞬のうちにレジストしたと見えて激しく身体をくねらせる。
「やばい激おこみたい」
シンシアの呟き通り、デカブツの動きが激しくなる。
神官のロベルトは離れた場所にいたのにヒレで文字通りぶっとばされた。
「くっ!」
アルトはデカブツの噛みつき攻撃を剣でいなすだけで精いっぱいのようだ。
そこに矢が雨あられのように浴びせられる。
ちょ!アルトにささりそうだからやめて!そもそも鱗ではじかれて効いてないし!
「打ち方やめ!部下の諸君!俺に力をわけてくれ!」
駆けつけてきた兵士の長っぽいのが、他の兵士からなんか光の束を集めている。
「集中いっぽーん!!」
掛け声と共にその兵士長が放った矢は光の放物線を描きつつ、アルトを避け、デカブツの片目に刺さった。
なんだあれ?他の矢と威力が違う。
「早くとどめを!」
兵士長が叫ぶと魔物はアルトを頭突きで吹き飛ばして引きはがすと空にあがっていきー水の中の生き物の癖に飛べるのかよ反則だなー何か溜め技を繰り出そうとしている。
「くそっ届かない!」
斥候のマティアスが飛び道具を投げつけるが高さが足りない。
「届かないなら届けるまでっ!ジュノ!!」
起き上ったアルトの構えで何をやらされるのか瞬時に理解できたけど、アレやんの?ねぇアレやんの?
「ジュノ!いけっ!」
再び,催促してくるアルトの声で、オレの決心は決まった。
オレは走り出し、アルトの構えた腕を踏み台にし、ジャンプした。
「うぉぉぉぉ!」
アルトの吠え声で、こりゃ相当高く飛ばされるなと判断した。
アルトの腕の力を借りて高くたかーく飛び上がったオレはその高さから落下する勢いを借りてデカブツに向かって剣を振りぬく。
子どもの頃にアルトと産み出したコンビ攻撃だが今使うとは思わなかったよ。
「いけぇぇ!スラッシュ!!!」
デカブツの溜め技がさく裂する前にオレの剣がデカブツに届き、デカブツは空中で二枚におろされた。
「お見事」
兵士長の拍手を聞きつつ、オレは風の魔法を使って怪我をしない程度まで落下速度を調節して地面に降り立った。
遅れて2枚になったデカブツがゆっくり空中から降ってくる。
「いきなりやらすなよアルト」
オレがアルトに苦笑をむけるとアルトが指をたててきた。
「ブレスを吐きそうだったのでな。悪く思うなよ」
ブレスを吐かれたらここらの船や施設が壊れてしまう。
桟橋をはじめ再建するまで時間と労力がかかってしまうようになるだろう。
つまり隣国へ渡る手段がなくなり、他の渡し場までまた移動しなければならなくなる。
それは魔王のところにたどり着くのが遅くなってしまう事をさす。
それじゃぁ仕方ないか。
「やるじゃないピンク」
ま、王女に見直されたので彼女からのアタリも少しは弱まるかもしれないし、いいか。
オレ達がそうやって勝利の高揚感にひたっているとロベルトが地元の人に呼び出されて怒られていた。
「おい!あんた石化させたら食べられないじゃないか!」
食べるんだ?さっきコイツ船頭さんを食ってたけど…いいんだ?
今日のアルト。
火傷のあとが痛そうだった。
シンシアに回復の魔法をかけてもらってたけど、まだ痛がるんでオレの秘蔵の火傷用の薬を塗り込んで包帯でまいてやった。
食事のときに手がつかえなくて食べられないとぬかすんで、食事を手伝ってやった。
風呂も世話してやったけど、排せつの手伝いは勘弁してもらった。
男同士の風呂でもオレは乳首見られるのが恥ずかしいってことがよーくわかった。
上まで布巻いて風呂にいったらアルトが怪訝な顔して見てきた。
浴室まで布を持ち込むのはマナー違反だって?
わかってるけど一人の時はちゃんとまっぱで入るし今回だけは見逃して欲しいね。
髪も洗って、背中流してやったんだからさ。
…ついている物は同じでも前世からの記憶のせいで恥ずかしいのよオレ。




