各分野最高峰ってそういう意味だっけ?
遠征2日目
今日も神官と王女の舌戦が止まらない。
オレとアルトと呼び出されてきた「聖女」の共通項。
「勇者パーティ」というふざけた肩書きがなきゃタダの人ってところ。
そして、オレ達以外の人々は、国に認められた各分野で突出して優れている人達なわけで。
突出して優れていると言う事は尖っている、又は著しく一般とかけ離れていると言う事になる訳で。
筋肉心棒者の戦士、忠節馬鹿騎士、暗器オタクの斥候、教義命の神官、魔法馬鹿な魔法使い。
えっとまだ続けた方がいいかな?
全然協調性がないんだよね。
各分野最高の実力者ってそういう意味だったのかと妙な納得をしてしまうこの頃。
そろいもそろって何でこんな奴らを揃えてきたんだ?国の偉いさん達は。
「だーかーら。前の「魔王」は魔族出身で話の通じるいい奴だったの!今の「魔王」は違うの!」
「何度でもいいますが、魔王にいいも悪いもありません。神の子である我々に仇なすもので、すなわち敵なのです」
そしていつまでたっても平行線なこの人達も。
「結局はすぐれた能力の持ち主だけれども、組織にはいらないっていう惜し気のない人達を選定した訳か。オレもなんだろうけどな」
魔王の影響は無視できない。魔物は活発化するし魔の森は溢れるし。
けれども魔物の溢れた地を追われ、難民と化し劣悪な環境から流行った病気や政事の不満から爆発した民の反乱は魔物のせいじゃない訳で、そういう不都合すべて、いっさいがっさいまるっと「魔王のせい」にして。
いい面の皮だな。権力者達は。
バカバカしすぎて笑いを抑えられない。
傍から見たらオレは随分機嫌がいいように見えるだろうか。
「ジュノ、次の宿場で休もう。馬を変えて水の補給をしよう」
勇者の仕事ってこういうのだっけ?剣をふるって魔物を払うのが仕事じゃなかった?
「大丈夫?シンシアちゃん。足とか腰とか痛くないかい?こっちの世界の馬車ってスプリングがないんだよねぇ」
オレはあっさりと異世界から転生してきた事を「聖女」に打ち明けて仲良くなっていた。
異世界転移してきた聖女と異世界転生したオレ。
秘密を打ち明ければ打ち解けるのも早くなる。
呼びだされてきた「聖女」は本当にイイコだった。
無理やり誘拐同然に呼び出した王族を殴って元の世界にもどるのが目標だそうだ。
いいねぇ。オレも殴ってみたいよ。
さぞかしすっきりするだろうね。
「随分『聖女』と打ち解けたね」
アルトがオレにそう言った。
ごめんな。お前は親友だけど「異世界から転生した」って言ったって、理解しないだろ?
「オレの任務でもあるけど、無理やり生まれた世界から呼び出されたシンシアちゃんに同情を禁じ得ないんだよ」
他のメンバーの前では言えないけどな。
王族や国の役にたってこその誉れだという連中ばかりだから。
今日のアルトは宿屋で、さて休もうとした所を戦士に急襲され、彼の自己満足な鍛錬につきあわされて迷惑そうだった。
戦士と違ってアルトもオレも雑用があるから疲れてるんだよね。
ホント勘弁してほしいね。




