そうしてここからはじまる唐突な日記
遠征初日
魔王討伐のためにマルティネ国と西ガルバトス諸国連合との国境へ向かう。
王女ルネがいうには、前の代の魔王とは良好な関係を築いていたが代替わりした今の魔王は残虐で乱暴で言葉が通じないとのこと。
その話に、魔王=完全なる悪者 の立場の神殿のロベルトは鼻で笑った。
曰く
「魔王に良い魔王も悪い魔王もあるものですか」
だそうだ。
よい魔王=魔族の王とするルネと 魔王=魔をつかさどるものの王とする神殿の解釈の差が埋まらない。
そもそも神殿のいうことは変なのだ。
神殿側のいうことを真とするならば、魔法使いは皆魔人ということになってしまう。何故ならば、魔法という名の魔を使っていることになるからだ。
ルネとロベルトの舌戦が止まらない中で、異世界から召喚されてきた「聖女」のシンシアはおろおろしている。
オレはさりげなく聖女の隣に座り、あれこれと面倒をみたり話しを聞いてあげたりした。
異世界人という事でひょっとしたら前世と関わり合いのある世界から来た人かも?と思ったが、その歴史も史実もまったく心あたりがなく、まったく違う世界からの異邦人という事が伺い知れた。
かわいそうに。こんな訳のわからないところに呼ばれて気の毒に。
そしてオレもかわいそう。
身分の関係でイニシアティブをとれない勇者であるアルトもかわいそう。
今日のアルトは勇者選出からのゴタゴタで続きで眠れていなかったらしく、移動の馬車の中で居眠りばかりしていた。
まぁ、先は長いからね。
体力は温存しないと




