ディスられるオレと聖女召喚と選ばれた若者たち
オレ以外の勇者パーティのメンバーが決まった。
勇者を神託した神殿からは神官のロベルト
西ガルバトス諸国連合からは戦士のドラン
斥候のマティアスと魔法使いのパーシはラドトス国から
マルティネ国からは王女のルネと騎士のケインが加わる。
肝心の勇者はやっぱりアルトだった。
「これは一体どういうことですか?」
神官のロベルトがグラーシア国の王に文句をつけている。
「各国からは最高位の使い手を派遣しているのに、何故その騎士なのです?」
どうやらオレに文句があるらしい。
大いに言ってくれ。オレだって好きでここに居る訳ではない。
「我が国からは勇者を輩出している。そのうえまだ王子を出せと言われるのか。」
グラーシア国の王子のヘンリー・アックス・グラーシアは優れた魔法剣の使い手で有名である。
普通に魔王討伐メンバーに加えるのならば王子が相応しい。
「しかし」
「聖女召喚もウチの魔法使いが担当する。これ以上を望むのは我が国の国力を削ぐ企てと理解するがいいのか?」
王は不機嫌さを隠そうともせず吠える。
やり玉にあがっているオレも何を言われても静かな微笑みを崩すことはない。
もうそれは仮面と言ってもいいものだ。
オレの背後では味方であるはずの騎士団の先輩から「どうせ色事で成り上がっただけの男が。殿下のかわりなどおこがましいわ」と言った呪いをかけている。
「ご心配はもっともですが、若輩ながら全力を尽くさせていただく所存です」
王に目配せされて、そう丁寧に申し出れば、神官はハンと鼻で笑って言った。
「わかっておいででしょうが、頑張ったけど無理だったではすまされないのですよ?」
「もとより弁えております」
頭を下げながら、集まったメンバーを見て、オレは自分が王に「毛色の違う番狂わせ」と何故言われたのかわかったような気がした。
ここには各分野最高の極上の優秀な者達が集っていた。
実力も見てくれも最上の極上なものばかりだ。
王女ルネだけは女性だが、いずれも見目麗しい男達だ。
なるほど、これなら異世界から呼び出された「聖女様」もよりどりみどり。
異世界にここにいる人材より素晴らしい人物が身近にいれば別だが、いなければ、ここのメンバーの中の誰かが聖女の意中の人となるだろう。
王はそうやって聖女を取り込む気が満々だったしオレにそう命令を下してもいた。
この世界に意中の大切な人ができた「聖女様」はそれは必死に働いてくれるだろう。
ウチの王様は本当にコスい。
頭を下げた状態でうっそりと笑えば、心配気なアルトの視線を感じる。
大丈夫だ。
このぐらい何てことはない。
貴族社会ではもっとひどくディスられて来たからね。
結局ロベルトは王に言い負け、その日のうちに聖女召喚が行われ、聖女としてシンシアという異世界の少女が召喚された。




