貴族の庶子として生まれるが分家に養子に出される
息抜きに書きました、ギャグよりになります。
いろいろおかしい設定はそんなモンだと思って読み飛ばしてくださると助かります。
物心ついた時から違和感があった。
なんせ、私の周囲の人々の髪の色がおかしい。
金、銀、ブラウン、黒はもちろん、赤はいいとして緑だとかピンクだとか青だとか。
私の中の常識が言う。
ー何かがおかしいー
と。
そして、今日、私、ジュノは、この人生での大発見をしたのだ。
「ついてるやんけーーーー!」
そう私は異世界に転生したようなのである。しかもTSして。
女性名のようにも聞こえる名前と着せられていた服がかわいい幼女用のものだったため、ずっと性別は前世と同じ女性であると思っていたのだが、先日何の気なしに着替えのため素っ裸にされた自身の下半身を見て気がついた。
「うっそ。なんで??????」
ジュノ 3歳。
青天の霹靂の事件であった。
3歳での衝撃的な事実との邂逅のあと、町はずれの小さな家で母親と二人きりの生活だったのが、いつの間にか大きなお屋敷の離れらしき所に引っ越していて知らない間に姉が出来ていた。
その姉に主に人形遊びの人形のように扱われ、着せ替え人形と化して2年。
この頃ようやく前世の人格と今世との人格が融合したようで、自我が安定してきた。
融合といっても、メインの人格は非モテの干物お局、おひとり様歴=年齢の残念な前世の人格が優位のようであって、なかなか現世の性別が受け入れられない。
どうしたものか。
この世界の人々の纏うカラーはまさに色とりどり。
かくゆう私もピンク色の髪とコバルトブルーの瞳を持っていたりする。
ピンクっていってもドピンクじゃなく品のいいピンク色なんだけど。
まぁそこそこ派手な組み合わせである事は間違いない。
母の鏡台で姿を映してみる。
ピンクのふわふわの髪にコバルトブルーの瞳の幼女がとまどったようにこちらを見返していた。
「女の子のように見えるけど。これでも性別、男なんだよね…」
言葉にして落ち込んだ。
「よりによってエロピンクに転生とかありえない」
私が前世にこよなく愛したサブカルチャーでの読み物では、髪がピンク色の人物は「エロピンク」としてお色気担当のように書かれたものが多かった。
「性同一性障害って言うのになるのかなぁ。中身の主成分はザンネンなおひとり様女子のだし」
残念な事に、自分が転生したこの世界ではジェンダーレスとかいうような概念はなさそうで、男子は男らしく女子は女らしくが常識のようだ。
それなのに男子として生まれた自分が何故女の子のように扱われているかと言うと、複雑なお家事情があるらしい。
大きなお屋敷の方に勤めている使用人の噂話を総合するとこうだ。
母はいわゆるお妾さんだったらしい。
父はこの家の入り婿で、本妻さんに母の存在を隠していたのだが私が3歳の時にばれて、まぁ放り出す訳にもいかなかったのだろう、本屋敷の離れに住まわせるという形で母子ともども引き取られた。
私を女の子に見せかけていたのは、本妻に女子しか子供がいなかった為で、継承権だかが男子にしか与えられないこの世界では、争いの種になるとの父の苦肉の策のようで。
もっとも私が引き取られてすぐに本妻さんに男子が生まれたので心配は杞憂だったのだが、年子で弟がもう一人生まれるまで結局ずっと女の子扱いされていた。
私としてはいきなり男子として、この世界で生きていくように放り出されなくて良かったとの言えるかもしれないが、まぁ結局はやっかい払いされる事になった。
本妻の子どもより年上のお妾さんの産んだ男子とかねぇ?目の上のたんこぶでしょう。本妻にとっては。
引き取られて、そんなに悪い扱いをされた訳ではないけど。
まぁね、空気がね。よくなかったね。
で、結局5歳で養子に出された。
分家の家らしいけどね。お屋敷の本家は爵位もちの何々家とか言うらしいけど、分家の家は爵位を継げなかったので商売を生業としている平民の身分らしい。
母と離されるのは辛かったけれど、中身の半分以上はアラサーな前世の意識なんで別にショックは受けなかった。
あのまま本家の方に残っていたら、いつまでもお人形扱いしてくる腹違いの姉のいいおもちゃでしかなかったろうし、このままでは女装子になってしまうのではないかとの不安があった。
私としては女装は普段着という意識の方が強いからいい。
でもこっちの世界では受け入れられるような文化はないのだから、何としても普通の男子に見える程度にならないと下手するとボッチで寂しい人生になるかもしれない。
見知った範囲でしかわからないけど、店主が女装子だとか、おかまっぽい騎士とか使用人とか皆無のようだし。さりとして、自分が先駆者を目指すにはヘタレすぎた。
へたれな私は、とりあえずの目標を「普通の男子として世間様に見られるようにする」に設定した。
結婚は無理かもしれない。
女子は同性との意識が強すぎるし、同性婚も無理だ。男性とは前世でも関わらなかったので、どう付き合っていいかすらわからないから。
引き取られた家は商売をしていた。
歳をとった義母と義父、そして何人かの使用人がいた。
そして、すぐにこの家の稼業を引き継ぐのは無理そうだと悟った。
マイクという番頭頭のような人物のせいである。
私は義父母が、マイクに自分たちの商売を引き継がせるつもりであったのだと早々と気がついた。
そこに本家から押し込まれた本家の家筋の子ども。
大変申し訳ない。はっきりいって迷惑であろう。
マイクは自分の立場が脅かされると知っても、尚、私に対して親切で礼儀正しかった。
義父母に恩があるという彼は私の事も主人夫婦の本当の子どものように扱って仕えてくれた。
それが、さらに申し訳なくて仕方ない。
マイクの領分を侵さないように自立を考えなければならない。
父方の貴族の身分は受け継ぐことが出来ないし、商人になるにしてもマイクを犠牲にしない形でとなると難しいし、農民には土地がないのでなれないし…あとは生産も、幼い頃から徒弟として親方に師事しないと無理だろうし第一ドワーフもいるこの世界じゃ、ただの人間には分が悪い。
どうしたものか。
「どうしたの?ジュノ。難しい顔をして」
「冒険者になるのって、大変なのかなぁって考えていたんだよ」
学生時代にしたRPGではポピュラーな職業のはずだったが、魔物は怖いし、アウトドアライフは無理そうだ。
この世界は剣と魔法のあるファンタジーに溢れる世界だ。
この家に引き取られる時、旅路の空に竜が飛んでいるのを見たの見たのは衝撃だった。
産んでくれたこっちでの母親と生き別れた事以上に衝撃だった。
「だめよジュノ。ジュノには向いていないと思うの」
マイクの娘のロジーが私の右腕に抱き着いて言った。
「ジュノはこのまま王子様になるの」
左腕にそう言って抱き着いてきたのはリリア。
近所の娘さんである。
私の貧困な男子のイメージは女の子向けの読み物に出てくる理想化したような男の子だ。
そのイメージ通りに振る舞っていたら、女の子には受けが良かった。
「リリア、王子様になるにはまず王様の子どもとして生まれないと」
「ジュノは私の王子様だからいいの!」
何がいいのかわからないけど。
リリアは無邪気で本当にかわいい。
この年頃の男の子の仲間はチャンバラごっこというか騎士ごっこだとか騎士盗賊ゲームに興じて取っ組み合いをして遊ぶ。
とても中には入れない。
虫とか触れないし、汚れるのも嫌だし日焼けも気になる。
「王都で文官になるのもいいかもしれないよ」
マイクに似て頭のいいロジーはそういうけれどこんな僻地の町人にそんなツテとかはない。
本家のツテを頼れば何とかなるかもしれないけど。
頼りたくないのも本音だ。
「そのためには王都の学校を出ないといけないよ?」
義父母にそんな負担はかけたくないし、まだこの性に慣れた訳じゃない。
男か女かでふらつくような自意識のままで、将来の事とか真剣に考える余裕もないが時間はない。
「王都なんかにいかないで?私のお婿さんになればいいよ!」
かわいいリリア。中身が女なんだけどそれでいいのかい?
さすがエロピンク。顔だけはいいので女の子からはチヤホヤされる。
(ひもとかでやっていけそうだな…)
でも、ちょっと考えてみて無理だと思う。
女の子とアンナ事やコンナ事とかできやしない。
お手て繋いで、頭ナデナデするだけのひもってダメですか?
そこまでの技術の引き出しはどう考えてもない。