電話の話。
《シェアハウス・りゆせ 入居者募集! 年齢は問いません。興味のある方、ぜひお電話ください! ※学生の方は保護者の許可が必要です。》
少年はチラシを片手に受話器を持つ。寒い廊下にある電話にいつもは文句を言っていたのだが、もしかするとこの電話を使う機会はもうないかもしれない、という思いから少し我慢していた。少年の指がダイヤルをひとつひとつ押していく。
(間違えたらめんどくさいことになりそうだしなぁ…)
プルルルルル…プルルルルル…
この音にドキドキ、わくわく、イライラ…いろんな感情が浮かび上がる。誰もが経験したことあるだろう。音が切れて相手が出る。
「はい、こちらシェアハウス・りゆせ、管理担当のAです。」
聞こえてきたきれいな声に少年は戸惑いながら返答をした。
「は、はい。俺、Dといいます。えっと、入居者募集のチラシを見て電話したのですが…」
「ああ~!ありがとうございます。早速ですが、りゆせに来てみませんか?」
「えっ、ご迷惑ではないですか?こちらとしてはうれしいですが…」
「いえいえ、そんなことないですよ~ご自宅はどのあたりですか?車をだしますので~」
「えっと、スーパーみどりの近くの…」
「あ、ではスーパーで待っててもらえますか?」
「あ、はい。わかりました。」
「黒い軽自動車で行きますねーでは、失礼します。」
「あ、失礼します。」
(なんか…これでよかったのかなぁ…)
とにかく、と少年、Dはスーパーへ向かうことにした。