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Count 1 『採取』

はじめまして、腐男子のミーです。人外BLという特殊なジャンルで初投稿です。

夜が静けさを増したころ、僕はそのほぼ頂点に立っていた。風が冷たい。最後の願いも聞き入れてもらえずに僕はこの世界からおさらばすることを決めたのだ。思っていた以上に足取りは軽くここまで登ってくることができた。あとはあと一歩を差し出すだけなのだ。楽になれる、いや、楽になることはないだろう。でも、このまま生き続けるよりよっぽど楽だ。

 風が強くなる。夜空の雲がはっきりと見えたころきっと僕の躊躇が見える。頭を空っぽにして身体が傾くのをまつ。そして、ゆっくりと重力に身をまかせ景色は反転する。落ちるというより浮いているような感覚。不思議と怖くなかった。僕はそっと目を閉じ心で呟いた


「少なくとも誰かのために生きたかった」


ゴウンゴウンゴウン


 きっとSF映画でしか流れないような奇怪な音で僕は目を覚ました。

 そこは眩しいほどに白い天井、壁も四方に白く床も白い。不気味なほど真四角な部屋、いや、これは箱か。たしか飛び降りたはずだ、いつも見る夢なんかじゃなく確かに、この世からおさらばしたのだ。じゃあ、これが夢?それとも死後の世界...そうか、死んだのなら合点がいく。手をかざし、足を動かして五体満足を確認する。あれほど高いところから落ちたのに痛みもなく身体も不自由になってないとはなんというかご都合なこと。やっと目がなれてゆっくりと上半身を起こす。眩しいのは嫌いだから慣れるのにも時間がかかる。ここで僕は白いズボンにダボダボの長袖まるで病院のパジャマのような服装だ。パンツは履いていない。病院というワードがいじめが原因で入院したのを思い出させ胸が締め付けられる。もうあんな目に合わずにすむ。そう、ここはあの世なんだ。そして、胸を落ち着かせたころふと人影を感じその影に焦点を合わせる。

「やっと、起きましたか、シマダミスズ」

僕の名前を呼ぶ人にだんだんと焦点が合うにつれて、到底人と思えない姿に声ならぬ叫び声をあげた。まず、目につくのが緑色の皮膚、丸い頭に大きすぎるほど黄色の目、体表は鱗に覆われて、少しぬめり光っている。身長は180くらいだろうか、身体は細身で大きなトカゲのような風貌。トカゲ人間。服は黒のジーンズのようなものをはき、上には白衣のようなものを羽織っている。僕は、腰が抜けてしまい起き上がることもできない。パニック状態で僕は無理くり思考をめぐらす。ああそうか、地獄のお迎えなのかな。到底救われない魂なのだ。覚悟は決まっていた。すると、不思議と身体のこわばりはとけ、口はきけるようになった。

「お、お迎え、ご、ご苦労様です、じ、地獄のし、使者さま。に、にに逃げないので、あまり痛めつけるは少し」

ここで、トカゲ人間は首をかしげる。それから、目をキュッと細めて少し笑った表情をする。

「ええと、少し君は勘違いをしてるようですけど、私はそんな宗教的な存在じゃないですし、第一、君は死んでないですよ」

「え?」

死んでいないとなるとさらに状況は分からなくなる。

「ここは...どこですか...異世界?」

トカゲ人間はどんどん迫りながら僕に問いに答える。

「異世界というと異世界かもしれません、正しきは君の夢の中です。」

夢か、死ぬ前の夢なら仕方がない。そして、トカゲ人間は話を続ける

「僕は、君たちからみた地球外生命体。一部ではレプティリアンとか爬虫類型人間なんていわれてますね。そして、君たちに人間の創造主であり絶対的な存在。って、大昔のお話なんですけどね。僕はあんまりそういうのは興味はないですし。一応、本部直属の研究員ってことで人間の生態とか精神や心理構造とかがテーマかなって感じです。ここまでで質問は?」

矢継ぎ早に話された後、質問までされてしまった。気づけば顔と顔がくっつきそうなほど近づかれ覗きこまれていた。大きな黄色の目と目が合うと僕の心を読まれているようになる。引き込まれるような大きな蛇目に思わずつぶやいてしまった。

「...きれい。」

「ん?」

「あ、ごめんなさい。目が、目が石の様にきれいだなって思って...」

すると、トカゲ人間は少し顔をしかめ顔を離した。

「キレイ...ですか...そんな風に言われるのは初めてです。石に例えられるとあまりいい気がしませんがね。とりあえず、好意ととっておきます。それより質問は?」

一体、僕は何を言っているんだろう。どう考えても可笑しな発言だった。ふつうの人間相手でもそんなこと言わないに。バツが悪そうにしているトカゲ人間を見て慌てて本題に戻す。

「す、すみません、質問ですか?あの..結局僕はどうなるんですか。身体を弄られたり、食べられちゃうんですか。」

そのありきたりな質問を待っていたかのにトカゲ人間が答えはじめる。

「大丈夫ですよ、私は食べませんから。あなたには僕の実験の被検体になってもらいます」

ああ、やっぱりその流れか。B級のエイリアン映画みたいな展開か、身体に管入れられて培養液に入れられて。

「あなたが今思っているだろう。物騒な実験ではないですよ。」

「これから、手術台コースじゃないんですか...?」

トカゲ人間の口角が上がり微笑を含んだ様子で

「いえいえ、そんなことはないです。君にはこれから、この夢から覚めて今までと変わらない生活を送ってもらいます。そして、毎晩、夢の中で君が起きている間にあったことを僕に逐一報告してください。逐一です。それだけです。」

と答えた。僕はあまりにも拍子抜けの内容に眉をしかめながら「それだけ?」と聞き返していた。

「僕は人間の構造や生化学的な生態よりもとりとものない日常やそれに対する心理に興味があるのです。ですので、君の日常で起こったこととそれ関して感じたことをいえばいいのです。」

僕は実験内容は理解できたがトカゲ人間の意図は理解しがたかった。そんなことよりも僕にとって日常という残酷な内容のほうが大問題だった。「今まで」の生活というのは、いじめにあい、体と心中に傷を負う生活、地獄より地獄のような日々。さっさとおさらばしたかった日々。その繰り返し。これまでの日々、痛み、惨め、苦しみが次々とフラッシュバックした。

「嫌です。」

僕は首をしきりに振って呟いていた。トカゲ人間は納得のいかない表情で首をかしげる。

「ぼ、僕はあの日々に戻りたくない。せっかく逃げてきたのにまた、もとに戻るなんて、あんな日々を。ぼ、僕は、僕は。」

涙目になり震えながら僕は激昂して叫んでいた。嫌だ嫌だ嫌だ。その声をトカゲ人間は遮って言った。

「午後一時三十二分」

僕ははっと我にかえり、動作をやめる。

「君は君が住んでる高層住居の屋上から飛び降りた。いわゆる、自殺ってやつですか。私はそれを受け止めただけですけど。」

受け止めた!?僕はトカゲ人間を睨んだ。

「どうして、邪魔をしたんだ、トカゲ人間。助けたんだ。僕は早く楽になりたかったのに、どうして...」

僕の睨みに少々苛立ったのかトカゲ人間はその大きな目でギョロっと睨み返してきた。あまりの迫力に僕はすごんだ。

「勘違いしないでください。僕は、たまたま君というサンプルを見つけて『採取』しただけです。あと、僕はトカゲ人間じゃない。一応、僕らは君とはランクの違う崇高な生物らしいですから発言には注意するんですね。」

言い返せない僕、続けるトカゲ人間。

「あと、この夢から覚めると日常に戻りますが、また死のうだなんて君は考えていると思いますが、君は僕にとって重要なサンプルです。死にたくても死ねないように少し君の頭を弄りましたんで。まあ、目が覚めて死のうしてみてください、無駄だとわかりますから。」

したり顔のトカゲ人間。僕はただただ絶望的していた。なんということだ、宇宙人のサンプルになった挙句、死ねないようにされたんなんて。追い打ちをかけるようにトカゲ人間は僕にぐいと顔を近づけて耳元で囁いた。


「その命、無駄に使うなら私のために使いなさい。」


ゴウンゴウンゴウン


 あの変な機械的だがこの世にはない音が頭に響く。頭がクラクラする、めまいがする。

「今回はここまでです。また次の夢で会いましょう。」

トカゲ人間の声がとぎれとぎれになり、視界がぼやける。

そして、これがただの夢であること、欲を言えばちゃんと死んでいることを祈りながら僕は意識を手放した。


僕もリアルにつかれたので逃げてきました。ので、ストレスレスをモットーに書いていきたいと思います。

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