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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、海に行く
99/904

95 クマさん、トンネルを作る

領主を町長に変更しました。


 翌日、朝食を食べ終えて、部屋で昨日のアンズの言葉を思い出す。

 近ければクリモニアに行ってもいい。でも、現状ではクリモニアの街に行くには海岸線を大きく回って行くか。山脈を越えるかの二択しかない。どちらも、時間が掛かるし、安全ではない。


 それに魚介類の流通も作りたい。

 そう考えると、トンネルを作るのが一番いい。

 トンネルがあればクリモニアに行く距離も縮まり、アンズもクリモニアに来てくれるし、魚介類の流通もできるようになる。

 でも、トンネルを作るには問題がある。

 ただ、掘り進めてもトンネルができないってことだ。

 高低差。

 こっちから、水平に掘っても山の途中に出たり。こちらが低ければ、永遠に地面の中だってありえる。

 高低差が分からないとトンネルは作れない。

 距離を確認するためにマップを開く。


「うん?」


 マップが変わっている。

 今まで2Dマップだったのが、3Dマップになっている。

 操作をすると高低差が分かる。

 もしかしてクラーケンを倒したことでバージョンアップした?

 他にもスキルが増えていないか確認するが、増えていないようだ。

 改めてマップを見る。

 山脈が高いのがよく分かる。

 ユウラさんも、よくこんな山を登ろうとしたものだ。

 くまゆるたちが居なかったら、絶対に登りたくない山だ。

 3Dマップはトンネルを作るにあたって便利なバージョンアップだった。


 マップを見て、トンネルを作るのに適した場所を探す。

 街道に近いこと。同様に反対側のクリモニアに向かう道に繋がることを吟味して、トンネルの場所を考える。

 2箇所ほど、目星を付けると、部屋のドアがノックされる。


「誰?」

「セイです。ユナさん、少しよろしいでしょうか」


 ドアを開けるとセイさんがいる。


「どうしたの?」

「休んでいるところ、申し訳ありません。ギルマスが呼んでますので、冒険者ギルドまでお越しになってもらえませんか」

「なんの用なの?」


 面倒ごとはお断りなんだけど。


「おそらく、町のことで相談だと思います」


 町のこと?

 詳しい話はアトラさんに聞いてほしいと言われては、ここで断るわけにもいかないので、冒険者ギルドに向かう。

 ギルドに到着すると奥の部屋に案内される。

 中に入ると、アトラさんとクロのお爺さんと見知らぬ年配の男性が2人いる。


「ユナ、適当に座って」

「えーと、何の用なの?」


 そう尋ねながら椅子に座る。


「ちょっと、頼みたいことがあってね」

「頼み?」


 わたしは聞き返す。


「国王とは言わないけど、クリモニアの街の領主とこの町の繋ぎになってくれないかと思ってね」

「繋ぎ?」

「今回、いろいろあったでしょう。町長は逃げ出し、商業ギルドの不祥事、クラーケンの出現。このままだと、いろいろと困ることが出てくるのよ。それで、クリモニアの街の領主様と話ができないかと思ってね」

「つまり、国に属するってことでいいの?」

「ええ、そういうこと」

「そんな大事なこと、他の住人は知っているの?」

「知らぬ。だが、今後のことは我々に一任されている」


 クロのお爺さんが返答する。

 

「ここにいる3人は、この町の有力者たちよ。本当は5人いたんだけど、二人は逃げたのよ」

「それで、話し合った結果、国に属することにしたのじゃ。未来の子供たちのことを考えると、このままでは駄目だからのう」

「それで、どこの国に属するかという話になって、ユナのクリモニアの街はどうなのかと話になってね」

「でも、交易をしている他の町とかあるんでしょう。そっちの方が近いんじゃ」

「国のことは分からんが、あの町の領主は駄目だ。自分の利益しか考えていない。盗賊が現れる前に、クラーケンのことを国に頼んだら、莫大な金を要求された」

「そのせいもあってな。本来は商業ギルドの件は、我々が止めなくてはならなかったんだが、クラーケンを討伐するための資金と言われて、我々は何もできなかった。あの領主が莫大な金額を要求してこなければ、商業ギルドのあやつも、今回のことはしなかったかもしれない」

「我々も、同罪なのかもしれん」


 3人のお爺さんたちは項垂れる。


 クロのお爺さんがどうして、商業ギルドの指示に従っていたのか疑問だったけど、そんな理由があったんだね。

 クラーケンを倒すための資金だと言われたら、それしか道が無ければ従うしかないだろう。


「それで、ユナにはクリモニアの領主様に話をつけてほしいのよ」

「もちろん、税金は払う。だから、もしものときは、町の手助けをしてほしい」


 お爺さんたちは頭を下げる。


「とりあえず、話は分かったけど。どうなるか分からないよ」

「それでも構わない。頼めるか」

「わかった。話すだけ話してみるよ」

「助かる。これをクリモニアの領主様に渡してくれ、詳しいことが書かれている」


 手紙を受け取り、席を立つ。

 出発するなら早い方がいい。


「もしかして、今から出発するの?」

「ちょうど、わたしもやることがあるからね。あっ、それから土地のことは忘れないでね」

「ユナが戻ってくるまでには用意しておくわ」


 小高い場所に建つペンション(クマハウス)。

 いいかもしれない。


 冒険者ギルドを出て、宿屋に向かう。そして、今日出ていくことをデーガさんに伝える。


「急だな」

「ちょっと頼まれごとをされてね。クリモニアの街に戻ることになったのよ」

「そうか、魚が捕れるようになったから、美味しい料理を作ってやろうと思ったのにな」


 残念そうにするが、食べられないわたしはもっと残念だ。 


「お米はどうする? 預かっておくか?」

「ううん、貰っていくよ」


 食堂の倉庫に案内される。

 そこには樽に入ったお米があった。


「全部いいの?」

「ああ、住人のみんなが嬢ちゃんのために持ってきたんだからな」


 わたしは樽ごとクマボックスに仕舞う。

 これで、しばらくは一人で食べる分には困ることはない。

 宿を出るときに、ユウラさんたちに別れの挨拶と思ったけど、すぐに戻ってくるので黙って出ていくことにする。


 町を出て、くまゆるを呼び出す。

 次に、くまゆるに乗ってマップを呼び出す。

 宿屋で下調べをした場所に向かう。

 街道を走り、途中から森の中に入っていく。

 この辺の木は後で処理をするとして、トンネルを掘る場所にやってくる。

 候補は、もう一つあるが、こちらに決めることにする。


 次に即席の着替えボックスを作り、白クマの服に着替える。

 誰も居ないと分かっていても、外で下着姿になる勇気をわたしは持っていない。

 白クマの服に着替える理由は魔法を使うためだ。

 だから、今度は忘れずに着替える。

 また、魔力の使いすぎで倒れるのは勘弁してもらいたい。


 マップを見て方角を確認する。

 高低差があるから、なだらかな道にしないと馬車が通るときに苦労する。

 くまゆるに乗ったままだと細かい作業はやりにくいので、くまゆるには乗らずに徒歩でトンネルを掘ることにする。

 馬車の大きさを考えるとこのぐらいかな。始めに、ある程度のトンネルの大きさを決める。大きさを決めたら掘っていくだけだ。トンネルの中に入ると、薄暗いのでクマのライトを作り出し、トンネルの中を照らす。

 歩きながら、穴を掘り進めていく。壁は崩れないように固め、足元はデコボコにならないようにする。意外と面倒な作業だ。穴を掘るだけなら簡単だけど、壁の強化、地面を平らにする作業が手間がかかる。

 まあ、手間が掛かるだけで、魔力の消耗はほとんど無いので歩く速度でトンネルは掘られていく。

 時折、方角と高低差を確認しながら、掘り進める。

 掘り進めること数十キロ、マップを見ると山脈の反対側に出る頃だ。

 数時間後、トンネルは貫通する。

 やっと、出てこられた。

 

 外に出ると外は日が沈み、暗かった。

 ここで、一泊するしかないかな。

 トンネルを出た所で、平地を作り、旅用のクマハウスを取り出す。

 山脈でトンネルを作っていたのにもかかわらず、白クマ服は綺麗なものだ。

 さすが、クマ服。

 クマハウスに入り、夕飯の準備をする。夕飯は魚料理とお米を炊いて食べる。

 お風呂に入って寝る前に、フィナに連絡をする。

 明日、帰ることを伝え、お土産があるから、昼食は孤児院で一緒に食べる約束をする。


 風呂に入り、トンネル作りで疲れた(精神的)体を休め、早めに就寝する。

 翌朝、クリモニアの街に向けて出発する。

 門に立っている兵に挨拶をして中に入る。


 フィナとの約束の時間には間に合った。

 孤児院に向かうと、外で元気よく遊んでいる子供たちがやってくる。

 見知らぬ子供たちが増えているけど、気にしないことにする。

 ちゃんと、仲良くしていれば、わたしが言うことは何もない。

 孤児院に行くと院長先生とフィナが出迎えてくれる。

 

「ユナお姉ちゃん、お帰り」

「ただいま。何もなかった?」

 

 まあ、何かあればクマフォンで連絡があっただろうし。昨日の夜も何も言っていなかった。それに、この落ち着いた空気が何事も無かったことを示している。


「うん、何もないよ。店も順調だし、お母さんもお父さんも仲がいいし」


 それはいいことだ。

 近いうちに、フィナに新しい弟か妹ができるかもしれない。


「院長先生、これ、お土産。お昼に子供たちと食べて」


 クマボックスから宴のときに大量にもらった海鮮料理を取り出す。


「魚ですか。珍しい物を持ってきましたね。少し早いですが、子供たちを呼んでお昼にしましょうか」

「わたし、呼んでくるね」


 フィナが部屋から出ていく。


「院長先生は魚を捌けます?」

「川魚を少しだけ、やったことがあるだけです」


 まあ、川魚は高級食材だし、孤児院では食べられなかっただろうし。

 そう考えると、是が非でも、アンズにはクリモニアに来てもらわないといけないね。

 孤児院の子供たちと昼食を食べ終わると、わたしはクリフに会うために領主の館にむかう。

 



今回はスキルがご都合主義でした。

あまり、手に入れたスキルがすぐに活躍するの個人的には好きじゃないのですが、今回はトンネルを作るのに3Dマップが必要だったので、マップのバージョンアップをさせてもらいました。


どうしても、現状の能力では高低差を考えると、トンネルが作れませんでした。

①、適当に掘って作る。(ごり押し)

②、クマの土魔法は高低差も把握出来る。

③、クマたちを入り口と出口に立たせて、それで把握して掘る。

④、土の魔石ワームを使う。(アイディアが浮かばなかった)


などと、考えたのですが、一番しっくりするのが、3Dマップでした。

ご都合スキルですが、今回はスルーしてください。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ご都合と言うより、ユナが『心底望むこと』が、クマ装備も手伝ってレベルアップの度にスキル等で具現化するでいいと思うしと言うか普通にそう思ってたんでなんの問題もないです♪
[気になる点] 地盤とか崩落とか大丈夫なのかなと心配になります。 ユナちゃん戦闘力はともかく建築とか測量とか地質学に関しては学んでいる描写も気にしている描写もないので。
[気になる点] バージョンアップより、横から見たら高低差とか分からないかな?お、地図が立体になった!思ってた以上に高性能のスキルだったっ的な感じの方が自然な気がする。 元廃人ゲーマーならレベルアップは…
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