939 クマさん、お酒を飲むカガリさんを見る
わたしたちは部屋に通される。
部屋はソファーとかあり、応接室だった。
ここで、取り引きの話し合いとかするのかもしれない。
わたしたちはソファーに座る。
「それで、どうした?」
「酒が買いたい?」
「買えばいいだろう」
なに言っているんだって顔をするダダンさん。
「いや、俺が買うわけじゃない。この嬢ちゃんたちだ」
ロージナさんは否定し、わたしたちに目を向ける。
「親に頼まれたのか? どんな酒が欲しいんだ?」
ダダンさんが子供に言う感じで、わたしとカガリさんに優しく尋ねてくる。
まあ、普通はわたしたちが自分のために買うとは思わないよね。
「酒の試飲がしたい。お願いできるか?」
「えっと、クマの嬢ちゃんが?」
カガリさんが尋ねたのに、わたしを見るダダンさん。
わたしは首を横に振る。
見た目年齢なら、お酒の試飲をするとなったら、わたしのほうと思ったのだろう。
それだって、ギリギリアウトなのか、怪訝そうな顔をしている。
「わたしじゃなくて」
わたしは否定し、隣に座っているカガリさんに目を向ける。
「妾じゃ」
カガリさんの言葉にダダンさんが固まる。
「いやいや、子供に酒を飲ますわけにはいかないだろう」
やっぱり、普通の大人なら、そうなるよね。
「そもそも、嬢ちゃん何歳だ。お酒を飲みたいお年頃か? ロージナ、冗談を言うために、俺を呼んだのか?」
ダダンさんはカガリさんを見てから、ロージナさんに文句を言う。
「俺だって、それぐらい分かっている。でも、そっちのクマの嬢ちゃんには世話になっていてな。どうしても、酒を試飲したいと頼まれた。だから、少し飲ませれば、満足するかと思ってな」
なるほど、お酒を飲んだことがないお子様の我が儘と思っていたみたいだ。
「だからと言って、俺のところに来るなよ。たくさんの酒は扱っているし、試飲もできる。それは商売だからだ。ここは子供の遊び場じゃないんだぞ。嬢ちゃんもオレンのジュースを持ってくるから、それを飲んで帰りな」
完全に子供扱いだ。
でも、これが大人としての正しい対応かもしれない。
「面倒じゃのう」
カガリさんは、言葉どおりに面倒臭そうな表情をすると、アイテム袋から白いシーツを取り出す。
パッと広げると体に巻きつける。
なにをするかと思っていると、服を脱いでいる音がする。
「嬢ちゃん、なにをしているんだ?」
カガリさんが返答するまえに体が大きくなり、大人になる。
「…………!?」
「…………!?」
ロージナさんとダダンさんは驚く。
温泉がある屋敷にいるときはぶかぶかの大人の服を着ているけど、今は子供サイズの服を着ていた。
あのまま大人になっていたら、服が破けていた。
だから、シーツを巻いて、服が破けないようにして、大人になったわけか。
いきなりシーツを体に巻き、服を脱ぎだしたときは驚いた。
「嬢ちゃんは……」
カガリさんは質問に答えるまえに体が縮まり、元の子供の姿に戻る。
そして、なにもなかったようにシーツの中で服を着る。
「詳しいことは説明はできぬが妾は大人じゃ」
ロージナさんとダダンさんは信じられないものを見るようにカガリさんを見ている。
「嬢ちゃん、これは」
ロージナさんがわたしを見る。
だからと言って、答えられるわけではない。
「えっと、カガリさんの言葉どおりかな。魔力の影響で、子供になっているけど、立派な大人だよ」
「だから、さっさと酒を用意してくれ」
「……はい。ただいま用意します」
なぜか丁寧口調で答えるダダンさんは部屋から出て行く
ロージナさんは驚いた顔のまま、カガリさんを見ている。
「嬢ちゃんは、嬢ちゃんでなく、姉ちゃんだったのか」
「嬢ちゃんで構わんよ。この姿で大人扱いは変じゃろう」
「……良いのか?」
「構わんよ。実際は大人でも、見た目はこのありさまじゃ。お主が妾のことを大人扱いすれば、周りから変に見られる。だから、嬢ちゃんのままで構わぬ」
「……そうか。分かった。嬢ちゃんと呼ばせてもらう」
カガリさんも半分諦めている感じだ。
初めの頃は幼女扱いされるのは嫌がっていたけど、今ではほとんど反論はしない。
たぶん、言葉で言っても信じてもらえないし、いちいち大人になって証明するのは面倒くさいんだと思う。
つまり、わたしがクマの格好を説明するのが面倒くさいのと一緒だ。
でも、今回はお酒が絡んでいるから、大人だと証明したみたいだ。
ここで、子供だから、お酒が飲ませることができないと口論になるよりは、手っ取り早い。
つまり、そこまでしてお酒が飲みたかったってことみたいだ。
「クマの嬢ちゃんがカガリ嬢ちゃんのことを『さん』付けで呼んでいたのも納得だ」
カガリさんのことを知らない人から見たら、年下の幼女に「さん」付けは違和感を覚えるのもしかたない。
「カガリさんのことは誰にも言わないでもらえると」
「言わん。そもそも、誰が信じるんだ」
まあ、誰も信じないよね。
「酔っ払っていると思われるだけだ。それが酒を飲んでいればいいが、飲んでいなかったら、頭がおかしくなったと思われるだけだ」
「そうだな。誰も信じないだろう」
ドアの前にはダダンさんがいた。
話を聞いていたみたいだ。
ダダンさんはワゴンにいろいろなお酒を載せて戻ってきた。
「おお、たくさんあるのう」
カガリさんはワゴンに載せられたお酒が入った樽や瓶を見て、嬉しそうにする。
「初めに言っておくが、金はもらうぞ」
カガリさんが元の幼女に戻ったことで、ダダンさんの口調は戻っていた。
大人になったのが衝撃的で、一時的なものだったみたいだ。
「聞いておるから、大丈夫じゃ」
ダダンさんは簡単に持ってきたお酒の説明をする。
お酒の樽や瓶には赤、青、黒の紐が結ばれている。
赤が高級、青が中級、黒が安酒と簡単に区別しており、試飲の価格も変わってくるとのこと。
一つずつ価格を決めるのは面倒くさいので、試飲に関しては三段階に分けているとのことだ。
まあ、高級酒と安酒を同じ金額ってわけにはいかないってことだと思う。
安価な材料と高級の材料を使ったものでは違う。
ダダンさんはテーブルの上に樽や瓶を並べていく。
それを見て、カガリさんは嬉しそうにしている。
「なんだ。おまえさんが準備をするのか?」
「こんな見た目の嬢ちゃんの試飲を他の者に任せられるわけがないだろう。しかも俺からの指示だ。子供に酒を飲ませる指示を出したことになるだろう」
確かに、カガリさんのことを知らないなら、子供にお酒の試飲をさせるように指示を出したことになる。
「現状なら、ロージナに飲ませたことにできるからな」
ダダンさんはロージナさんを見る。
つまり、外聞的には、このお酒の試飲はロージナさんが飲んでいることになるみたいだ。
そして、テーブルの上に並べられたお酒を見ながら今度はカガリさんを見る。
「試飲とはいえ、本当にこんなに飲めるのか?」
「大丈夫じゃ」
カガリさんは自信満々に答える。
ダダンさんは一枚の紙とペンをカガリさんに渡す。
「酒と紙には番号が振ってある。指標するのに使ってくれ」
どのお酒を飲んで、どんな感想を持ったか、忘れないようにするためみたいだ。
次にダダンさんは瓶に入っている酒をカップに注ぎ、カガリさんの前に置く。
カガリさんはカップを手にして、軽く匂いを嗅ぎ、カップを口にする。
飲む所作が綺麗だ。
そして、味を確かめるようにもう一口を飲む。
「美味いのう」
「それはよかった。そんなに、うまそうに飲んでくれるなら、作った者も喜ぶだろう」
ダダンさんはそう言って、新しいカップにお酒を注ぐ。
違うお酒を飲むたびにカップを代えるみたいだ。
確かに、オレンジジュースを飲んだあとに、同じカップでリンゴジュースやお茶を飲むと、微妙に味が残っている感じがする。
ちゃんと試飲し、味を確認するなら、新しいカップが正しい。
カガリさんは紙に何かを書くと、新しいカップを手にすると同じ動作をする。
「これは少し、甘いのう。だが、うまい」
「嬢ちゃん、飲み慣れているな」
「酒は好きだからのう」
そして、次々と試飲していく。
「これは酸味があるのう」
「これは苦いのう」
「これは水か? 弱いのう」
「これは香りがいいのう」
「これは変わった味じゃのう」
「これは強いのう」
「これは辛いのう」
「これは渋みがあるのう」
「これは綺麗な色をしているのう」
「これは赤いのう」
「これは苦く、喉にくるのう」
「これはスッキリして、飲みやすいのう」
カガリさんが次から次へ飲むので、ロージナさんとダダンさんは驚いている。
試飲とはいえ、かなり飲んでいる。
お酒って飲んだことがないから分からないけど、どのくらい飲めるものなんだろう。
炭酸水系のジュースは、そんなに一気に飲めないけど、テレビとかでビールを一気に飲んでいるところを見たことがある。
炭酸とビールって違うのかな。
ワインとブドウジュースも違うだろうし、確かアルコール度数だっけ?
度数が高いとキツイとか酔いやすいとか、漫画で言っていた。
そもそも日本酒はビールと違って、お猪口? 小さいカップで少しずつ飲んでいるイメージがある。
そう考えると、お酒は量ではなく、アルコールの度数の大きさで、飲める量が決まるんだと思う。
まあ、わたしはお酒は飲めないので、漫画やテレビの知識だけど。
そんなお酒をカガリさんは頬を赤くして、美味しそうに飲む。
子供なのに、お酒を飲む姿は大人っぽい。
わたしが知っている限りでは、カガリさんの酔い方は綺麗だ。
うちの両親は騒がしいだけだった。
「まだ、飲むのか?」
「なに、あたりまえのことを言っておるのじゃ。目の前に酒があって、飲まない奴はおらんじゃろう。そもそも、お主たちドワーフは水を飲むように酒を飲むのじゃろう。このぐらいで、騒ぐことはなかろう」
「偏見とは言わないが、嬢ちゃんの見た目が、どうしても」
それは分かる。
見た目って大切だ。
大人がすることを子供がしていると、どうしても違和感を感じる。
もしタバコを吸っていたら、完全にアウトだ。
止めたくなる。
「なんじゃったら、お主たちも付き合うか。金なら、妾が払うぞ」
でも、その提案をダダンさんとロージナさんは丁重に断る。
カガリさんは美味しそうにお酒を飲みます。
ちなみに作者はお酒は飲めません。
だから、ユナがお酒が飲めないでよかった。
※前回、おなじコピペをしてしまい、投稿してすぐに読んだ読者様、申し訳ありませんでした。
※ミスリルゴーレムの解体の件(作者は解体していないと思っていた件)
x(旧Twitter)や感想で指摘をくださったみなさん、ありがとうございます。
今回の話を書くためにミスリルゴーレムがどうなったのか、テキストデータで「ミスリルゴーレム」で検索して、該当部分を確認はしたのですが、157話でガザルさんにミスリルゴーレムの解体をお願いしているのを見逃していました。
その後、ミスリルゴーレムをガザルさんから受け取った描写は見つかりませんでした(ミスリルゴーレム検索で全文確認しました)もし、受け取っていたらすみません。見つけられませんでした。
書籍7巻171話(書籍の該当部分)確認すると、ガザルさんにミスリルゴーレムを渡すところが削除されていました。
うろ覚えですが、ミスリルゴーレムを受け取った話がなかったため、削除した記憶が微かに残っています。なにぶん9年前のことなので申し訳ありません。(web版のほうも2015年7月30日で約11年前になるみたいです)
当時の自分が書籍7巻を書くときに修正したらしいので、ミスリルゴーレムを解体をガザルさんに頼んでいない感じで進ませていただければと思います。
※157話の該当部分は書籍合わせで修正させていただきました。
読者様にはご迷惑をおかけします。
覚えている読者様、凄いです。
※クラファン、書籍のイラストを描いてくださっている029先生のサインが追加されました。
気になる方がいましたら、よろしくお願いします。
活動報告にて、書籍23巻の書き下ろし、店舗購入特典の書き下ろしのリクエストを募集中です。
参考にしたいと思います。リクエストがあれば活動報告にて、よろしくお願いします。
22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。
出版社『PASH! BOOKS』創刊10周年記念POP UP SHOPが開催決定しました。
東京(新宿マルイ アネックス 6階 カレンダリウム5)2026年4月11日(土)~ 4月19日(日)
大阪(リンクス梅田 地下1階 イベントスペース)2026年5月1日(金)~ 5月8日(金)
クマグッズも販売されます。内容に関しては活動報告にてお願いします。
※現在、出版社のクラファンが行われています。
ここでしか手に入らないクマのグッズなどもあります。
気になる方がいましたら、よろしくお願いします。
期間:3月31日まで
リンク先や内容については活動報告や旧Twitterよりお願いします。
支援してくださったみなさま、ありがとうございます。




