937 クマさん、材料を探す
ロージナさんとわたしたちは鉱山近くの鉄鉱石を加工している工場までやってきた。
建物は複数あり、多くのドワーフが動き回っている。
当たり前だけど、ドワーフ全てが職人ってわけじゃない。
普通に暮らしたり、仕事をしているドワーフもいる。
ちなみに、ドワーフだけでなく普通の人も働いている。
「こっちだ」
ロージナさんは一つの建物の中に入る。
「ロージナじゃないか。鉄を買いに来たのか?」
建物の中にいたドワーフがロージナさんに気づくと、声をかけてくる。
「バッソか。今日は他の鉱石も買いにきた」
「ほう、店が順調ってところか」
「そんなところだ」
ロージナさんは誤魔化すように言う。
まあ、わたしみたいな小娘にお金を払ってもらうとは言えないよね。
「それで、そっちの変な格好した嬢ちゃんたちはなんだ?」
男性がわたしとカガリさんを見る。
「嬢ちゃんたちって妾も入っておるのか?」
カガリさんの呟きが聞こえる。
もしかすると変な格好って中に自分も入っているのが心外だったのかもしれない。
「そっちのクマの嬢ちゃんたちはゴルドとガザルの知り合いだ」
カガリさんは違うけど、説明が面倒くさいので修正はしない。
カガリさん本人も黙っている。
「俺はバッソ。ここの管理を任されている」
ここまでに来るときに聞いたけど、鉱山は街が管理をしている。
つまり、バッソさんは雇われ管理者ってところみたいだ。
それでもここでは偉い人ってことになる。
「ユナだよ」
「カガリじゃ」
わたしとカガリさんは名を名乗る。
「まずは嬢ちゃんの刀を作る材料だな。材質はなににする?」
「お金には糸目はつけないけど。一番いい材質ってなに?」
この世界の鉱石については詳しくはない。
知識はミスリルがあるってことぐらいだ。
「使う用途によって異なるが、武器に使うならミスリルだな。もちろん、伝説級の素材もあるが、そんなものは簡単に手に入るものじゃない」
やっぱり、そうなんだ。伝説級の素材って、アダマンタイトとかオリハルコンのことなのかな?
よく知らないけど。
「なんだ。そのクマの嬢ちゃんの武器を作るのか?」
バッソさんがわたしを見る。
「ああ、その代金として、鉱石を少しばかり買ってくれることになった」
「材料には糸目はつけないとか言っていたが、嬢ちゃんは、どこかの貴族の令嬢とか、大商人の娘か?」
「ただの冒険者だよ」
わたしの言葉にバッソさんは微妙な顔になる。
信じていない顔だね。
「それだと、現状はミスリルになるな。バッソ、ミスリルの在庫はあるか?」
「ミスリルの配分は決まっていることを知っているだろう。お前のところは……」
ちょっと言いにくそうにする。
どうやら、ミスリルは貴重らしく、配分が決まっているらしい。
たぶん、ロージナさんは今まで武器を作ってこなかったから、ミスリルの配分がないってことだ。鍋やフライパンにミスリルは必要はないからね。
そして、現状ではミスリルを買うお金がなかったみたいだけど。
そういえば、鉱山でゴーレム討伐の依頼を受けたとき、サーニャさんとエレローラさんが優先的にミスリルを回してくれるって話があったけど、あの鉱山でも配分が決まっていたのかもしれない。
「どうしてもミスリルが欲しいと言うなら、他の者と交渉してもらうしかないだろうな」
つまり、譲ってもらうってことだ。
でも、わたしには必要はない。
「ロージナさん、ミスリルなら持っているよ。でも、鉄とくっついているから、離さないといけないけど」
ハリボテミスリルゴーレム。
外側はミスリル、内側は鉄というコスパ最強のミスリルゴーレムだ。
「鉄とくっついている? 加工が失敗したのか?」
ロージナさんとバッソさんは同じ顔をする。
「えっと、少し広めで、人がいないところってある?」
説明するよりも見てもらったほうが早い。
でも、ここでミスリルゴーレムを出すと目立つ。
ここには作業をしている人もいる。
ミスリルゴーレムを出して、騒がれても困る。
「嬢ちゃんのことだ。理由があるんだろう。バッソ、人の目がないところはあるか?」
「なにをするのか分からないが、隣の倉庫が空いている」
わたしたちはバッソさんの案内で隣の倉庫にやってくる。
荷物が多少置いてあるが、人はいない。
「ここで大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
わたしはみんなから少し離れ、クマボックスからミスリルゴーレムを出す。
「なんだ!」
「ご、ゴーレム!」
ロージナさんとバッソさんが驚きの声をあげる。
「動かないから大丈夫だよ。ロージナさん、これを見て」
わたしはミスリルゴーレムの切り口をクマパペットで指さす。
ミスリルゴーレムが動かないと分かったロージナさんたちは恐る恐る近寄ってくる。
そして、ロージナさんはミスリルゴーレムを観察するように見て、触れる。
「これはミスリルなのか?」
「つまり、ミスリルゴーレムってことか? そんなのが存在するのか?」
興味津々にミスリルゴーレムを見る2人。
いや、カガリさんも一緒に見ているので3人だ。
「これは外側はミスリルだが、内側は鉄か?」
「だから嬢ちゃんは鉄とミスリルがくっついていると言ったわけか」
2人は納得したような表情をする。
「このゴーレムはどうしたんだ?」
「少し前に、こことは違う鉱山で現れたのを倒したんだよ」
「鉱山に?」
「内側が鉄だとしても、外側はミスリル。どうやって倒すんだ? 倒せるのか?」
「かなり強い衝撃を受けたみたいだな」
2人は観察するように見ている。
その周りではカガリさんが触ったりしている。
カガリさんでも珍しいのかな。
「ミスリルゴーレムが壊れるほどの、衝撃を……」
めちゃくちゃ高いところから落としました。
「本当に嬢ちゃんが倒したのか?」
3人の視線がわたしに集まる。
「……一応」
「冗談だろう。この可愛らしい女の子が、このミスリルゴーレムを倒したと」
「事実だろう。ガザルとゴルドから優秀な冒険者だと聞いているし、俺もこの目で嬢ちゃんが戦うところを見ている。嬢ちゃんはそこらにいる冒険者とは違う。だから、俺は嬢ちゃんの武器の制作を引き受けた」
「おまえさんが冗談を言うわけがないから、事実なんだろう」
バッソさんはロージナさんの言葉に信じられないという表情をするが、疑わない。
「嬢ちゃんが持っているミスリルナイフはこのミスリルゴーレムから作った物なのか?」
「うん」
「だから、ところどころ体の一部が無いわけだ」
わたしとフィナのナイフを作るために、ゴルドさんとガザルさんが使った部分だ。
「それで、倒したのはいいけど。こんな鉄とミスリルがくっついているから。分けて欲しいんだけど」
このままだと使い難いし、人にあげ難くい。
いっそのこと全部をミスリルと鉄に分けたい。
「このぐらいの量なら、時間をかければ俺のところでもできるが、バッソ」
ロージナさんがバッソさんを見る。
バッソさんは少し考える。
「できるが、すぐには無理だ。精錬するには高炉が必要だ。だが、高炉は活動中だ。高炉が空くのは夜になってからになる。それで構わないなら」
ここは、鉱山で採れた物を加工する場所だ。
そちらを優先するのは当たり前だ。
「それから、金は払ってもらうことになる」
それぐらい構わない。
タダでやってもらおうとは思っていない。
「問題ないよ」
話がまとまる。
「それじゃ一度、ゴーレムを戻してくれ」
わたしはミスリルゴーレムをクマボックスにしまう。
「本当に嬢ちゃんには驚かされる。まさかミスリルゴーレムを倒し、持っているなんてな」
「たまたまだよ」
「たまたまで倒せるものじゃないが」
ミスリルゴーレムを倒し、くまゆるとくまきゅうのパワーアップアイテムを手に入れたのは懐かしい思い出だ。
パワーアップして、空を飛んでくれたら、嬉しかったんだけど。
まあ、強くなって、さらに身を守ることができるようになって、安心はできるようにはなった。
「それじゃ、戻るか」
「待て」
カガリさんが引き止める。
「どうしたの?」
「ユナ、氷竜の角はあるか?」
「あるけど」
「氷竜の角を刀の材質に一緒に使うといい。強度も強くなる」
「ちょっと待て。氷竜の角だと」
「そんな伝説の魔物の角を持っているのか?」
「どこでそんなものを」
ロージナさんとバッソさんが、ミスリルゴーレムを見たときよりも大騒ぎする。
「カガリさんが、変なことを言うから」
「お主が刀を作ると聞いてから、考えておった。お主が扱っても簡単に折れない刀。お主の技術に耐える刀。お主が持つに相応しい刀と思ったから言っただけじゃ」
確かに、言うタイミングがあるけど、材質の話をしている今かもしれない。
「そんなことを考えてくれたの?」
「お主は面倒ごとに巻き込まれるからのう。武器がほしいならちゃんとしたものがいいじゃろう。次に現れる相手が氷竜程度ではないかもしれぬ」
なにそれ。
氷竜以上って、怖いんだけど。
そんな相手と戦う予定なんてないし、戦いたくないよ。
ミスリルゴーレムと氷竜の角が出てきました。
最高の1本が作れそう?
※活動報告にて、書籍23巻の書き下ろし、店舗購入特典の書き下ろしのリクエストを募集中です。
参考にしたいと思います。リクエストがあれば活動報告にて、よろしくお願いします。
22巻の発売の情報はもう少しお待ちください。
※現在、出版社のクラファンが行われています。
ここでしか手に入らないクマのグッズなどもあります。
気になる方がいましたら、よろしくお願いします。
期間:3月31日まで
リンク先や内容については活動報告や旧Twitterよりお願いします。
※作者のサイン本の残り1となりました。(3/8現段階)
支援してくださったみなさま、ありがとうございます。




