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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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951/965

927 ジュウベイ、ユナと戦う

 強い。

 本当に強い。

 どんな攻撃をしてもナイフ一本で対応される。

 綺麗な動き、滑らかな受け流し、芸術品を見ているようだ。

 俺が攻撃すれば、大抵の者は受け止めることができず、倒れる。

 でも、嬢ちゃんは避ける、受け流す。

 クマの格好した不思議な女の子。

 クマの格好でなければ、その戦いに誰しもが見惚れていただろう。

 初めて戦ったときは信じられなかった。

 同年代の女の子ではシノブも強いが、それ以上。

 怖がらず、俺を見る真っ直ぐな目。

 恐怖心はない。全てを見透かすような目。

 俺の部下でさえ、こんな落ち着いた目をする者はいない。

 攻撃をすると怖がり、目を閉じる者もいる。

 大抵の者は、俺の攻撃は避けられない。

 でも、嬢ちゃんは躱す。

 俺のほんの少しの動きも見逃さない。

 足先を動かせば、対応してくる。

 少し手首を動かせば、反応する。

 どんなに速く刀を動かしても、防がれる。

 楽しい。

 俺の攻撃をこんなに受け止めてくれる者はいない。

 鍛錬や練習だけでは、この領域には辿り着けない。

 どれだけの実戦の場数を踏めば、ここまで強くなれるのか。

 可愛らしいクマの格好して弱者に見えるのに倒せる気がしない。

 初めて戦う者は、ユナの見た目に騙されて負けるだろう。

 俺もその1人だ。

 いや、見た目に騙されなくても勝てないだろう。

 でも、途中から本気で戦った。

 それなのに負けた。

 だが、ナイフ1本で戦うユナに負けるわけにはいかない。

 もっと、ユナの力を引き出したい。

 ユナはナイフを2本使い、魔法も使える。

 大蛇を倒せるほどだ。

 ユナの力をどこまで引き出せるかだ。


 やっぱり、妖刀魔花の力を借りるしかないみたいだ。

 俺は妖刀魔花の説明をしようとするがユナは断る。

 確かにそうだ。

 戦いで、わざわざ技を使う前に説明する者はいない。

 俺は妖刀を使っていることに負い目を感じ、妖刀の説明をしようとしていた。

 つまり、言い訳だ。

 妖刀魔花の説明をするから、妖刀を使うことを許してほしいと。

 妖刀魔花の説明して少しでも負い目を取り除きたかった自分がいた。

 情けない。

 妖刀を使っている時点で卑怯。対等ではない。

 でも、やめる訳にはいかない。

 この数日間、考え、自分で選んだことだ。

 ユナは、そんな俺との戦いを楽しむと言ってくれる。

 ユナの優しさ。

 その気持ちが俺の負い目を消してくれる。

 純粋。

 俺が捨てたもの。

 ユナは戦いの強さだけではなく、心も強い。

 このクマの格好した少女からは想像もつかない。

 妖刀の力に頼った俺とは違う。

 ユナの純粋な強さに羨望する。

 もっと、昔に出会いたかった。

 俺はユナの言葉を受け入れ、妖刀魔花の説明はしない。


 刀を構える。

 こんな攻撃で倒れないでくれ。

 まだ、戦いたいのだから。

 妖刀魔花に魔力を込める。

 ゆっくりとユナを見つめる。

 上から光が照らされているユナの目が真っ直ぐに俺を見ている。

 少しの動きも見逃さないような目。

 俺が攻撃するのを待っている。

 可愛らしいクマの服を着た少女。

 小さい体。

 息を小さく吸い込み、足に力を入れる。

 一瞬でユナとの間合いがつまり、刀を振るう。

 まだだ。

 動く。

 ユナは反応する。 

 反応速度が速い。

 刀を振るうが、ユナは躱し、受け流す。

 ユナならどんな攻撃でも受け止めてくれるという思いがある。

 勝ちたい気持ちと、防いでほしい気持ちが交差する。

 妖刀魔花の魔力を解放をする。

 刀にあった魔力が花のように広がり、刃となってユナを襲う。

 魔力の花の刃は衝撃はあるが、死にはしない。

 流石に避けられないと思ったが、ユナは迷うことなくナイフを振り、魔力の花を斬り、刀を受け止める。

 だが、残りの魔力の花の刃がユナを襲う。

 だけど、ユナの逆の手にナイフが握られており、数枚の魔力の花を斬る。

 まだだ。まだ魔力の花の刃は残っている。

 魔力の花の刃がユナを襲うが、ユナは避ける。

 このまま追い討ちをかければ、ユナに当てることができたかもしれない。

 でも、ユナの動きに見惚れてしまった。

 絶対に避けられないと思った。


「ギリギリだよ」


 言葉通りにギリギリだったかもしれない。

 だがそれ自体がおかしい。

 普通なら避けられない。

 あの一瞬で、なにをしたと思っている。

 ユナはナイフに魔力を込め魔力の花を斬った。しかも、流れるように左手にもナイフが握られており、残りの数枚の魔力の花を斬り、逃げ場を作り、避けた。

 できるものなのか。

 どんな攻撃が来るか予想はできない。

 初めて見る攻撃。

 なのに防いだ。

 どうしたら、その年齢で、その領域に辿り着けるんだ。

 もしクマの服に身体能力を上げる力があったとしても、それだけだ。

 子供になんでも斬れる武器を与えても、扱えないなら脅威にならない。

 扱う人間が素人なら役に立たない。

 もし、ユナが妖刀を持ったらと思うと恐怖を感じる。


「楽しいな」

「そうだね」


 高揚感が止まらない。

 この俺を受け止めてくれるのが、こんな少女だとは思わなかった。

 出会わせてくれた神に感謝だ。


 妖刀魔花を構える。

 小さく息を吐く。

 この呼吸さえも、ユナに筒抜けのような気がする。

 でも、この呼吸が落ち着かせる。

 呼吸が攻撃のタイミングを計る。

 すぅ、はぁ、すぅ、はぁ

 ユナはジッと待ち構えている。

 俺の少しの動きを見逃さないように目が見ている。

 ……動く。

 踏み込み、斬りかかる。避けられる。切り返す。防がれる。

 笑みがこぼれる。

 防ぐと同時に、逆の手に持っているナイフが襲いかかってくる。

 しかも、反撃してくる。

 普通なら防ぐだけでも賞賛に値する。

 でも、ユナは反撃してきた。

 幸運と言うべき、ユナが持っているナイフが短いこともあって、俺には届かない。

 幸運? 笑わせるな。ハンデだろう。

 刀だったら、斬られていた。

 もちろん、刀とナイフでは扱い方は違う。

 同じことが起きたか分からない。

 でも、目の前にいるユナなら、刀でもナイフのように使いこなせてしまうのではないかと思ってしまう。


 刀を振るう。

 ユナは後方に下がり紙一重で躱す。

 この見切りも凄い。

 ユナは「ギリギリ」だと言うが、見切っているのだろう。

 紙一重で躱し、攻撃をしてくる。

 紙一重で躱す姿は神の領域。

 このギリギリで躱すことがどれだけ難しいことなのか、戦った者なら誰でも分かる。

 しかも、あのクマの服だ。

 膨らんでいるお腹も考慮されているから、凄い。

 もし、あのクマの服のことを考えていなかったら、もっとギリギリで躱し、ナイフが俺に届いていたかもしれない。

 俺にあのクマの服を斬ることができるのか。

 まあ、そのときは弁償はするから、許してくれ。

 ユナに斬りかかるが、クマの服に掠ることもできない。

 あの白いお腹が近いようで遠い。


 ユナの攻撃を躱すために後方に飛び、着地と同時に突きの構えをする。妖刀魔花に魔力を込める。

 足に力を入れ、踏み込む。

 これはどうやって躱す!

 魔力を解放する。

 突き出された妖刀魔花の周りに魔力の花が咲く。

 広がった突きを躱すのは普通に困難だ。

 躱されたとしても、二突き目、三突き目がある。

 足に力を入れ、腕に力を入れた。

 ユナを見る。

 ユナが突きの構えをしている。

 それで防ぐつもりなのか。

 俺の動きは止まらない。

 踏み込んだ突きはユナに向けて突き出される。

 最速。

 突きの周りに咲いた花が刀と一緒にユナを襲う。

 ユナも踏み込み、ナイフを突き出してくる。

 刀と10枚の花の刃がユナを襲う。

 このまま突き出せば勝てる。そう思った瞬間、ユナから突き出されるナイフの周りに、俺の刀同様に魔力の刃が作りだされる。

 理解したとき、魔力で作られた花は粉砕され、本物の刀は弾かれていた。

 驚いた俺は二突き目を繰り出すことができなかった。

 逆にユナの白い手に持っているナイフが襲いかかってくる。

 負けたくない。

 無意識に腰にある刀に手をかける。

 引き抜き、ユナのナイフを受け止める。

 まだだ。

 弾かれた刀を振り下ろす。

 ユナは踏み込んだ足を止め、上体を反らす。

 どうして躱せる!

 どこまで見えているんだ!

 振り下ろされた刀が空を斬り、今度は逆に俺の刀を弾いたナイフが俺に迫ってくる。

 動け。

 少しでも離れるんだ。

 後ろに体を反らす。

 ナイフが目の前を通る。

 そのまま足に力を入れ、後方に逃げる。

 ユナが刀を持っていたら、体は斬られていた。

 そもそも、ユナが刀を持っていたらと想定したら、俺はこの短い間に何度斬られた?

 考えるだけで冷や汗が流れる。

 いや、ユナが刀を持っていたら、それなりの対応はしていただろう。

 だが、ユナが刀を持っていたら間合いも変わり、こんなに攻撃はできなかった。

 俺の攻撃回数は減り、ユナの攻撃回数が増えていただろう。

 どっちにしても、俺が有利ってことはない。

 笑みが溢れる。

 楽しい。楽しくて仕方ない。

 こんなに力を振っても、倒すことができない。

 ハンデをもらっても追い詰められる。

 眼帯を外しても勝てない。

 あとは何が俺に残されている。

 左手に持つ妖刀が熱くなる。

 妖刀狂華。

 高揚感が増す。

 痛みが軽減する。

 この妖刀は持ち主に関係なく、相手を切り裂くためだけの刀。

 人を動かし、人を斬る。


 正確には動物でも魔物でもいい。

 ただ、斬りたいだけの刀。

 この数日間、試して分かったことは血を吸うことで強くなる。

 魔物の血でも同様だった。

 仕組みは分からないが、普通は斬っていくと刀に血が付き、斬れ味が落ちる。

 でも、これは逆。斬れば斬るほど、斬れ味が上がっていく。

 押さえ込むのは大変だった。

 この刀を持つと斬りたくなる。

 手にしたことで、目の前の少女を斬りたいと思ってしまう。

 もっとも危険な妖刀だ。

 この妖刀を試してみたいが、殺したい気持ちを俺に訴えてくる。

 だが、それ以上に俺の気持ちは、嬢ちゃんとの戦いに飲み込まれている。


 そして、妖刀魔花の力を使い、ユナに攻撃を仕掛ける。

 妖刀魔花を使い、刀とナイフがぶつかり合うたびに、ユナの魔力を吸い上げてきた。

 武器を使った戦いだけでも、信じられない強さなのに。この魔力量。どんどん、妖刀魔花に魔力が溜まっていく。

 なのに、ユナの表情は変わらない。

 どれほどの魔力を保有しているんだ。

 無心で俺の攻撃を躱していく。

 妖刀魔花で作り出された魔力の花も、やすやすと対応してくる。

 歴史上に一回見た攻撃は効かない武士がいたそうだが、まさしくユナがそうだ。

 人が苦労して身に付けた技を一回見ただけで、対応する。

 いや、ユナの場合は初見で躱す。

 ところどころに風魔法を入れるが、ユナは対応してくる。

 もう、ここまでだな。


 勝つにしても負けるにしても、これが最後だ。

 どっちが勝つにしても、最後の攻撃になる。 

 後方にジャンプして、ユナとの距離をとる。

 妖刀魔花に溜められた魔力を解放する。

 上空に大きな大輪の花が作られる。

 同時に突きの構えをする。


「終わりにしよう」


 大輪を放つと同時に足に力を入れ、踏み込む。

 これで終わりだ。

 踏み込みと同時に、ユナの上にクマの大輪が浮かび、放たれた大輪の花に向かってくる。

 なにが起きているか分からなかった。

 今、できることはこの突きを嬢ちゃんに向けて放つこと。

 魔力と魔力がぶつかりあい、衝撃が伝わってくる。

 だけど、俺の足も腕も止まらない。

 足を動かし、腕を伸ばし、突きを繰り出す。

 突き出した刀はユナのナイフによって弾かれる。

 軽く弾いたわけじゃない。

 刀を握っている手が痺れ、刀が空中に舞う。

 まだだ。左手に持つ妖刀狂華を下から振り上げる。

 だが、それと同時に左手に衝撃が走る。

 蹴り!?

 ユナが俺の左手を蹴り上げていた。

 左手に持っていた刀は俺の手から離れ、空高く飛ぶ。

 両手が空になる。

 負けた。と思った瞬間、黒い何かが迫ってくる。

 それが、ユナが殴りかかってきたと気づいた瞬間には顔に衝撃が走り、吹っ飛んだ。

 その後の記憶はなかった。

 


ユナVSジュウベイ、決着です。


※次回か、その次か、確定申告(税金)の準備のため、休むかもしれません。


※「くまクマ熊ベアー」のコミカライズが読める「コミマガ」のアプリが始まりました。ちなみに他社作品の有名作品も読めますので、よろしくお願いします。あと、お気に入りに入れていただけると嬉しいです。


※くまクマ熊ベアー10周年です。

原作イラストの029先生、コミカライズ担当のせるげい先生。外伝担当の滝沢リネン先生がコメントとイラストをいただきました。

よかったら、可愛いので見ていただければと思います。

リンク先は活動報告やX(旧Twitter)で確認していただければと思います。


※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約受付中ですが、お店によっては締め切りが始まっているみたいです。購入を考えている方がいましたら、忘れずにしていただければと思います。


※祝PASH!ブックス10周年

くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎え、いろいろなキャンペーンが行われています。

詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとの22時前後に投稿させていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売しました。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ13巻 2025年6月6日に発売しました。(次巻14巻、発売日未定)

コミカライズ外伝 4巻 2025年8月1日発売しました。(次巻5巻、未定)

文庫版12巻 2025年6月6日発売しました。(次巻13巻、発売日未定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
そうだよそうだよ!ユナは熊装備のおかげって言うけど使い手が未熟だと意味が無い装備のおかげで攻撃が見えて動けたとしても躱し方が変わる無駄なく次の動作に繋げれるのは間違いなくユナの力 プロゲーマーと同じデ…
>しかも、あのクマの服だ >膨らんでいるお腹も考慮されているから、凄い >もし、あのクマの服のことを考えていなかったら、もっとギリギリで躱し、ナイフが俺に届いていたかもしれない ジュウベイさんは以前…
ユナは、魔物や人間と戦うにしても、武器も使いますが、今までは強力な魔法で圧倒していた印象があります。 騎士などと戦ったり、シアやセレイユと剣で対戦した時も、実力差があり過ぎて、ユナの"武器を使った戦い…
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