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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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919 クマさん、シノブの話を聞く

「それで、シノブのほうは終わったの?」

「終わったっすよ」


 城に使いの者を行かせ、男を引き渡すため、人を寄越すように連絡をしたそうだ。


「あとは、わたしも城に行って、報告するっすよ」


 シノブはそう言って、わたしの横に置かれている妖刀を見る。


「妖刀も持って行こうと思っているっすけど、触っても大丈夫っすか?」

「カガリさんが、封印してくれたから大丈夫だよ」


 わたしは妖刀を手にして、シノブに差し出す。

 シノブは恐る恐る妖刀を手にする。


「大丈夫っすね。それで2人は……」


 シノブは付いてきてほしそうな目をする。

 でも、わたしとカガリさんはゆっくりと目をそらす。


「酷いっす」

「そもそも、今回は妾たちは関係ないじゃろう。一緒に城へ行っても意味がない」

「それに、城から戻ってきたばかりだしね」


 また、城に戻るのは面倒くさい。

 それにカガリさんの言うとおりに、わたしたちが行っても意味がない。

 なにも説明できることはない。

 行くとしたら、サクラだ。


「わたしが一緒に行きましょうか」

「サクラ様は、ユナとカガリ様と一緒にいてくださいっす。わたしが説明してくるっすから」


 シノブは諦めた表情をすると、わたしたちを見る。


「そういえば、2人が城に呼ばれた理由はなんだったっすか?」

「わたしも気になります」


 わたしとカガリさんは城に呼ばれた理由を話す。


「サタケさんが、妖刀に取り憑かれたっすか?」

「取り憑かれたってわけじゃないのかな。妖刀の力に飲み込まれたっていうのかな?」

「……それに違いがあるのですか?」


 今の説明だと、サクラには分かりにくかったみたいだ。


「そうじゃのう。ユナが言いたいのは自分の意思で妖刀を使うのか、妖刀の意思で妖刀を使うのかの意味じゃ」


 わたしの代わりにカガリさんが説明してくれる。


「カガリ様の言い方だと、今回、わたしが戦った男は妖刀の意思で妖刀を使ったことになるっすね」

「そして、サタケさんは自分の意思で妖刀を使った」

「自分の意思で……」


 シノブとカガリさんの説明で、なんとなく理解したみたいだ。


「サタケは自分の意思で妖刀の力を使って、ユナとジュウベイを倒そうとしたのじゃ」

「それで、ユナが城に呼ばれて、サタケさんと戦うことになったってことっすか?」

「そうなるね」

「カガリ様が、呼ばれた理由は?」


 サタケさんの希望はわたしとジュウベイさんだった。

 確かに、カガリさんを呼ぶ必要はない。


「妾はユナが負けたときの保険じゃろう。ジュウベイの代わりかもしれぬが。まあ、ユナがサタケに勝ったから、妾は意味はなかったがな」

「そんなことないよ。すぐに妖刀を封印してくれたし」


 妖刀は逃げようとした。

 カガリさんがいなかったら、逃がさないようにずっと刀を握ることになったかもしれない。


「ユナ様は妖刀を持ったサタケに勝ったのですね」

「信じられないっす。わたしは普通の男が持った妖刀にすら苦労して、どうにか倒したっすのに」

「いや、まだ分からないでしょう。実は、シノブが倒した男が、達人って可能性もあるでしょう」

「擁護しなくてもいいっすよ。さっき男の手を見たっすけど、素人の手だったっす」

「天才かもよ」

「そんなのはユナだけっすよ。ユナみたいな天才が何人もいたら困るっす」

「別にわたしは天才ってわけじゃ」

「そんな言葉はいいっすよ」

「いや、本当に、別に天才ってわけじゃ」

「それじゃ、手を見せてくださいっす。手を見れば、どれだけ鍛錬をしたか、分かるっす」

「えっと」 わたしの手には、豆とかもないし、皮膚が剥けたり、硬かったりしない。

「冗談っす。お風呂に入ったときに見たっす。ユナの手は綺麗だったっす」


 見られていた?


「えっと、このクマのおかげで、わたしの手は」


 わたしはクマパペットをパクパクさせる。


「シノブ、ユナを追い詰めるな。ユナに才能があるのは確かじゃが、鍛錬を積んでいない者の動きでないことは分かっているはずじゃ」

「ごめんなさいっす。サタケさんじゃないけど、妖刀があればユナに勝てるかもと考えたことがあるっす。だから、サタケさんの気持ちが分かるっす」

「別にいいんじゃない。誰だって、凄い武器は欲しいと思うんだから。でも、これはサタケさんにも言ったけど、妖刀の意思に呑み込まれたらダメだよ。ちゃんと自分の意思で武器を手にして、自分の意思で戦わないと」

「そうっすね」


 ゲームやっている者なら、強い武器を手に入れたい気持ちは誰にだってある。

 ただ、それが呪いの武器だったら別だ。

 攻撃力が高いけど、ランダム攻撃で、仲間に攻撃する武器もあった。

 流石に、あれは使えなかった。

 あと攻撃するたびにHPやMPが減っていくとか。これはまだマシなほうだけど。仲間に攻撃だけはダメだ。

 話をしていると、女性がやってきて、城から馬車が来たと言う。


「それじゃ、わたしは一人寂しく、城に行ってくるっす」

「いってらっしゃい」

「行ってこい」

「夕食までには帰ってきてくださいね」


 誰もついて行こうとはしない。


「ひどいっす」


 シノブは妖刀を持って、部屋から出ていく。


「騒がしい奴じゃのう」

「そういえば、わたしたち、馬車を放置してきちゃったけど」


 サタケさんが用意してくれた馬車が来る前に飛び出してきてしまった。

 もしかして、馬車がわたしたちをいまだに待っていたりしないよね。


「妾たちが飛び出して行くのを見ておる者もいる。それにシノブからサタケの方へ話も行くじゃろうし、大丈夫じゃろう」


 まあ、今回は緊急だった。謝れば許してくれるよね。


「じゃが、これで残りは3本じゃのう」

「シノブが回収した妖刀は盗みに入った男が持っていた一本ってことだよね」


 消去法で、屋敷に入ってきた男が持っていた妖刀は、黒男と一緒に盗みに入った男が持っていた妖刀だ。

 その男は殺されて、妖刀は行方不明だったけど。


「ジュウベイと例の男が渡したとかでなければ、そうなるじゃろう」


 あの2人が妖刀を赤の他人に渡すとは考えられない。


「そうなると、ジュウベイさんが2本、黒男が1本ってことだね」


 まさか、1日で2本の回収だ。

 しかも、ほぼ同時に。


「『妖刀右京』『妖刀魔花』『妖刀狂華』の3本ですね」

「男が持っていたのが妖刀魔花だとすると、ジュウベイさんが持っているのは妖刀右京と妖刀狂華ってことになるね」

「厄介じゃのう」

「厄介だね」


 わたしとカガリさんの言葉がハモる。


「結局のところ、応援は呼べないんだよね」

「呼べないとは言わんが、人手不足じゃ。それにスオウの心の中ではお主と妾に任せるつもりでいるじゃろう」

「それじゃ、応援は呼ぶつもりはなし? ってこと?」

「そうは言わんが、急がせるつもりはないかもしれぬ。あやつも国の王だ。優秀な部下に被害が出るのは抑えたい気持ちがある。まして、相手はジュウベイ。さらに妖刀を持っている。どれほどの被害が出るか分からない。だから、スオウの心の中では、妾たちが解決することを願っておるじゃろう」

「つまり、わたしたちなら、被害が出てもいいってこと?」


 わたしの言葉にカガリさんは首を横に振る。


「違う。妾たちが負けることがあれば、結局のところ、他の者たちをジュウベイと戦わせないといけない。実力を考えて、戦わせたくないのじゃろう」

「つまり、伯父様はお二人を信用しているってことですね」

「そうとも言うが、妖刀を持ったジュウベイとまともに戦える者がいないと言うのが理由じゃろう」


 強いジュウベイさんが、さらに妖刀で強くなった。

 大切な部下を戦わせたくないよね。

 しかも、勝てるかどうか分からない。

 怪我、もしくは重傷を負ったり、死ぬようなことがあれば、最悪の状況だ。


「だから、スオウの奴を怒らんでくれ。あやつも国王という立場がある」

「別に怒らないよ。それに首を突っ込んだのはわたしだからね」


 まあ、元はシノブの怪我が原因だけど。


「それにまだ、ジュウベイと戦うと決まったわけじゃないからのう」

「カガリさんはジュウベイさんのことはどう思う?」

「それは、ジュウベイの行動についてか?」

「うん。妖刀を回収しているのに、未だに戻ってこない理由」

「まあ、いくつか考えられるが、迷っているんじゃないかと考えておる」

「迷っている?」

「サタケと同じ理由じゃ。妖刀の強さに惹かれて、お主との再戦を望んでいるという可能性」

「ちょ、冗談でしょう」

「可能性の一つじゃ。自分の力でない力に頼るのを否定。でも、お主もサタケに言っていたじゃろう。武器も強くなる方法の一つだと」

「うん」


 魔物の硬い体を切り裂くには木の剣より、鉄の剣。鉄の剣より、鋼の剣。鋼の剣より、ミスリルの剣。

 敵を倒すにはより良い武器を手にするのは当たり前だ。


「だが、ジュウベイは対等な戦いを望んでおる」

「だから、悩んでいると」

「まあ、あくまで、妾の考えじゃ。ユナの知り合いの男の妖刀を回収すれば、ジュウベイの考えも分かるじゃろう。普通に戻ってくるかもしれんしな」


 だったらいいけど。


「ともかく、ジュウベイさんの相手はカガリさんがするんでしょう」

「まあ、妖刀右京を回収するのは妾の役目じゃからのう」


 カガリさんがジュウベイさんと戦ってくれるなら、わたしとしては助かる。

 ジュウベイさんと戦うのは、正直面倒だからね。


 それから、のんびりとしていると、やつれた顔をしたシノブが帰ってきた。


「疲れたっす」

「お疲れ様です」


 サクラが冷たいお茶を出し、そのお茶を一気に飲み干すシノブ。


「それで、なにか分かったことはあったのか?」

「分かったことは、さっきの男が城に入り込んだ男を殺したってことぐらいっすね」


 シノブの話だと、妖刀を盗んだ男は、シノブが戦った男に借金があったそうだ。

 それで、盗んだ妖刀を売ってお金にしようと考えていたんだが、この男が妖刀を手にした瞬間、徐々に妖刀に侵され、妖刀を盗んだ男を殺してしまったそうだ。

 あと、妖刀の意思のまま城下町を歩いていると、妖刀が反応し、サクラの屋敷に入り込んだと言う。

 これはシノブとサクラの考えだけど、サクラが紙で指を切ったのが原因ではと言っていた。


「そんなに血の匂いがするものなんでしょうか」

「妖刀が特別だったのじゃろう」


 あとはサクラとシノブから聞いたとおりに戦いになり、シノブが勝ったってことだ。


「最後、サクラに飛んでいったのは、封印された恨みだったのかもね」


 だからといって、関係ないサクラを襲うなんて、とんでもない妖刀だ。


「折って、粉々にして、世界の果てに捨ててくればよかったかも」


 タールグイに乗って、見知らぬ海の底に捨てるとか。

 粉々にして海に捨てれば、粉々になった妖刀は海に漂うことになるから再生もできないと思うし。 


「もし、今度妖刀が暴れたら、処分はわたしに任せて、二度と復活させないから」

「お主が言うと、本当にできそうで怖いのう」

「冗談じゃないけど」


 わたしの言葉に、全員が引きつった顔をする。


シノブは頑張った。

残りはジュウベイと黒男の戦いのみですね。


MITACLE(ミタクル)様より、ユナがブロック化することになりました。

 詳しいことは活動報告を見ていただければと思います。

予約期間:2025/12/01(月)〜2026/01/16(金)


※「くまクマ熊ベアー」のコミカライズが読める「コミマガ」のアプリが始まりました。ちなみに他社作品の有名作品も読めますので、よろしくお願いします。あと、お気に入りに入れていただけると嬉しいです。


※くまクマ熊ベアー10周年です。

原作イラストの029先生、コミカライズ担当のせるげい先生。外伝担当の滝沢リネン先生がコメントとイラストをいただきました。

よかったら、可愛いので見ていただければと思います。

リンク先は活動報告やX(旧Twitter)で確認していただければと思います。


※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約受付中ですが、お店によっては締め切りが始まっているみたいです。購入を考えている方がいましたら、忘れずにしていただければと思います。


※祝PASH!ブックス10周年

くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎え、いろいろなキャンペーンが行われています。

詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとの22時前後に投稿させていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売しました。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ13巻 2025年6月6日に発売しました。(次巻14巻、発売日未定)

コミカライズ外伝 4巻 2025年8月1日発売しました。(次巻5巻、未定)

文庫版12巻 2025年6月6日発売しました。(次巻13巻、発売日未定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
>「冗談っす。お風呂に入ったときに見たっす。ユナの手は綺麗だったっす」 >見られていた? ユナ、お風呂でシノブに手を観察されていたのですね。 ユナは、お風呂ではカガリさんに「クマさんパンツ」を見られ…
>「男が持っていたのが妖刀魔花だとすると、ジュウベイさんが持っているのは妖刀右京と妖刀狂華ってことになるね」 ユナとカガリさんは、ブラッドの「魔花」と、ジュウベイさんが持つ「妖刀」の一本が入れ換わっ…
 シノブの、鍛錬してないのに強すぎるのはチートだ、じゃあ、自分も妖刀でチートしたーいは、確かに分からんでもないですね。  ただ、カガリの「ユナの戦い方がチートだと思うか?」は、さすがになんにも言えない…
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