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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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917 シノブ、妖刀と戦う その2

 男との攻防が続く。


「シノブ! 妖刀赤桜です」


 サクラ様が叫ぶ。


「分かっているっす」


 分かっているけど、対応策はない。

 血を吸われると強くなると言われている。

 あの刀は血を吸っているのか?

 それとも、自分を封印した女を捜していた?

 でも、今は考えている時間はない。


 風魔法を放つが斬られ、斬られた風は男の後ろにある庭を破壊する。


「あっ」

「シノブ、庭なんて気にしないでください。どんなに破壊をしても構いません。あなたの命が優先です」

「本当っすか? あとで請求はしないでくださいっすよ」


 周囲を気にしないでいいと言っても、魔法が斬られるから、男の後ろに被害が出る。

 サクラ様の言葉に甘え、魔法を使いつつ、男と戦う。

 男の刀を受け流す。

 魔法を使っている分、どうにか間合いは確保できているが、隙を見せれば、一気に間合いを詰められる。

 本当に妖刀は厄介っす。

 だから、皆が妖刀を欲しがる理由が分かる。

 妖刀を手にすれば強くなれるんだから。

 でも、妖刀に飲み込まれたら意味がない。


 刀を防ぐ。

 裏町で戦ったときの疲れが残っている。

 徐々に追い詰められていく。 

 万全なら……。

 その考えを頭の中から消し去る。

 痛み、疲れ、それは言い訳。

 どんな状況でも戦い、たとえ腕を斬られても、殺されても、1秒でも長く、サクラ様を守るのがわたしの仕事。

 なんのためにキツい鍛錬に耐えてきたと思っているっすか。

 大切な人を守るためっす。

 この程度で疲れる鍛え方はしてないっす。

 痛みだって、ユナが治してくれた。

 わたしの体、動けっす。

 刀をギリギリで躱すが、腕の服が切り裂かれる。

 腕に少し、痛みが走る。

 避けきれなかった。


 乙女の柔肌になにをするっすか。

 前回は負けたけど、今日は負けるわけにはいかない。

 今回はギリギリだけど膠着状態を保っている。

 でも、時間が経てば経つほど、不利になる。

 こっちは疲れ始めているが、相手の動きは鈍くならない。

 もしかして、妖刀に操られているから、疲れを知らないとか言わないっすよね。

 どうしようかと考えていると、男の動きが止まる。


「この血は、この前の血」


 男が刀に付いた血を見ながら言う。

 それは先ほど掠ったときに付いた血だ。


「覚えていたっすか。先日は、痛めつけてくれたっすね。とっても痛かったすよ」


 ユナが治療してくれなかったら、未だに動けなかったかもしれない。


「この血もうまい」


 血が美味いと言われても嬉しくないっすよ。


 攻防が始まる。

 魔法を使って、間合いだけは有利に運ぼうとするけど、妖刀によって魔法は斬られる。

 風も土も。

 サクラ様が周囲のことは気にしないでいいと言ったが、炎が家に移れば大変なことになるので、炎は流石に使えない。

 こんなときにユナとカガリ様がいてくれればと思ってしまう。

 どうしても、自分に力の無さを感じると、他人を頼ろうとしてしまう。

 今、ここにいるのはわたしだけっすよ。

 気合いを入れる。


「お前の血でもいい。寄越せ」

「それって、若い女性ってことだからっすか?」


 妖刀は切り刻むのが楽しいのか、少しずつわたしの体を斬っていく。

 ギリギリで躱しているけど、切り傷が増えていく。


「乙女の体に傷をつけないでほしいっす。結婚できなかったら、責任とってくれんすか? いや違うっすよ。だからと言って、あんたと結婚なんてしないっすよ」

「血を寄越せ」


 人の話を聞かずに切り掛かってくる。

 その度に精度と速度が上がっている。

 若い女性の血を吸うたびに強くなるって、本当だったみたいっすね。

 つまり、切られれば切られるほど、相手が強くなるってことだ。

 こんなことなら、装備をちゃんと着ていればよかった。

 大蛇と戦うときは硬い素材でできた服のようなものを着込んでいた。

 でも、今は着ていない。

 だって、重いっすから。

 家にいる時ぐらいは着たくないっす。

 まあ、着ていたとしても、斬られていた可能性もある。

 妖刀はそれだけ、切れ味がいい。


「ふっ」


 どうにか躱す。

 武器の長さが違うため、どうしても後手に回ってしまう。

 わたしの戦い方は相手の攻撃を受け流し、反撃することが多い。

 でも、男の動きが速いため、反撃することができない。

 いや、正確には反撃すれば、反撃し返してくる。

 なにより、男の虚ろな目が、どこを見ているのか分からないのが厄介だ。

 目の動きで、相手の攻撃を予測したりするが、それもできない。

 どこを見ているのか、分からない。


 男の足が動くと思った瞬間、 そんなとき、「うぅ」と小さいうめき声が横から聞こえ、同時に男の動きが止まった。


「シノブ、今です!」


 わたしはほんの一瞬だけ、サクラ様に目を向け、すぐに目を男に向けて走り出した。

 サクラ様の手には短刀が握られていた。

 そして、その反対の手から血が流れていた。

 サクラ様が気を逸らすために自分の手を切ったことはすぐに理解した。

 これも、自分が弱いせいで、サクラ様を傷つけてしまった。

 後悔はいつでもできる。

 今はサクラ様が作ってくれた隙を無駄にさせないこと。

 男の目はサクラ様に向いている。

 体もサクラ様に向こうとしている。

 無防備。

 男との間合いがつまる。

 踏み込む。刀を持つ男の腕を斬る。

 まだ、男の動きは止まらない。

 斬りかかってくる。

 痛くないっすか。

 右手の短刀で受け流し、男の体が崩れる。左手に持っている短刀で男の体を斬る。

 男の体が崩れながらも刀を振ってくる。


「しつこい男は嫌われるっすよ!」


 体を回転させ、男の体に蹴りを入れる。

 バランスを崩しながら斬りかかってくる男と、わたしの足では、わたしの足の方が速い。

 それでも、男の動きは止まらない。

 男の腕を蹴り上げるが、男は刀を離さない。

 蹴り上げた足を下げ、踏み込みに使い、反対の足で男の手、刀を握りしめる拳に向けて蹴る。

 刀を蹴った足に痛みが走るが、足を振り抜く。

 男の手から刀は離れ、回転しながら、後ろにあった木に突き刺さる。

 手から刀が離れた男は地面に倒れる。


「ふぅ」


 息を吐く。

 男は倒れ、妖刀は木に刺さっている。

 どうにか、なった。


「シノブ!」


 振り返ると、手から血を流したサクラ様が心配そうに見ている。

 わたしはサクラ様に駆け寄る。


「サクラ様、無茶しちゃダメっすよ」


 サクラ様の小さい手から血が流れている。

 痛々しい。代わってあげたい。

 わたしは懐からハンカチを取り出し、サクラ様の手に巻く。


「でも、ありがとうっす」


 男はサクラ様の血に反応して、動きが鈍った。

 サクラ様が男の気を引いてくれたから倒せた。


「ユナが帰ってきたら、治してもらうっす」


 サクラ様のことを任されたのに怪我をさせてしまったっす。

 ユナとカガリ様に怒られるっすね。

 それ以前に国王様に叱られるっすよね。

 死刑とかにはならないっすよね。

 考えただけで、体が震える。

 男と戦っていたときより、恐怖に感じる。


「とりあえず、サクラ様はユナに連絡をしてくださいっす」

「えっと、今すぐ、使いの者を」

「それでも、いいっすけど。サクラ様には、ユナからもらったクマがあるっすよね」


 わたしがそこまで言うと、サクラ様は思い出した表情をする。


「そうでした」

「あと、医者と治療士を呼んでくださいっす」


 サクラ様の治療もそうっすけど、男の治療も必要だ。


「分かりました」


 サクラ様はアイテム袋からクマの形をした物を取り出す。

 離れた場所にいるユナと会話ができる魔道具。

 サクラ様は、そのクマの形の魔道具を使って、ユナに連絡をする。

 その間、わたしは男を縛り上げるために地面に倒れている男に近づく。

 男の腕から血が流れている。

 医者と治療師が来るまで、布を取り出して、応急処置をしておく。

 あとの仕事は医者か治療士の仕事だ。

 男の腰にあった鞘を抜き取り、木に刺さっている妖刀に目を向ける。


「回収したほうがいいっすよね」


 妖刀にいいイメージはない。

 初めて出会った妖刀に斬られ、裏町の妖刀の出来事、そして、今回。

 自分が妖刀を手にしたとき、自分がどうなるか、怖い。

 もし、妖刀に飲み込まれ、この男のようにサクラ様の血を欲しがるようになったらと思うと、怖くなる。


「シノブ」


 サクラ様が声をかけてくる。


「ユナ様に連絡をしました。すぐに来てくれるそうです。巫女の中に治療ができる者がいますので、呼んでくるように指示は出しました」

「ありがとうっす」


 サクラ様の言葉どおりに、騒がしくなり、倒れている男の治療が始まる。


「それで、あの刀はどうするんですか?」


 サクラ様が木に刺さっている刀を見る。


「悩んでいたところっす」

「わたしが、回収しましょうか?」

「それだけはダメっす」


 もし、サクラ様になにかあれば、わたしが死ぬことになる。それ以前にサクラ様に危険なことをさせることはできない。


「サクラ様は離れていてくださいっす。わたしが回収するっす」


 心を強く持てば飲み込まれないはず。

 わたしは木に刺さっている妖刀に近づき、ゆっくりと手を伸ばす。

 妖刀を掴もうとした瞬間、妖刀が動く。

 嫌な予感がして、手を伸ばして、妖刀を掴もうとした瞬間、妖刀はわたしの手を擦り抜けるように動く。


「サクラ様!」


 わたしの手を擦り抜けた妖刀はサクラ様に向かって飛んでいく。

 このタイミングを狙っていた?

 妖刀がサクラ様に向かう。

 間に合わない。

 そう思った瞬間、サクラ様の前にユナが現れ、妖刀を掴んでいた。


シノブと妖刀の決着です。

シノブが一番初めに出会って、斬られた妖刀です。

リベンジした感じになります。


※体調のほうはよくなりました。心配をおかけしました。


MITACLE(ミタクル)様より、ユナがブロック化することになりました。

 詳しいことは活動報告を見ていただければと思います。

予約期間(発売期間?):2025/12/01(月)〜2026/01/16(金)


※「くまクマ熊ベアー」のコミカライズが読める「コミマガ」のアプリが始まりました。ちなみに他社作品の有名作品も読めますので、よろしくお願いします。あと、お気に入りに入れていただけると嬉しいです。


※くまクマ熊ベアー10周年です。

原作イラストの029先生、コミカライズ担当のせるげい先生。外伝担当の滝沢リネン先生がコメントとイラストをいただきました。

よかったら、可愛いので見ていただければと思います。

リンク先は活動報告やX(旧Twitter)で確認していただければと思います。


※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約受付中ですが、お店によっては締め切りが始まっているみたいです。購入を考えている方がいましたら、忘れずにしていただければと思います。


※祝PASH!ブックス10周年

くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎え、いろいろなキャンペーンが行われています。

詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとの22時前後に投稿させていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売しました。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ13巻 2025年6月6日に発売しました。(次巻14巻、発売日未定)

コミカライズ外伝 4巻 2025年8月1日発売しました。(次巻5巻、未定)

文庫版12巻 2025年6月6日発売しました。(次巻13巻、発売日未定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
妖刀の誘惑に勝てるのかユナ
>風魔法を放つが斬られ、斬られた風は男の後ろにある庭を破壊する 「赤桜」も"魔法”を斬ることができるのですね!。 「魔花」も、魔力を吸収することで"魔法”を無効化して、ユナを手こずらせていましたが・…
更新お疲れ様です。 来た!!来た!!主役クマ来た!!これで勝つる!!
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