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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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935/935

911 黒男、ジュウベイと戦う

 冒険者同士の戦いは両者の同意があれば戦えるが、なければ戦えない。

 過去に戦いを拒んだ冒険者を無理やりに戦わせようとしたが、あいつは拒んだ。

 そして、仲間を半殺しにして、戦った。

 勝ったが、そのことが冒険者ギルドに知られて、冒険者の資格を剥奪されることになった。

 そのときに、あの貴族に拾われた。

 あのクマの格好した女が強いことはすぐに分かった。

 確信したのはバカ息子が女と一緒にいた娘に殴りかかったときに防いだときの動きだ。

 笑いが止まらなかった。

 まさか、こんな変な格好した女が、強いとは思わなかった。

 戦いたい。

 だから、俺はバカ息子の提案を飲んだ。

 クマの格好した女と一緒にいた貴族の少女を攫うことを。

 女は怒り、屋敷に乱入してきた。

 女の実力なら、この屋敷にいる兵士なんて役に立たない。

 そして、俺の願いが叶い、女と戦うことができた。

 ただ誤算なのは、俺が思っていた以上に女が強かったことだ。

 女の怒りを引き出したことで、俺は一方的にやられた。

 再戦だ。


 その願いは遠い地で叶った。 

 深夜にクマ女を呼び出し、戦うことになった。女は強かった。

 動きが見えた。

 あのときほど、一方的にやられはしなかった。

 この刀は長いこと使われていなかったことで、魔力を欲しがる。

 しかも、あの女の魔力が欲しいと。

 あの女の魔力を吸うたびに刀が喜ぶのが分かる。

 これからだというときに男の邪魔が入った。

 この国の剣士だろう。

 対峙しただけで、強さが伝わってくる。

 強い者が現れるのは嬉しいが、どうして女と戦っているときに現れるのか。

 雰囲気的に、この男を倒さないと女と戦えないみたいだ。

 さっさと倒して女と戦うつもりだったが、想像以上にこの男は強かった。

 しかも、男の攻撃を防ぐのに魔力を使ってしまった。

 このままでは男に勝ったとしても、女に勝てない。

 あくまで優先順位はクマ女だ。

 ここは一度、身を引くことにした。

 クマ女の居場所は分かっている。

 クマ女と一緒にいた小さい少女2人を思い出す。

 もし、クマ女が居なかったら前回同様に少女を攫えば、怒り狂って俺の前に現れるだろう。

 今後のことを決めた俺は男から逃げ出した。

 男も女も追ってくる様子はなかった。

 それにしても世界は広い。

 面白い。


 俺は身を潜め、体を休ませる。

 最後に斬りかかったときに、少し腕を斬られた。

 掠った程度だ。

 傷薬を適当に付け、布で巻く。

 あの一瞬で攻撃を仕掛けてくるなんて、とんでもない男だった。

 今後のことを考えると楽しい。

 クマ女と戦うのは決定事項だが、あの男と戦うのも面白い。

 あの突き出した刀を見たとき、震えた。

 やばい、離れろと俺の直感が叫んだ。

 もし、避けていなかったら、どうなっていたか分からない。

 それともう1人気になる人物がいる。

 女と戦うために屋敷に行ったときに後ろにいた子供だ。

 妖刀が子供の魔力に反応した。

 流石に子供と戦う趣味はないが、将来的に強くなるなら、戦ってみたい。でも、今ではない。

 誰と戦うか。

 やっぱり、クマ女は最後だな。

 夜を明かし、休息を取った俺は戦いの邪魔をした男を探すことにした。


「あの男の居場所は分かるか?」


 刀に尋ねるが、反応はない。

 役に立たない。

 面倒だが、街の中を適当に歩く。


 刀が魔力を欲しがっている。

 流石に人を斬りつけるわけにはいかない。

 俺は戦いたいのであって、人を斬りたいわけではない。

 刀は俺の魔力を吸おうとするが、魔力の流れを止める。

 また、封印されたくなかったら、黙れ。

 妖刀が静かになる。

 しかたなく、街の外に出て、魔物を倒す。

 魔物にも魔力はある。


 すばしっこい魔物を斬りつける。

 確か、かまいたちだったな。

 尻尾を振り、風の刃を放ってくる。

 その風の刃に刀を振って、魔力を吸収すれば風の刃は消え去る。

 あとはそのままかまいたちを斬れば終わる。

 しばらく魔物を倒すと刀も満足したのか、落ち着く。


 街に戻ろうと思っていると、男が近づいてくる。

 それと同時に刀が反応する。

 あの男は。


「その妖刀を渡してもらう」


 クマ女との戦いの邪魔をした男。

 まさかここで会えるとは。

どうやら俺が探していたのと同じように男も俺を探していたらしい。


「その妖刀を手放せば殺しはせぬ。だが、断るなら、どうなるかは保証はできぬ」


 男が刀を抜き、俺に向ける。

「はい」と言って、刀を返すわけにはいかない。


「この刀はクマ女と戦うのに必要なので、無理な話です」


 俺も刀を抜く。


「その願いは叶わぬ」


 男が刀を構える。

 男が持っている刀は見覚えがある。

 俺が城から盗み、捨てた刀だ。

 つまり、なにかしらあの刀にも力があるってことだ。

 よりにもよって、この男の手に渡っていたとは。


 攻防が始まる。

 速い。

 男の動きは滑らかだ。

 動作に無駄がない。

 俺の攻撃は簡単に受け流される。

 ここまで綺麗に受け流されるのは初めてだ。

 あのクマ女も上手かったが、男のほうが滑らかに受け流される。

 ならと小技を繰り出す。力を込めれば受け流されるなら、受け流される前に刀を引けばいい。

 だが、今度は簡単に弾かれる。

 攻撃が通用しない。

 一瞬、思考していると男が攻撃を仕掛けてくる。

 連続斬り。

 避けるが、男に比べて稚拙な避け方で情けなくなる。

 火の魔法を放って、間合いを取る。

 でも、男は風魔法を使い、俺の火の魔法を吹き飛ばす。

 いたぶるのは好きだが、いたぶられるのは好きじゃない。


 それにしても強い。

 相手の刀の力は分からないが、面白い。

 男が動く。

 足の踏み込み角度を見る。

 右か。

 受け流す。

 切り返しが速い。

 刀が反応する。

 男の刀に魔力が集まっている。

 距離はある。男の刀は届かない。

 なにをする。

 男が刀を振るう。

 刀から風の刃が出る。

 俺は刀を振るい、風の刃を斬る。

 反応が遅れていたら、終わっていた。

 俺も同様に魔力の刃を放つ。

 男が斬る。

 その間に間合いを詰める。

 刀を突き出すが、男は滑らかに受け流す。

 悔しいが、俺よりも綺麗な受け流しだ。

 力の受け流し方が上手い。だからと言って、攻撃をしないわけにはいかない。

 俺は攻撃を仕掛けるが受け流され、男は刀を切り返すと、そのまま俺に切り掛かってくる。

 体を捻り、体を回転させ、流された刀で弾く。

 だけど、男の動きは止まらない。

 速い。

 持っている刀が相手の刀に反応し、どこに刀を振れば、相手の刀を防げるか分かる。

 何度か斬り合いが行われ、お互いに後方に飛び、間合いを取る。

 俺が一呼吸する時間で、男は刀を水平に構える。

 まずい。と思った瞬間には男が踏み込み、刀の剣先が迫ってくる。

 ギリギリ、躱す。

 でも、止まらない。

 男は刀を引くと、連続で突きを繰り出してくる。

 どうにか、受け流す。


「その刀、回収させてもらう」


 男は言葉と同時に突きの構えをする。

 それは昨日見た。

 鋭く、速い、連続に突きが繰り出される。

 俺の持つ妖刀が男の刀の軌道を読み。一突き目は受け流し、二突き目は躱す。そして、三突き目を弾く。

 俺が持っている刀でないと防げなかった。

 男の刀を弾いたことで、攻撃が止まるかと思ったら、四撃目が繰り出されていた。

 冗談だろう。

 四撃目は左手に持たれた、もう1本の刀によって。

 いつ、抜いた!?

 腰にもう1本の刀があった事には気づいていた。

 刀が迫ってくる。

 避けられない。

 俺の意思とは関係なく、手に持つ刀が動く。

 無理やりに俺の腕を動かし、男の刀を弾く。

 その反動を使って、後方に逃げる。

 刀に助けられた。

 男の両手には刀が持たれている。


「貴様は殺す」


 男の表情が、先ほどまでとは違う。

 男が動く。

 速度が増す。

 刀が両手に持たれたことで、刀の軌道が読みにくい。

 男が刀を振るう。

 速い。

 妖刀が魔力を寄越せと言ってくる。

 無理矢理に流す。

 俺の刀を振るう速度が上がる。

 無理矢理に速度を上げたため、腕に痛みが走る。

 でも、構わずに刀を振るう。

 俺の刀と男の刀がぶつかりあい、お互いの手から離れ、地面に突き刺さる。

 でも、男の手にはもう一本の刀が握られ、振りかざしてくる。

 避けられないと思ったが、男の動きが止まる。

 その隙を逃さない。

 俺は男に無数の炎を投げ飛ばすと同時に駆け出し、地面に突き刺さっている刀を拾い。そのまま走り出す。

 今回は負けたが、次は勝つ。

 森の中に入り、しばらく走り続け、男が追ってこないことを確認すると一呼吸する。

 最後のはなんだったんだ?

 俺は刀を鞘にしまおうとするが、入らない。

 よく見ると、刀が違った。

 どうやら、拾った刀を間違えたみたいだ。


「はぁ、あの刀、魔力、魔力ってうるさかったが、使い勝手はよかったんだが」


 剥き出しの刀をどうするか考えていると、手に持っている鞘が動き出す。

 なんだ。

 驚いて手から鞘を離した瞬間、鞘が飛んで行ってしまう。


「冗談だろう」


 なんなんだ。あの刀は。

 剥き出しの刀に布を巻き、歩き出すと、上の木の枝がガサガサと音がする。

 音がした方を見ると、なにかが迫ってくる。

 ギリギリのところで躱すと、地面に鞘が落ちていた。

 俺が持っていた鞘とは違う。

 もしかして。

 俺は刀に巻かれている布を取り、鞘に入れてみる。

 綺麗に収まる。

 どうやら、俺の鞘はあの男のところに飛んで行ったみたいだな。

 今回は痛み分けってところだ。

 いや、俺が逃げ出したから、負けか。

 本当に世界は広い。

 さて、これから、どうするか。

 新しい刀を見る。

 まずは、この刀の力を調べることだな。

男とジュウベイが持っている妖刀が入れ替わりました。


※くまクマ熊ベアー10周年です。

原作イラストの029先生、コミカライズ担当のせるげい先生。外伝担当の滝沢リネン先生がコメントとイラストをいただきました。

よかったら、可愛いので見ていただければと思います。

リンク先は活動報告やX(旧Twitter)で確認していただければと思います。


※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約受付中ですが、お店によっては締め切りが始まっているみたいです。購入を考えている方がいましたら、忘れずにしていただければと思います。


※祝PASH!ブックス10周年

くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎え、いろいろなキャンペーンが行われています。

詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとの22時前後に投稿させていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売しました。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ13巻 2025年6月6日に発売しました。(次巻14巻、発売日未定)

コミカライズ外伝 4巻 2025年8月1日発売しました。(次巻5巻、未定)

文庫版12巻 2025年6月6日発売しました。(次巻13巻、発売日未定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
刀のプレゼント交換 面白い
結果論になりますけれど・・・サクラに呼ばれて和の国に行き、シノブを怪我から回復させたユナが、そのままクリモニアに帰っていた方が「妖刀」の回収は捗っていたのではないでしょうか?(汗。 ブラッドは"良い刀…
>でも、男の手にはもう一本の刀が握られ、振りかざしてくる >避けられないと思ったが、男の動きが止まる もしかしたらジュウベイさんは、ブラッドの「妖刀」が「魔花」だったため、兄弟子を殺害した時の記憶が…
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