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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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934/935

910 黒男、クマを見つける

 まさか、あのクマの少女とこの土地で会えるとは思わなかった。

 嬉しくてしかたない。

 何度、黒いクマを思い浮かべたことか。


 あの少女に負けた俺は捕まった。

 そのことで少女のことは恨んでいない。

 俺が弱くて負けただけだ。

 でも、クマの少女との戦いは楽しかった。

 あの怒り顔がよかった。

 初めて対面したとき、変な格好をした少女だと思ったが、護衛をしていたバカ息子が貴族の娘に殴りかかったときに防いだ動きを見たときは驚愕した。

 笑いが止まらなかった。

 まさか、こんな変な格好をした少女が、強いとは思わなかった。

 戦いたい。

 だから、俺はバカ息子の貴族の娘を攫う提案を飲んだ。

 きっと、あの女はやってくる。

 女の実力なら、この屋敷にいる兵士なんて役にも立たない。

 俺の想像どおりに女は怒り、兵士を倒し屋敷に乱入してきた。

 俺の願いが叶い、女と戦うことができた。

 ただ誤算なのは、俺が思っていた以上に女が強かったことだ。

 女の怒りを引き出したことで、俺は一方的にやられた。


 捕まった俺は刑が決まり、強制労働させられていたが、逃げ出した。

 真面目に労働すれば隙ができた。

 強制労働から逃げ出した俺は身を潜めて離れた。

 他の国に行けば、追って来られないはず。

 どこの国へ行こうかと考えていると、ミリーラの町から和の国へ行く船があると聞き、ミリーラの町に向かった。

 ミリーラと繋ぐトンネルがあると知った俺は山の麓に向かう。

 見張りがいたが、深夜に隙を窺い、トンネルの中に入り込んだ。

 それにしても、あの入り口にあったクマはなんだ?

 クマを見ると、クマの少女のことを思い出してしまう。

 もう一度、あの少女と戦いたかった。

 でも、今の俺の実力では勝てない。

 いつか、力を付けて戻ってくる。

 待っててくれ。


 トンネルを抜けると海が広がっていた。

 久しぶりに見たが、本当に広い。

 トンネルの出口にもクマがあり、気になったが、すぐにトンネルから離れ、町に入り込み情報収集をした。

 どうやら、この町から和の国に行くには和の国から来る船に乗らないとダメみたいだ。

 クリモニアの領主が和の国へ行くための船を造っているらしいが、まだ完成はしていないと言う。

 だが、運がいいことに近日中に和の国から船が来るらしい。

 和の国の情報収集しているとクマの情報もはいってきた。

 この町にはクマの家と、クマの巨大な石像が海にあるらしい。

 和の国から船が来るまで時間もあるので、見に行くと本当にあった。

 トンネルの前にあるクマといい、なんなんだ?

 クマを見ると、どうしても、あのクマの格好した少女を思い出してしまう。


 そして、情報どおりに和の国から大きな船がやってきた。

 荷物が船から降ろされ、今度は荷物が船に載せられる。

 保存食を買い込んだ俺は隙を狙い、船の中に忍び込む。

 一度、倉庫に荷物が搬入されると、倉庫に近寄る者はいなかった。

 船底にある暗い倉庫の中で数日間潜んでいると、騒がしくなり、倉庫の扉が開く。

 どうやら、到着したみたいだ。

 俺は身を潜めながら、倉庫から出る。

 久しぶりの日の光が眩しいが、見つかるわけにはいかない。

 船から降りた俺は身を潜めて周囲を確認する。

 どうやら港町みたいだ。

 大きな船がいくつもある。

 ここが和の国なのか。

 まずは情報収集をすることにする。

 そして、ここにも冒険者ギルドがあり、新しい身分証を作る。

 どうやら、俺の犯罪履歴の情報はここまで来ていないらしく、簡単に冒険者のギルドカードを作ることができた。

 問題は武器だ。

 持っていた持ち物は全て取り上げられた。

 あの武器はミスリル製で高かった。

 まあ、もう一度手に入れればいいだけだ。

 そして、港町から離れたところに国王が住む街があると言うので、移動する。


「あれが城なのか?」


 街に到着すると、見たことがない大きな建物があった。

 情報収集をすると、どうやら、城でまちがいないみたいだ。

 俺がいた国の城とは形が違う。

 ただ、どこの国の王も大きい城を建てるのが好きらしい。

 そして、この国は少し変わった武器があった。

 刀。

 剣とは違い、刀身は細い。

 剣にもいろいろな種類があるが細剣が近いかもしれない。

 武器屋で試し斬りをさせてもらったが、剣より軽く、振りやすい。

 一番安いものを買ったが、なかなかいい。

 ただ、角度が甘いと斬れない。

 剣なら多少ずれたとしても、斬れる。

 でも、この武器は少しでもズレると弾かれる。

 面白い。

 俺は金を稼ぐために魔物討伐を行った。

 刀の扱いに慣れてくると、面白いように斬れる。

 ただ、慣れるまでに、何本も刀を折ってしまった。

 もっといい刀が欲しいところだ。

 仕事を終え、酒を飲んでいると男の愚痴が聞こえてきた。

 なんでも、城で働いていたがクビになったそうだ。

 それで金がないと。あの刀を盗んで売ればよかったなど聞こえてくる。

 俺は酒を奢り、話を聞くことにした。

 なんでも、妖刀と呼ばれる名刀があるらしい。

 妖刀の力は素晴らしく、多くの者が欲しがったと言う。

 ただ、持つ者を呪い、刀に操られるといううわさもあるらしい。

 でもそれは、言い伝えであり、実際は分からないと言う。

 面白い。

 その妖刀とやらがほしい。

 男は城の中の構造に詳しく、さらには見張りの経路と時間を把握しているとのこと。

 俺は妖刀を盗む話を男に持ちかける。

 男は最初は渋っていたが、最後は了承した。

 そして、男の案内で城の中に入り込み、妖刀がある部屋までくることができた。

 本当に警備が甘い。

 簡単に侵入することができ、部屋まで来てしまった。

 見張りの経路や時間が変わっていれば、諦めることにしていたが、変わっていなかった。

 この国の王は無能なのか?

 それとも見回りを管理している者が無能なのかもしれないが、誰も気づかないのは、どちらも無能なんだろう。

 危機管理ができていない。

 見回りのパターンを数通り作り、そのパターンをランダムに行わせるだけで、侵入する者にとって侵入しにくくなる。

 まあ、その無能がいるおかげで侵入できたのだから、ありがたい。

 そして、扉の鍵を壊し、部屋の中に入る。

 部屋の中にはいろいろなものがある。

 男はいろいろな物に目を向ける。


「危険なものもありそうだから、あまり触らないほうがいい」


 俺が言うと、男は伸ばしていた手を引っ込める。

 そして、目当ての刀のところまでやってくる。

 一本の刀を手に取り、鞘から抜く。

 綺麗だ。

 安物とは違う。

 男も刀を手にする。


「これで金持ちだ」


 と言って、嬉しそうにしている。

 売れば足が付くことを分かっていない。

 殺したほうがいいのかもしれない。

 そんなことを考えていると、刀から魔力をくれ、魔力を寄越せ。そんな感情が流れてくる。

 なんだ。俺の魔力を吸い始める。

 これが妖刀。

 勝手に吸うな。

 刀に力を込めると収まる。

 なんだったんだ今のは。

 隣にいた男が何本も刀を手にする。


「落ち着け」


 話しかけるが男の目がおかしい。

 手を伸ばして男を止めようとするが、男は俺の手を払い、刀を抜く。そして、襲いかかってくる。

 俺は咄嗟に刀で受け止める。

 でも、男の攻撃は収まらない。部屋の中がぐちゃぐちゃになる。

 騒ぎを起こせば人が集まる。

 俺はドアの方へ向かって男を突き飛ばす。

 追いかけて外に出るが、男は走り出し、消え去った。


「なんだったんだ」


 俺は部屋の中に戻り、床に転がっている他の妖刀を拾い上げると、この場を離れることにする。

 警備に見つかることもなく、城から出ることができた。

 誰もいないところまでやってくると、手に入れた刀を見る。

 それぞれの刀から異様な雰囲気が漂ってくる。

 あの男の話は、あながち嘘ではなかったみたいだ。

 男は刀の力に飲み込まれ、俺に斬りかかってきた。

 そして、現在、持っている刀が意志を持っているかのように訴えてくる。

 全部で5本。

 うるさい。

 持ってきてしまったが、不要だ。

 売れば足が付く。

 それ以前に売る場所を知らない。

 ばらまいて、混乱させるのも面白いかもしれない。

 俺は適当に一本選び、ほかの刀は適当に放置することにした。

 それから時間が経つが、思ったよりも騒ぎになっていない。

 それと兵士の見回りが増えた。

 確認すると、刀で騒ぎになった事件があるかどうか調べているらしい。

 どうやら、盗み聞きした会話では妖刀を探しているみたいだった。

 思っていたよりも城では騒ぎになっているみたいだ。

 状況を楽しんでいると、刀が反応する。反応するほうを見ると信じられない人物が歩いているのが見えた。

 自分の目を疑った。

 一生、忘れることがない。

 その人物は、クマの格好をしていた。

 まさか、遠く離れた地で会えるとは思ってもいなかった。

 嬉しくて、今にも襲いかかりたくなる。

 まだだ。慌てるな。

 あの女は強い。

 戦っても勝てない。

 やるなら勝たないと面白くない。

 あの女に勝つにはこの刀の力を引き出さないといけない。

 俺は気づかれないように離れた場所から女の居場所を突き止める。

 宿屋でなく、塀に囲まれたどこかの屋敷だった。

 建物を囲む塀は、どこまでも続き、広い屋敷だった。

 居場所が分かれば会いに来ることができる。

 今はこの刀を扱えるようにならないといけない。

 俺は刀を何度も振るう。

 俺の魔力を要求してくる。

 くれてやるから、力を寄越せ、俺に命令をするな。

 刀を扱えるようになると、屋敷に向かった。

 屋敷に近づけば、気づいてくれるだろう。



黒男登場。

ユナを見つけて歓喜。


原作イラストの029先生、コミカライズ担当のせるげい先生。外伝担当の滝沢リネン先生がコメントとイラストをいただきました。

よかったら、可愛いので見ていただければと思います。

リンク先は活動報告やX(旧Twitter)で確認していただければと思います。


※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約受付中ですが、お店によっては締め切りが始まっているみたいです。購入を考えている方がいましたら、忘れずにしていただければと思います。


※祝PASH!ブックス10周年

くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎え、いろいろなキャンペーンが行われています。

詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとの22時前後に投稿させていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝公開中(ニコニコ漫画、ピッコマ、pixivコミックでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売しました。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ13巻 2025年6月6日に発売しました。(次巻14巻、発売日未定)

コミカライズ外伝 4巻 2025年8月1日発売しました。(次巻5巻、未定)

文庫版12巻 2025年6月6日発売しました。(次巻13巻、発売日未定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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>男は刀の力に飲み込まれ、俺に斬りかかってきた >そして、現在、持っている刀が意志を持っているかのように訴えてくる 「妖刀」の厄介なところは、持ち主を操り、闘いに駆り立てるところですよね。 そして、…
気になっていた、ブラッドがシーリンの街の一件で捕まってから、和の国でユナと再会するまでの動きが判って良かったです。 でも、ブラッドは、ベアートンネルやミリーラの町の石像やクマハウスを見ても、ユナのこと…
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