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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
922/929

898 クマさん、黒男と戦う その1

「そんな変な格好して、見つけてくださいと言っているようなものでしょう」


 なにも言い返す言葉が出てこない。

 クマの格好で街の中を歩けば、見つけられるよね。


「まあ、それだけの理由であなたを見つけられたわけではありません。あなたの魔力にわたしが持っている妖刀が反応したんです。妖刀があなたの魔力を欲しがっている」


 男は刀に触れる。

 魔力を……。

 もしかして、妖刀赤桜?

 まさか、釣れていたとは思わなかった。

 しかも、とんでもないオマケもついて。


「妖刀はあなたの魔力を手にいれられる。わたしは嬢ちゃんと戦える。最高の取引です」

「わたしにメリットがないんだけど」

「あなたはわたしと戦える。そして、勝てば妖刀が手に入る」


 前者はメリットではないけど、後者はメリットかも知れない。

 妖刀の回収が目的だ。


「だからって、こんな深夜に来なくてもいいでしょう」

「この妖刀がうるさかったんですよ。あなたの魔力が欲しいって」


 そんなにわたしの魔力が欲しいの?

 気持ち悪いんだけど。


「それに、あなたが起きてくるまで待っていたでしょう」


 侵入と同時に襲われていたら、すぐには対処はできなかったかもしれない。

 くまゆるとくまきゅうが守ってくれたと思うけど、どうなっていたかは分からない。

 ムカつくけど、男がわたしが起きるまで待っていたのは事実だ。


「それだって、あなたがわたしと戦いたいだけでしょう」

「ええ、そうです。あなたを簡単に殺すわけにはいきませんからね」

「復讐?」

「まさか、強い者と戦いたいだけですよ」


 それなら、ジュウベイさんと戦えばいいのに。

 紹介したいぐらいだ。


「わたしに手も足も出なかったのに?」

「言ってませんでしたね。逃げ出したわたしは、あなたに勝つために特訓をしたんですよ」


 この男が特訓?

 特訓しているイメージを思い浮べてみたけど、想像ができない。

 あまりにもこの男と特訓ってイメージが合わない。


「そのぐらいの特訓でわたしに勝てると?」


 何年も修行したわけじゃない。長くても数ヶ月。その程度だ。


「確かめてみたらどうです?」


 男が鞘から刀を抜く。


「話を聞いていれば、自分勝手な男じゃのう」

「ユナ様、大丈夫ですか?」


 いつのまにかカガリさんとサクラが起きていた。


「おお、こんなに幼いのに、刀があなたがたの魔力も欲しがっています」


 男がカガリさんを見て嬉しそうに言う。


「なんじゃ、この変質者は?」


 それには同意だ。


「ユナの知り合いか?」

「知り合いって、言いたくないけど。ちょっと因縁がある男だよ。こんなところで再会するとは思わなかったけど。ちなみに、今回、妖刀を盗んだ犯人だよ」

「こやつが」

「あと、もう一人は元城で働いていた人らしいよ」


 男から聞いたことをカガリさんとサクラに説明する。


「ずさんじゃのう」

「ずさんですね」


 カガリさんとサクラは呆れるように言う。

 そう思うよね。


「話はそこまでにしていただけませんか。そろそろ、周囲が気付きそうです。邪魔が入る前に戦いましょう。それとも、あのときと同じように、そちらの女の子たちに何かをしないと戦う気が起きませんか?」


 ノアとフィナが倒れていたときのことを思い出す。


「必要ないよ」


 わたしは一歩前にでる。


「妾の手は必要か?」

「ううん。カガリさんはサクラをお願い」

「分かった。無理はするなよ」


 わたしは男を見る。


「できれば、ここでは戦いたくないんだけど」

「そうですね。騒ぎが大きくなって、あなたと戦えなくなるのは困りますからね。場所を移動しましょう。でも、その代わりに、そのクマにはここに残ってもらいます。邪魔はされたくはありませんから」


 男はくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

 くまゆるとくまきゅうは大きくなって、サクラとカガリさんの傍にいる。

 男の提案は断れない。

 もし、ここで暴れでもされたら、どれほどの被害がでるか分からない。

 この男なら、やりかねない。


「いいよ」

「「くぅ〜ん」」


 くまゆるとくまきゅうが心配そうにする。


「大丈夫だよ。くまゆるとくまきゅうは、2人をお願いね」


 くまゆるとくまきゅうに頼む。

 男は刀を鞘に戻すと、後ろを向き、身軽に塀を越える。

 わたしも後を追いかける。


 そして、しばらく走ると男が止まる。

 わたしたちがやってきたのは町外れ。

 男は振り返ると光の玉を浮かび上がらせ、わたしたちを照らす。


「それじゃ、再戦といきましょうか」


 男は鞘から刀を抜く。

 わたしはクマボックスからくまゆるナイフを取り出す。

 流石に、この男相手に勇者の剣(木の棒)ってわけにはいかない。


 さて、問題は魔法を使うか、どうかだ。

 魔法を使って、妖刀に逃げられても困る。

 でも、誰かに拾われたとしても、この男よりはマシって考えもある。

 まあ、そのあたりは戦いながら決めるしかない。


 男が動く。

 速い。

 一瞬で間合いが詰まり、横一閃。

 後ろに躱す。

 首元を刀が通る。

 迷いがない。

 男は手首で刀を切り返してくる。

 ナイフで刀を弾く。

 でも、男の攻撃は止まらない。

 これはフェイク。これは突き、斬り上げ。

 弾き、躱す。

 足払い?

 足を上げて躱す。

 そのまま蹴りを出すが、躱される。

 男は後方に下がる。


「ふぅ」


 一呼吸入れる。

 速い。


「相変わらず、そんな動きにくそうな格好をしているのに、全て防ぎますか」


 男は楽しそうに言う。

 強くなっている。

 動きも速い。

 問題は男が、まだ魔法を使っていないことだ。


「短期間に、強くなったね」

「あなたと戦うことを願っていましたからね」

「復讐?」

「まさか、純粋に再戦を願ってですよ」


 嫌な願いだ。

 だからといって、こんな短期間で強くなれるとは思えない。

 わたしのように、生死の戦いを何百回と経験したわけじゃない。

 天才って、このような男のことを言うのかも知れない。

 躊躇うこともなく、人を斬れるのも才能。

 普通は躊躇う。

 純粋に戦いを楽しみ、人を殺せる男。

 こんな男に才能を授けないで欲しいものだ。


「とは言いましたが、正直なところ、この刀がわたしの魔力を吸って強くさせてくれているんですよ」


 男の刀が炎を纏ったと思うと、刀に吸収され、赤くなる。

 炎の刀……。

 妖刀赤桜は魔力を好むとあった。

 魔力を吸って、強くなる?

 男が動く。


 わたしと男の攻防が始まる。

 わたしは男の刀を避け、男はわたしのナイフを躱す。


「やっぱり、あなたは最高です。魔法だけじゃなく、武器の扱いも長けているなんて」

「あなたに褒められても嬉しくないよ」


 男の刀を躱すと、男の体が横に流れ、懐が空く。

 右足を軸にして左足で蹴り上げる。

 男に直撃して、男は吹っ飛ぶ。

 手応えがない。

 男はなにもなかったかのように立ち上がる。

 男は体が横に流れたのに、残った足で後ろに跳んだ。

 そんな漫画みたいなことを。


「足癖が悪い嬢ちゃんだ」


 ノーダメージ。


「言い忘れていましたが、魔法を使ってもいいですよ」


 それじゃ、こっちも魔法を使わせてもらう。

 地面が盛り上がり、壁を作り、男の動きを制限させる。

 でも、男が刀を振るうと壁が斬られて崩れる。

 やっぱり、普通の壁じゃ斬られる。

 男が迫ってくる。

 クマの置物を作る。

 男の動きを鈍らせることができると思った。

 でも、男は土魔法で作り上げたクマを斬った。


「…………!?」


 わたしとの距離が縮まる。

 炎の玉を放つが、男は斬っていく。


「……吸収されている」


 男が刀を横に振るう。

 その距離からでは刀は届かない。

 でも、嫌な予感がする。

 男が刀を横に振るうと、刀から赤い刃が放たれる。

 紙一重で躱す。


「初見で躱しますか」


 男は笑いながら、間合いを詰めてくる。

 過去にジュウベイさんと戦っていなかったら、避けられなかったかもしれない。

 その時、ジュウベイさんも刀から風の刃を出していた。

 男が刀を振るう。

 避ける。

 刀とナイフがぶつかる。

 それと同時にわたしは目を閉じる。

 わたしの左手が強い光を放つ。

 目くらまし。

 光を消し、目を開ける。


「…………!?」


 男が目を閉じていた。

 そして、目が開き、笑う。

 閃光に気付いた?

 でも、わたしのほうが速く目を開けた。

 それがコンマ何秒だとしても。

 男の顔に向けて、腕を振り抜く。

 今度は手応えがあった。

 でも、わたしのクマパペットは男の手によって、受け止められていた。

 だけど、関係無い。

 振り抜いたわたしの拳は男を吹っ飛ばした。

 男は地面を転がる。

 防がれたから、致命傷にはなっていない。

 それを証明するように男は立ち上がる。

 でも、どうして閃光が気付かれたの。

 光魔法を使ったあのタイミングで男は目を閉じていた。


「どうして、分かったの?」

「ああ、光魔法のことですか? この刀が教えてくれたんですよ」


 刀が教えた?

 それって、どんな魔法を放つか分かるってこと?


「さあ、もっと、楽しみましょう」


 男は嬉しそうにわたしに向かって歩いてくる。


黒男との戦いが始まりました。


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詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとの22時前後に投稿させていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売しました。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ13巻 2025年6月6日に発売しました。(次巻14巻、発売日未定)

コミカライズ外伝 4巻 2025年8月1日発売しました。(次巻5巻、未定)

文庫版12巻 2025年6月6日発売しました。(次巻13巻、発売日未定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
深夜に少女達の寝室に侵入しようとしてクマ娘に執着してストーカーか変態扱いはしかたない
>「さあ、もっと、楽しみましょう」 >男は嬉しそうにわたしに向かって歩いてくる ブラッド、楽しそうですね(笑。 でも、ユナもこれで相手の"手の内”は把握したと思うので、「さくっ」と決着をつけるのでは…
>男は刀に触れる >もしかして、妖刀赤桜? ブラッドの「妖刀」は「赤桜」のようですね。 私はてっきり「右京」だと思っていました(汗。 盗まれた「妖刀」が四本だけなら、タケルが持っていたのが「鉄馬」な…
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