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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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870 クマさん、大会を見守る その1

 大会当日、リバーシ大会の会場には人が集まり始めている。

 子供から大人まで様々だ。

 ちゃんと会場の変更も伝わっていたみたいだ

 もし、知らずに元会場だったところに行っても、人を派遣しているらしいからこっちに来られるはずだ。

 空を見る。

 快晴だ。

 ちなみに雨が降っていたら中止だったらしい。雨が降らなくてよかった。

 一から予定を組み直すのは難しいらしく雨が降ったら中止だった。

 まあ、雨が降っても屋根を作ればいいので中止にはさせないけど。


「うぅ、緊張します」


 フィナは周りを見て不安そうだ。

 周りに参加する人たちで溢れかえっている。

 本当に人が集まったものだ。

 ちょっとしたイベントだね。


「目指すのは優勝です!」


 ノアはやる気満々だ。


「わたしも負けないよ」


 シュリもやる気に満ちている。


「頑張って上位に残りたいです」


 ミサは控えめだ。

 いや、上位とか言っているからやる気なのかな。


「ユナさん、わたしたちが対戦したら、誰を応援しますか?」


 そんな、彼女が「わたしと仕事のどっちを選ぶの」的な質問はしないほしい。

 仕事と彼女の両方を選ぶことはできないけど、今回は選ぶことができる。

 だから答えは決まっている。


「もちろん、両方応援するよ」

「ズルいです」


 だって、それしか答えようがない。

 こういう場合は両方応援する。勝ったほうは褒めて、負けたほうは慰めるのが一番だ。


「ほら、受付に行っておいで」


 12歳以下と13歳以上の受付が別に用意されており、列が作られている。

 そこで、名前と年齢を確認して、番号が書かれたバッジを受け取る。

 そして、その場で番号が書かれたクジを引く。

 その番号はテーブルに書かれているものと同じで、そのまま対戦テーブルになる。

 ちなみに、テーブルの上には番号を持った子熊が立っている。


「当たっても恨みっこなしですからね」

「頑張ってみんなで勝ち残りましょう」


 ノアたちは受付に向かう。

 その受付にはティルミナさんがいる。

 リアナさんに頼まれて手伝うと言っていたけど、受付をしているみたいだ。

 周囲を見ていると、そのリアナさんがいる。

 近寄り、話しかける。


「順調みたいだね」

「ユナさん? はい、こんなに集まってくれて嬉しいです」


 参加人数は12歳以下は64名。13歳以上が128名、計192名が参加してくれることになった。

 途中で締め切ったけど、リアナさんの話では、打ち切ってからも申し込みがあったそうだ。

 こんなに参加者が集まるのは予想外だったみたいだ。

 ちなみに、孤児院からも3人ほど参加している。

 参加したい子が他にもいたけど、全員を参加させるわけにはいかなかったので、孤児院の中でミニ大会を開き、上位3人が大会に出ることになった。

 もしかすると今大会で一番強いのは孤児院の子供たちではないかと心の中で思っている。

 なんと言っても対戦した相手の数が一番多いと思う。

 同じ相手ばかりだと、その相手の思考に偏ってしまう。

 臨機応変な対応をするには多くの対戦が必要だ。

 いろいろな人とやることで気付くこともある。柔軟性が生み出されると思う。

 なんでもそうだけど、経験と場数が強みだ。

 ゲームで言えば周回ゲーだね。

 素材が欲しくて何度も同じ敵を倒す。

 10回、100回もやればパターンも分かり、同じことの繰り返しになる。

 なにも考えないので成長につながらない。

 思考の停止だ。

 でも、敵が毎回違うパターンの攻撃を仕掛けてきたら、人は考え、あらゆる対応方法を考えようとする。

 それが対応力、成長だと思う。

 孤児院の子供たちは下手な子から上手な子までがいる。

 いろいろな子と多く対戦をするから、一番思考力が鍛えられているのでは? という考えだ。

 もちろん、凡人がいくら練習しても敵わない天才は存在する。

 1から100を知る人もいるからね。


 そろそろ時間だ。

 わたしはリアナさんに用意された特別席に移動する。(自分で作った)

 一番見やすい、関係者席だ。

 そこには商業ギルドのギルマスのミレーヌさんがいた。


「ユナちゃん、リアナにいろいろと手を貸してくれてありがとうね」

「もしかしてだけど、手を貸しちゃまずかった?」

「どうして、そう思うのかしら」

「なんとなくだけど、今回のことはリアナさんを教育するためかなと思って」


 わたしの言葉にミレーヌさんは目を大きくして驚く。


「よく分かったわね。あの子、補佐をさせたら優秀だけど、いつかは人を率いるようになってもらわないと困るからね。だから、今回、自分で提案してきたときは許可を出して、大会を優先して、商業ギルドの仕事のほうは他の人に手伝わせるようにさせたわ」


 だから、簡単に受付を交代できたわけか。


「将来的には本来の業務をやりながら、やってもらわないと困るけどね」

「厳しいね」

「従来の仕事をしてても、緊急の仕事は入ってくるものよ。どっちも時間制限があるなら、両方ともやらないといけない。手が貸せるなら、周りも貸す。でも、自分でないと対応できない仕事が来るかもしれない。わたしも手が貸せないかもしれない。そんなときは一人でやらないといけない。今回はそのための勉強なの」

「そのことはリアナさんは知っているの?」


 ミレーヌさんは首を横に振る。


「知っていたら、誰の力も借りずに一人でやっちゃうでしょう」

「それじゃ、ダメなの?」

「一人でやれとは言っていないわ。手を借りられる人に頼むのも力。人柄、交渉力、なんでもいいわ。人を動かす力を身につけてほしいからね」


 なんとなく分かる。

 わたしは、どちらかと言えば一人でやってしまうタイプだから。


「でも、リアナが頼ったのがわたしじゃなくて、ユナちゃんなのは少し悲しいわね」

「忙しいミレーヌさんに気を遣ったんだよ。ミレーヌさんが忙しいから迷惑がかけられないって言っていたよ」

「でも、ほら、そこは頼ってほしいでしょう」


 我が儘な人だ。


「ただ、ユナちゃんのアイディアには驚かされることばかりね。ポスターに、お店での対戦コーナー、簡易リバーシの紙の配布、参加申し込み箱の設置」


 対戦コーナはフィナで、簡易リバーシの紙の配布のアイディアはティルミナさんだけどね。


「それから、人数が問題の会場。どうやって、手配するかと思ったら、ユナちゃんに相談して作っちゃうんだから、驚いたわよ」

「もしミレーヌさんに相談していたらどうしていたの?」

「そんなものギルドマスターの権限を使えば、なんとでもなるわよ」

「権力の濫用だね」

「わたしの人柄と交渉力と言ってほしいわね」


 物は言いようだね。

 商業ギルドのギルマスに頼まれたら、逆らえないだけじゃないかな。


「始まるみたいだよ」


 わたしが目を向ける先には会場の中央に立つリアナさんがいる。


「皆さん、集まっていただきありがとうございます。初めてのことであり、会場の変更とかもあり、ご迷惑をおかけしました」


 まずはお礼と謝罪から入る。

 そして、ルール説明が行われる。

 対戦が終わったら、勝った人が手を上げること。

 勝利者バッジが貰えること。

 ルール説明も終わり、リアナさんの「始めてください」って言葉が試合開始の合図になる。

 会場から「よろしくお願いします」の声があちらこちらから聞こえ、試合が始まる。

 挨拶を終えたリアナさんがこちらにやってくる。


「お疲れ様」

「緊張しました」

「人前に立って話すのもいい勉強よ」


 わたしは苦手だね。

 みんなの視線を集めて喋るなんて緊張する。

 だから生徒会長とか凄いと思う。

 社会人になっても、多くの人の前で喋ることもあるだろうし。


「ミレーヌさんの凄さが身に沁みます」

「でも、ちゃんとできていたわよ。あれだけ言うことができれば問題はないわ」


 引き篭もりのわたしにはたくさんの人の前に立って話すのは無理だね。

 そんな会話をしながらリバーシ会場を見ていると、早いところではもう手を上げる人がいた。

 手を上げた人のところに商業ギルドの職員だと思われる人が向かう。


「ミレーヌさんもそうだけど、ギルド職員がここに来て、本業のほうは大丈夫なの?」


 いつも忙しそうに仕事をしている。


「大丈夫よ。ちゃんと今日のために急ぎの仕事は終わらせてあるから」

「はい、みなさんにはご迷惑をおかけしました」

「次回は、そのあたりの改善は必要ね」

「人を雇うと経費が……」

「そこはお金を捻出するしかないわね。大会参加費をもらうとか」

「それをすると、人が集まらなくなるかも」

「屋台の出店の代金をもらう方法もあるし、ギルド職員の知り合いにボランティアとしてお願いしてもいいわ。まあ、そのあたりはイベントによって違うから、考えないといけないけどね」


 魔物解体イベントなら、解体したものを売ってお金を稼ぐ方法がある。

 イベントによってお金を稼ぐ方法は異なるから、ミレーヌさんの言うとおりに、そのイベントにあった方法を見つけないといけない。


「今は、この大会を成功することだけを考えましょう」

「はい」


 わたしたちは会場を見守る。

 対戦が半分以上が終わる中、フィナが手をあげる。

 どうやら、勝ったみたいだ。

 他のみんなは……。

 ノアとミサは勝ち、シュリは負けたみたいだ。

 シュリの対戦相手は年上。

 幼いときの一年の差は大きいと思う。

 それが2歳、3歳、年上となれば勝てなくてもしかたない。


「あら、シュリちゃん。負けちゃったみたいね」


 可哀想だけど、これも人生の経験だ。

 あとで、なぐさめてあげよう。

 孤児院の子は2人勝って、1人は負けたみたいだ。

 ちなみに孤児院の子供たちが応援に駆けつけている。付き添いにニーフさんがいる。

 他の子たちもコケッコウのお世話が終わり次第、リズさんと一緒に来ると言っていた。

 それまでは、勝ち残っていてほしいものだ。


遅くなりました。

6月6日発売予定の文庫版12巻、コミカライズ13巻の最終確認をしていました。


調べるとカードゲームなどの大きい大会だと5000から8000人も集まるんですね。

ショップ大会だと64人ぐらい?

なので、クリモニアは街なので倍の120人ぐらいにしました。


※PRISMA WING様よりユナのフィギュアの予約が始まりました。

初の子熊化したくまゆるとくまきゅうも付属します。


※祝PASH!ブックス10周年

くまクマ熊ベアー発売元であるPASH!ブックスが10周年を迎えました。

いろいろなキャンペーン中です。

詳しいことは「PASH!ブックス&文庫 編集部」の(旧Twitter)でお願いします。


※投稿日は4日ごとにさせていただきます。(できなかったらすみません)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ133話公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝23話公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売中。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ12巻 2024年8月3日に発売しました。(次巻、13巻6月6日発売予定)

コミカライズ外伝 3巻 2024年12月20日発売しました。(次巻、4巻発売日未定)

文庫版11巻 2024年10月4日発売しました。(次巻、12巻6月6日発売予定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
『第一回ユナちゃん杯リバーシ大会』じゃなかった。
>その受付にはティルミナさんがいる >リアナさんに頼まれて手伝うと言っていたけど、受付をしているみたいだ ティルミナさんも、日頃から商業ギルドとはお付き合いがあるので、リアナさんに頼まれてボランティ…
リアナさんが、ユナではなくミレーヌさんに相談していたら、権力の濫y…人柄と交渉力で、どのように解決したのかは気になる。
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