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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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864 クマさん、確認を取る その2

 孤児院で夕食を食べたわたしはくまの憩いの店に向かう。

 お店の2階はモリンさん、カリンさんが暮らしている。


「ユナさん、こんな時間にどうしたんですか?」


 もう、日が暮れて真っ暗だ。

 わたしは孤児院で話したことをモリンさんとカリンさんに話す。


「2人ぐらいだったら、大丈夫ですよ。でも、忙しくなったら、手伝ってもらうことになると思うけど」


 モリンさんも了承してくれて、交代の順番はカリンさんに一任されることになった。


 疲れた〜。

 わたしはお風呂に入るとベッドの上に倒れる。

 くまゆるとくまきゅうを召喚すると抱き締める。

 おかしい。

 昨日、王都から仕事を終えて帰ってきたばかりなのに、翌日から動いているなんて。

 数日間はまったりする予定だったのに。

 だからと言って、ほっとくわけにもいかないし、ポスターの絵も描くって約束をした。

 流石に、今から描くのは辛いので、寝ることにする。

 わたしは漫画家でもイラストレーターでもない。

 好きなときに寝る。

 だから、絵は明日、描くことにする。


 翌朝、わたしはポスターの絵を描く準備をする。

 ペンはマーネさんからもらった特殊なペンだ。

 魔力の容量で、色が変化する優れものだ。

 紙を机に広げ、絵を描いていく。

 絵の内容はラフで描いたとおりにリバーシの対戦をしているところだ。

 中央にテーブルを描き、その上にリバーシを描き、左右に人を描く。

 ここで、ポスターの人物をフィナとかノアにしたくなる。

 でも、ポスターが盗まれでもしたら困るので、想像の中の女の子を描く。

 そして、対戦相手は大人の男性。

 ラフは子供同士だったけど、イラストが子供だけだと、大人が参加しにくいイメージができてしまうかなと思った。

 逆に両方とも大人だけだと、子供が参加しにくくなる可能性がある。

 なので、子供は女の子、大人は男性を描くことにした。

 子供や大人、男女関係無く、少しでも参加してもらうためだ。


 そして、数時間後、絵が完成する。


「こんなものかな」


 フィナと同じぐらいの女の子とゲンツさんぐらいの大人の男性がリバーシをしているポスターが完成する。

 あとはリアナさんに複写してもらえばいい。

 のんびりしたいところだけど、1日の遅れが、全体の遅れになる可能性もある。

 わたしは描いた絵をクマボックスに仕舞い、商業ギルドに向かう。

 受付にいるリアナさんに手を振る。

 リアナさんはわたしに気付くと、今対応している人が終わると、他の受付嬢に交代して、わたしのところにやってくる。


「ユナさん。もしかして、もう描き終わったんですか?」

「確認をしてもらってもいい?」

「それじゃ、奥の部屋で確認しますね」


 わたしたちは昨日と同じ部屋に移動する。

 椅子に座り、クマボックスから描いた絵を出してテーブルの上に置く。

 リアナさんは大切な物を持つように紙を手にする。


「上手です。遠くから見ても、リバーシをしているって分かります。小さい女の子と大人の男性がリバーシをしているんですね」


 わたしは理由を述べて、リバーシをやっている2人を小さい女の子と大人の男性にした説明をする。


「確かに両方とも子供にしたら、子供だけが集まって、大人は参加してくれないかもしれませんね。逆では子供が参加しづらい。ポスターの絵1つでイメージが変わってきますね」


 イラスト1つで受け取り側のイメージが変わる。

 ちゃんとイラストで興味を持たせて、そのあとに文字で内容を確認させる。

 素人考えだけど、そんな感じだと思う。

 プロの漫画家とかイラストレーターは、わたし以上にちゃんと構図などを考えて描いていると思う。


「でも、色を塗ってくださったんですね」


 せっかくマーネさんから魔力量によって色が変わるペンを貰ったんだから、使ってみた。


「ダメだった?」

「いえ、色が付くと費用がかかるので……」


 そうだよね。モノクロ印刷とカラー印刷では、カラー印刷のほうが値段が高くなる。

 それは元の世界でも、この世界でも同じことだ。


「わたしがお金を出すよ」

「そこまで、ユナさんに迷惑をかけるわけにはいきません。すでに賞品まで出してもらって、絵まで描いてもらって、逆にこちらが代金を支払わないといけないです」

「別に代金のほうは」

「そうはいきません。ミレーヌさんに叱られます。絵の代金ぐらいは出します。少ないですが……」


 最後は小さい声になる。


「ふふ、ムリをしないでいいよ。お金はいらないよ。その代わりにせっかく描いたから、色付きでお願いね」

「わ、分かりました。ユナさんに支払う予定だった代金を複写するほうに回させていただきます」

「それでいいよ」


 それから、ティルミナさんと話し合った簡易リバーシのことを話す。


「線が入った紙と、片面が黒い紙ですか」

「2枚の紙でリバーシができるでしょう。そしたら、家でも練習ができるし、大会に参加しようと考える人も増えるかもしれないでしょう。そしたら、本物のリバーシを買ってくれる人もいるかも?」


 あくまで想像なので、どうなるのか分からない。

 見向きもされない可能性もある。

 こればかりはやってみないと分からない。


「こっちの印刷代は、わたしが持つよ。これはティルミナさんのアイディアだけど、わたしがやってみたいことだから」

「た、助かります」


 当初、リアナさんが言っていたけど、リバーシの大会をするには、いろいろとお金がかかる。

 それはリバーシに限ったことではない。

 なんでもそうだけど、なにかを行うにはそれなりのお金が必要になる。

 無料なんてことはない。知らないところで、誰かが補っているだけだ。

 それがお金なのか、労働力なのか、分からないけど。


「それなら、マス目の紙の裏にルールを書いたらどうですか」


 本物のリバーシにはやり方が書いた紙が入っている。


「そうだね手間じゃなければ、あったほうがいいね」


 ルールと言っても、

1、中央に白と黒の石を対角線に2個ずつ置く。

2、先攻後攻を決める。

3、相手の石を挟むように置く。

4、挟まれた石は裏返しになる。

5、交互に石を置いていく。

6、置く場所がなかったら相手の番になる。(相手の石が挟めない場所)

7、石が多かったほうが勝ち。


 そんなようなものを裏に書くことになった。

 それから、ポスターに付ける文章内容を決め、話し合いは終わる。

 簡単に終わるかと思ったけど、思ったよりも時間がかかってしまった。


「だいぶ、話し込んじゃったけど、仕事は大丈夫?」

「はい、大丈夫です。みんな、なにかあれば手伝ってくれると言ってくれていますので。それに、これも商業ギルドの仕事の一つです」


 ポスターと簡易リバーシを印刷するリアナさんとは別れる。

 これで、わたしができることはないかな。

 帰って、くまゆるとくまきゅうと一緒に怠けよう。


 翌日、昼食を食べにくまの憩いの店にやってくる。

 すると、新しいポスターが貼ってあるのに気づく。

 昨日の今日で完成して、もう貼ってあるみたいだ。


「ユナさん、いらっしゃい」

「もう、貼ってあるんだね」

「リアナさんが店が始まる前にやってきて、『貼ってください』と頼まれました。それと簡易リバーシの紙も」


 本当に仕事が早い。


「どんな感じ?」

「絵があると気になるのか、足を止めるお客さんが多いですよ」


 イラストは成功ってところかな。

 あとは大会に興味を持ってくれる人が増えるのを願うだけだ。


「それで、ユナさん。体験コーナーはいつからやるんですか?」


 そうだった。


「店の子たちは、リアナさんがポスターを持ってきたときに、順番を決めていましたよ」


 孤児院の子供達には、いつからきてほしいとは伝えていない。


「やるにしてもリバーシを用意しないといけないから、すぐには」

「それなら、リアナさんがポスターと一緒に置いていきましたよ」


 リバーシ貸し出し用の代金のことを話し合っていなかった。


「とりあえず、あとで孤児院で聞いてくるよ」


 食べたら、後で確認しに行こう。

 カリンさんは仕事に戻り、わたしはパンを購入すると端の席に座り、店内を見る。

 ポスターは数箇所に貼ってあり、たまに足を止める人がいる。

 その中に、金色の髪をした少女を見つける。

 ノアだ。

 そして、ポスターを見ること1分。店内に目を向ける。わたしと目が合う。

 すると笑顔になり、わたしのところに駆け寄ってくる。


「ユナさん! お母様の用事は終わったんですか?」

「終わって、帰ってきたよ」

「お母様、無理難題を言いませんでしたか? 帰りが遅かったみたいでしたが」

「帰りが遅かったのは、ちょっとエレローラさんの知り合いと一緒に薬草の採取に行っていたからだよ」

「そうなんですね。それで、ユナさん、あれはなんですか? リバーシの大会って」


 ノアがポスターを指さす。


「書いてあるとおりだよ。リバーシの大会をするから、参加者募集中だよ」

「リバーシって、ユナさんが作ったあれですよね」

「今、クリモニアで売れているらしくて、商業ギルドのリアナさんって人が大会をしようとしているんだよ。ノアも参加する?」

「そうですね。賞品の食べ放題はいりませんし」


 まあ、貴族の娘さんだし。

 子供だから、そんなに食べないだろうし。


「くまゆるちゃんとくまきゅうちゃんのぬいぐるみは魅力的だけど。持っていますし、なんなら、自分で作れます」


 ノアは、フィナの誕生日プレゼントに自分で作ったくまゆるとくまきゅうのぬいぐるみを贈った。

 なんでも、型紙もあり、作り放題らしい。

 そう考えると、ノアにとって魅力的な賞品ではないかもしれない。


「それじゃ、参加しない?」

「いいえ、参加します。先駆者として負けられません」


 確かにこの世界ではノアとフィナが先駆者になる。

だからと言って、毎日リバーシをしているわけじゃないから、勝てるとは限らないと思うけど。


投稿遅れてすみません。

ノアも参加することになりました。


※投稿日は4日ごとにさせていただきます。(予定)

※休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合はX(旧Twitter)で連絡させていただきます。(できなかったらすみません)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」コミカライズ133話公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

※PASH UP!neoにて「くまクマ熊ベアー」外伝23話公開中(ニコニコ漫画、ピッコマでも掲載中)

お時間がありましたら、コミカライズもよろしくお願いします。


【くまクマ熊ベアー発売予定】

書籍21巻 2025年2月7日発売中。(次巻、22巻、作業中)

コミカライズ12巻 2024年8月3日に発売しました。(次巻、13巻発売日未定)

コミカライズ外伝 3巻 2024年12月20日発売しました。(次巻、4巻発売日未定)

文庫版11巻 2024年10月4日発売しました。(表紙のユナとシュリのBIGアクリルスタンドプレゼントキャンペーン応募締め切り2025年1月20日、抽選で20名様にプレゼント)(次巻、12巻発売日未定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
リバーシ大会の準備で盛り上がっているところですが・・・”西の森”で狩って”お土産”にした魔物をフィナに渡したり、ほとぼりも冷めた頃だと見計らい、元・凍った街に残したクマの石像を回収しようとするお話も挿…
大会編って数話で終らずにガッツリと1冊分やる気配ですね そうなると殺伐とした事件も起きるのか ほのぼのと日常の風景で癒し回なのか
てっきり貴族として庶民の楽しみを奪うようなことはしない、という流れかと思ったのに。ノアったらお茶目さん。
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