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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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825 クマさん、休息を取る

 リディアさんとゼクトさんがお風呂に驚く。


「2人は10日間もお風呂に入っていないんでしょう。ちゃんと、汚れを落としてから布団に入って」


 何度も言うけど、シーツや枕を洗濯するのはわたしだ。

 まして、森の中を10日間も歩いたり、走ったり、魔物と戦っていた。

 汗は掻いていると思うから、お風呂に入ってから寝てほしい。


「お風呂に入っている間に、魔物に襲われたら」


 裸だと言いたいみたいだ。


「魔物が近寄ってきたら、くまゆるとくまきゅうが教えてくれるから大丈夫だよ」

「でも……」

「リディア、諦めなさい。ユナに野宿の常識は通じないわ」


 わたしが非常識みたいに言わないでほしい。


「それに臭いと、くまゆるとくまきゅうに嫌われるわよ」

「臭い……」


 リディアさんは自分の腕とか、匂いを嗅ぎ始める。


「入らせてもらうわ」


 臭かったのかな?

 これでも15歳の乙女だ。

 流石のわたしでも「臭かったの?」と尋ねたりしない。

 ……乙女だよ。


 ゼクトさんとくまゆるとくまきゅうを残し、3人で脱衣所に向かう。

 くまゆるとくまきゅうには、外にいる魔物だけでなく、内なるゼクトさんの監視をしてもらう。

 くまゆるとくまきゅうにお願いしたら、ゼクトさんが「誰が覗くか!」と叫んでいた。


 3人とも裸になり、脱衣所から風呂場に移動する。

 リディアさんはスラッとして、体は細く、胸は好感が持てる大きさだった。


「本当にお風呂……」


 リディアさんはお風呂を見て驚いている。


「クマの口からお湯が出ているわ」


 お風呂にはクマ石像が設置してあり、クマの口からお湯が出て、湯船の中に流れ落ちている。


「早く体を洗って、温まりましょう」


 わたしたちは体を洗い、湯船に入る。

 リディアさんは久しぶりに体と髪が洗えて嬉しそうにしていた。

 髪の長さは、わたしと同じぐらいあり、丁寧に洗っていた。


「本当に気持ちがいいわ。ユナちゃん、ありがとう」

「どういたしまして」


 湯船に浸かったリディアさんは手足を伸ばし気持ちよさそうだ。


「まさか、こんな森の中で、お風呂に入れるとは思わなかったわ」

「まあ、それにはわたしも同意ね」

「疲れたら、美味しい食事と、温かいお風呂と、柔らかい布団でしょう」

「それには同意だけど」

「森の中でなければね」


 わたしたちは疲れた体をお風呂で休める。


「…………」

「…………」

「…………」


 クマ石像の口から流れるお湯の音だけが聞こえる。

 のんびりとお湯に浸かっているとリディアさんが口を開く。


「えっと、マーネさん。一つ聞いていい?」


 リディアさんが少し真面目な表情をしている。


「なに?」

「わたしが無意識に風魔法を使っていたこと、どうして分かったの? わたし本人が分かっていなかったのに」

「そのことね。異変に気付いたのは洞窟の中にいたときよ。あなたの髪が微かに揺れていた。どこからか風が吹いているかと思ったんだけど、違った。ユナの髪は動いていなかったからね。あなたの髪だけが靡いていた」


 気付かなかった。


「あとはエルフのわたしが観察すれば、風の流れも感じることができるわ。例えば、今とかね」


 マーネさんはリディアさんを見る。


「動かないで、じっとして」


 リディアさんは言われるままに動かない。

 わたしも一緒に動かない。


「ゆっくりと周囲の湯気を見なさい」


 言われるままに、周囲を見る。


「微かに湯気が、あなたに向かっているでしょう」


 マーネさんに言われて、湯気の流れを見るとリディアさんに向かって動いているように見える。

 ちゃんと見ないと気づかないほどだ。


「もしかして、また無意識に?」

「多分、魔物がいる森の中でお風呂に入る危機感で、無意識に魔法を使っているのね」

「治らないのかな?」

「街では使っていないんだから治るでしょう。ただ、切り替えができるようになれば、好きなときに魔物の居場所を探せるし、戦うことになれば魔法を、それと弓も使えるんでしょう。優秀な冒険者になれるわよ」

「…………」


 リディアさんは自分の手を見て、考え込む。


「だから、ゆっくりと慣れればいいわ」

「マーネさん、ありがとう。わたし、頑張る」

「年上なんだから、気にしないでいいわよ」


 この中で、一番小さいけどね。と心の中で思ったけど、わたしは口に出さなかった。

 これでも空気は読めるからね。


 そして、お風呂から上がったわたしたちは髪を乾かし、くまゆるとくまきゅうが待つ、居間に移動する。

 ちなみに、もしものことを考えて服は黒クマのままだ。

 白クマの説明も面倒くさいからね。

 脱衣所のドアを開けると、くまゆるとくまきゅうがいた。


「くまゆる、くまきゅう、そこにいると邪魔だよ」

「「くぅ〜ん」」

「どうして、ドアの前にいるの?」

「3人が風呂に向かったら、そこに座りだした」


 説明してくれたのはゼクトさんだ。


「もしかして、兄さん」

「違う。おまえたちが、その部屋に入ったら、すぐだ。俺は関係無い!」


 まあ、妹、幼女、クマを覗きはしないだろう。

 くまゆるとくまきゅうは、自分たちで考えて脱衣所の入り口を守ってくれていたみたいだ。

 くまゆるとくまきゅうにお礼を言って、ゼクトさんに風呂の使い方を説明する。

 風呂から上がったわたしたちは牛乳を飲む。

 うん、美味しい。


 その後、ゼクトさんも風呂から上がり、部屋割りをする。

 2階には部屋が三つある。

 わたしの部屋と、空き室が二つ。

 マーネさんには昨日使った部屋を、残りの部屋をゼクトさんとリディアさん兄妹に使ってもらう。

 わたしはくまきゅうを連れて自分の部屋に移動する。

 マーネさんのところにはくまゆるが一緒だ。

 ちなみに大きいままだ。

 わたしは布団の上に倒れる。

 いろいろとあったけど、明日には薬草を手にいれたいところだ。


「くまきゅう、おやすみ。朝になったら起こしてね」

「くぅ〜ん」


 わたしは抱きやすいように子熊化したくまきゅうを抱きながら、眠りに就いた。


 翌朝、くまきゅう目覚ましによって起こされる。


「くまきゅう、おはよう」

「くぅ〜ん」


 くまきゅうの頭を撫でて、元の大きさに戻す。

 朝食の準備をするため一階に移動すると、マーネさんがくまゆると一緒にいた。


「おはよう、早いね」

「薬草の処理の片付けをしたかったから、この子に頼んで、早めに起こしてもらったの」


 マーネさんは近くにいるくまゆるに目を向ける。

 どうやら、マーネさんもくまゆる目覚ましをセットしていたみたいだ。

 それから、マーネさんと一緒に朝食の準備をする。


「起きてこないわね」


 朝食の準備が終わっても、リディアさんとゼクトさんは起きてこない。


「わたしが起こしに行ってくるわ」


 マーネさんが申し出てくれるので、お願いする。

 しばらくすると、二階から物音がしたと思ったら、リディアさんとゼクトさんが階段を駆け下りてくる。その後ろからマーネさんがゆっくりと下りてくる。


「ごめんなさい。布団が気持ち良すぎて」

「爆睡してしまった」


 2人は申し訳なさそうに謝る。


「それだけ、2人とも疲れていたってことだよ」


 眠れないよりは、ちゃんと寝られたほうがいい。疲れも取れるし、翌日の仕事もしっかりできる。

 わたしは気にしていないことを伝え、朝食を食べようと言う。


「あの布団は危険だわ」

「今までに使ったことがある布団の中で最高だった」

「家はもちろん、宿屋でも、こんなに良い物使われていないわ」


 好評でよかった。

 布団は自分が良い物を使いたかったから、良い布団を購入した。

 値段もそれなりにしたけど、大量購入で、少しだけ安くしてもらった。


「ユナちゃんに、お風呂に入ってから寝てほしいと言われた意味が分かったわ」


 そんなに大げさなことじゃないんだけど。

 ただ、洗濯の問題だ。

 そして、朝食を終えたわたしたちはクマハウスを出て、ベルトラ草の採取に向かう。

 探知スキルを見ながらボーっとしている。

 わたしの前に座っているマーネさんはキョロキョロと周りを見て、薬草を探している。


「そろそろです」


 昨日、リディアさんが言っていたとおりに、近くだったみたいだ。


「ユナ、確認だけど、この先に魔物はいる? この子たちは、なにか言っている?」


 マーネさんは乗っているくまきゅうの背中を触りながら尋ねる。

 探知スキルで確認する。

 魔物の反応はない。


「くぅ〜ん」


 いつものことに、くまきゅうが演技で鳴いてくれる。

 別の意味で意思疎通ができている。


「大丈夫だって」

「本当に、クマの言葉が分かるのね」


 そんな感想を漏らしながら、先に進む。


「あの木の先よ」


 リディアさんの言う木を先に行くと、ちょっと広い場所に出る。


「本当に魔物がいないわ」

「前に来たときはいたんだよね」

「ああ、遠くからだが、ウルフが30体はいた」


 わたしにとっては、脅威にならないけど、ゼクトさんとリディアさんからしたら、脅威の数だ。

 もし、現実の世界で狼の群れに襲われたら、絶望的だ。


「魔物が来ない間に、早く採取しよう」

「わたしも採取するから、ユナは周囲をお願い」

「了解」


 3人がベルトラ草を採取している間、わたしとくまゆる、くまきゅうは周囲の警戒をする。とは言ってもくまゆるとくまきゅうで十分なので、わたしはマーネさんのところに近づく。


「それがベルトラ草なの?」


 マーネさんは雑草にしか見えない草を採取している。

 植物が薬になったり山菜だったりするのは知っているけど、素人のわたしには、そこらに生えている草にしか見えない。


「そうよ。この葉の部分ね」

 

 マーネさんは葉をむしり取る。

 わたしも同じようにむしり取り、スキルの観察眼を使ってみる。「ベルトラ草」としか表示されない。流石に薬になる効果などは表示されないみたいだ。

 不便だ。


「今更だけど、城の薬草園にはないの?」

「あるわよ。だからと言って、リディアの妹のために使うことはできないわ。城にある薬草園は、王族のため。さらには研究のためにあるのよ。まあ許されても一部の貴族ぐらいね」


 リディアさんの妹に使うってことは、他の人たちにも使うってことだ。

 1人だけ、優遇させるわけにはいかない。

 厳しいけど、流石のわたしでも理解はできる。

 こればかりは仕方ないことだ。


「でも、城の薬草園にあるならマーネさんは採取の必要はないんじゃ」

「なにを言っているの? いろいろな薬草がある代わりに、量は多くはないわ。採取ができるなら、採取するのが、薬師よ」


 まあ、少ないよりは多いほうがいい。

 いざ、使うときに少ないと困る。


「だからといって、全部は採取はしないわ。全て採取すれば、二度と生えてこない。だから、あなたたちも全部は採取してはダメよ」


 マーネさんはリディアさんたちに聞こえる声で言う。


「はい」

「分かっている」


 3人は目的のベルトラ草を静かに採取をする。

 わたしは探知スキルを使って周囲を確認する。

 近寄る魔物が…………。

 


リディアさんたちの目的の薬草は手に入れました。

あとはマーネさんの薬になる花ですね。


※文庫版11巻が予約受付中です。発売日は10/4です。抽選のアクリルスタンドも引き続き行う予定となっていますので、よろしくお願いします。


※投稿は4日ごとにさせていただきます。

休みをいただく場合はあとがきに、急遽、投稿ができない場合は活動報告やX(旧Twitter)で連絡させていただきます。


【書籍発売予定】

書籍20.5巻 2024年5月2日発売しました。(次巻、21巻予定、作業中)

コミカライズ12巻 2024年8月3日に発売しました。(次巻、13巻発売日未定)

コミカライズ外伝 2巻 2024年3月5日発売しました。

文庫版10巻 2024年5月2日発売しました。(表紙のユナとサーニャのBIGアクリルスタンドプレゼントキャンペーン応募締め切り2024年8月20日、抽選で20名様にプレゼント)(次巻、11巻10月4日発売予定)


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。

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― 新着の感想 ―
お風呂シーンで毎回思うことは、ユナの長い髪。 リディアは貧しい生活してるし、この世界の人間で平民だから、いざとなったら長い髪を切って売る。ことも視野に入れて長いんだと考えられるんですが、ユナの長い髪は…
[良い点] よかったね、ユナ 幼女以外の好感が持てるお胸の仲間がまた一人増えたよ!
[気になる点] > 3階には部屋が三つある。 ん?3階? ミリーラは別として、それ以外は2階建てでは? 一応誤字報告しましたが。
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