820 クマさん、冒険者の話を聞く
申し訳ありません。
冒険者4人と書いていましたが、2人に修正させていただきました。
詳しくは後書きに書かせていただいています。
冒険者が2人として、読んでいただければと思います。
過去分は修正済みです。
くまなの
探知スキルで確認する。
反応はない。
今度こそ、巨大スネイクを討伐することができたみたいだ。
双頭蛇なことや、毒がある以外は巨大な蛇なだけだ。
もし、初めから双頭で戦っていたら、少しは面倒だったかもしれないけど、大蛇と戦ったわたしからしたら、敵ではない。
「ユナ!」
くまゆると一緒にマーネさんが駆け寄ってくる。
「マーネさん、ありがとう。助かったよ。くまゆるもナイス投球だったよ」
「くぅ〜ん」
くまゆるは嬉しそうに鳴く。
くまゆるを褒めていると、くまきゅうが悲しそうにやってくる。
活躍できなかったから、いじけているのかもしれない。
「くまきゅうも、2人を守ってくれてありがとうね」
くまきゅうがスネイクに追いかけられていた2人を気にした位置にいたことを知っている。
スネイクが2人を襲うようなら、2人を助けに行けるように。
わたしが危険なら、わたしを助けに行けるように。
そんな位置にいた。
だから、安心して戦うことができた。
わたしは、くまゆるとくまきゅうにお礼を言って、頭を撫でてあげる。
「ユナ、体は大丈夫。毒の影響は?」
わたしは体を確認する。
気持ち悪いとか、怠いとか、そんなことはない。
「大丈夫だよ」
「よかった。毒の種類が分からないから、もし毒の影響を受けていたら、危険だったわ」
「マーネさんでも分からないこともあるんだね」
「当たり前よ。一応、何種類か解毒剤は用意してあるから、もし、体に異常が起きたら、すぐに言って」
流石マーネさんだ。解毒剤も用意してあったんだ。
「それにしても、双頭のスネイクが現れるとは思いもしなかったわ」
「やっぱり、珍しいの?」
「大きいスネイクも珍しいのに、双頭のスネイクなんて、昔の噂話で聞くぐらいよ。普通の冒険者なら一生会うことなんてないわ」
確かに、こんなのが何匹もいたら困る。
「まあ、無事に倒せてよかったよ」
わたしたちが話をしていると近づいてくる足音が聞こえてくる。
スネイクに追いかけられていた2人だ。
くまゆるとくまきゅうがわたしたちの前に出る。
「待ってくれ。危害を加えるつもりはない」
男性がくまゆるとくまきゅうの行動に答える。
「くまゆる、くまきゅう、ありがとうね。大丈夫だから、下がって。マーネさんの傍にいてあげて」
くまゆるとくまきゅうは下がり、マーネさんの左右に立つ。
「俺はゼクト。こっちは妹のリディアだ」
ゼクトと名乗った男性は25歳ぐらいで、剣士風の装いをしている。無精ヒゲがあるので、もう少し若いかもしれない。
リディアと紹介された女性は、20歳ぐらいで、狩人っぽい格好をしている。
「わたしはユナ」
わたしは名乗ってから、後ろを軽く目を向ける。
「わたしはマーネ」
お互いに名前だけ名乗る。
「助けてくれてありがとう。助かった」
「もう、ダメかと思ったわ。ありがとう」
ゼクトと名乗った男性とリディアと紹介された女性がお礼を言う。
緊張が解けたのか、2人はその場にへたりこんだ。
走って、疲れていたみたいだ。
「まず、確認したいことがあるが、いいか?」
「わたしたちがここにいる理由?」
「いや、それも気になるが、それ以上に、気になることが……」
2人が顔を見合わせる。
森深くに女の子がクマと一緒にいる以上に気になることってある?
「どうして、嬢ちゃんは、そんな格好をしているんだ」
2人の視線が、わたしに向けられる。
わたしは自分の格好を見る。
マーネさんもわたしを見る。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
わたしを含めた、4人の間に沈黙が流れる。
そんな沈黙を破ったのはマーネさんだった。
「その子はクマ好きなのよ。だから、格好については、気にしないであげて」
「そ、そうなんだな」
「と、とっても似合っているわ」
なにか、可哀想な子を見るような目で見られている。
その説明の仕方だと、否定はできない。
クマ好きを否定すれば、くまゆるとくまきゅうが悲しむ。
だから、わたしの返答は「そうだよ。だから、気にしないで」と言うしかなかった。
「それで、あらためて確認だが、嬢ちゃんたちはどうしてこんな森にいるんだ」
「女の子、2人で来るような場所じゃないわよ」
「わたしたちのことを尋ねる前に、助けられたあなたたちが先に話すのが礼儀だと思うわよ。それに、あなたたちも2人でしょう」
マーネさんが年長者らしく尋ね返す。
見た目は子供だから、冒険者たちは驚いた表情をする。
「そうだな。俺たちは、ここから少し先のトゥーラの街から来た冒険者だ」
トゥーラ?
もしかして、王都からの道の先にあった街の名前?
「その冒険者が、どうして、こんな森に?」
マーネさんの質問に冒険者は顔を見合わせる。
「俺たちは、とある薬草を採取しにきたんだ」
「薬草!?」
マーネさんが薬草って、言葉に反応する。
「どんな薬草を探しているの? 見つけたの? 見せて?」
「なんだなんだ」
いきなりのマーネさんの反応にゼクトさんは驚く。
「残念だけど、採取はできていないわ」
ゼクトさんの代わりにリディアさんが答える。
「俺たちはこの時期に薬草を採取しにきた」
「でも、その花が咲いている場所の近くに魔物がいて、採取することができなかったの」
「それで、採取は諦め、様子を見ることにしたんだが、あのスネイクが、俺たちに気付きまとわりついてきた」
「ここ二日ほど、ずっと逃げ回っていたの」
あんなスネイクに二日間も追いかけられていたの?
「巻いたと思っていたんだけど」
「洞窟に戻って来たところで、襲われることになった。さらに最悪なことに、逃げる先は洞窟の中にしかなかった」
そして、逃げているところで、わたしたちと遭遇したってことらしい。
「あらためて礼を言う。ありがとう」
ゼクトさんは軽く頭を下げる。
「でも、2人だけで、この森に入るのは危険じゃない?」
「魔物討伐なら、2人では危険かもしれない。でも、採取だけなら、人数が少ないほうがいい。魔物に気付かれずに進むことができる」
確かに、敵地侵入みたいなゲームをしたことがあるけど、人数が多い方が見つかりやすい。
100人で侵入しようものなら、すぐに発見される。
だから、魔物討伐が目的でなければ、少ない人数なのは理にかなっている。
もっとも、魔物と戦うことになった場合は、誰も助けてくれないから、危険度は高い。
もし、わたしが巨大スネイク倒していなければ、どうなっていたか分からない。
「その採取する薬草の名前は?」
「……すまない。教えることはできない」
「もしかして、毒草?」
「違う。毒草じゃない」
「それなら、言えるでしょう」
「他の人に知られれば、奪い合いになる」
もし、貴重な薬草なら、取り合いになる。
だから、王都の冒険者ギルドでも、森に関する資料はなかった。
「命を救ってもらったのに?」
「それは…………」
マーネさんの言葉に2人は顔を見合わせる。
「冗談よ。簡単に話すようじゃ、冒険者として失格よ。でも、冒険者として、助けてもらったのに、お礼の言葉だけじゃ」
マーネさんは大人らしく、取り引きを始める。
「とりあえず、この先の情報をちょうだい」
「まあ、それぐらいだったら」
その辺りが落としどころかもしれない。
冒険者が探している薬草と、わたしたちが探している薬草が同じ可能性もある。
でも、貴重な薬草なら、簡単に話すことはできない。
「その前に、こっちを片づけましょう。わたしたちが倒したんだから、貰ってもいいわよね」
マーネさんが確認するように2人に尋ねる。
「ああ、問題ない」
「ユナ、アイテム袋に入る?」
許可をもらったマーネさんが尋ねてくる。
クマハウスがアイテム袋に入ることを知っているから、入るか確認みたいだ。
「大丈夫だよ」
わたしは巨大なスネイクに近づき、クマボックスの中に入れる。
それを見た2人は驚く。
「あんな、大きいものが」
クマボックスのことを説明する必要はないので気にしないでおく。
それから、スネイクが吐いた毒も土を盛って、触れないようにする。
これで空気中に舞うこともないはずだ。
スネイクの処理が終わると、マーネさんがゼクトさんとリディアさんに近づく。
「あなたたちは、これを足とかに掛けて」
マーネさんは液体が入った瓶を差し出す。
「これは?」
「もしかして、スネイクに投げたもの?」
リディアさんは瓶を見る。
「ええ、スネイクが嫌う匂いがする液体よ。あなたたちが襲われでもしたら、面倒くさいからね」
「そんなものが。これを売ってくれないか。これがあれば、この洞窟を通るときに楽になる」
「悪いけど、ここでは売れないわ。欲しいなら魔法省を通して、注文して」
「魔法省?」
「わたし、魔法省で働いているのよ。だから、個人で売買はできないのよ」
マーネさんの言葉が信じられないような目で、2人はマーネさんを見る。
まあ、見た目は子供だからね。
「個人で売買できないんだ」
「わたしは国のお金で研究をしているのよ。それを個人売買できるわけがないでしょう。もし、発覚したら、クビよ」
そう言われたら、そうだ。
会社のお金で研究して開発したものを、個人で売ることはできない。
しかも、国のお金で買った素材で作り、個人で販売なんて、社会人経験がないわたしでも、ダメなことぐらい分かる。
「とりあえず、売ることはできないけど。今回、使用する分に関してはお金は不要よ」
「助かる」
2人はお礼を言って、それぞれの足や服に掛ける。
これで、スネイクは近寄ってこないはずだ。
わたしとしたら、コウモリにも襲われない薬もあると嬉しいんだけど。
前書きに書きましたが、冒険者を2人した理由ですが。
プロットでは「冒険者と会う」「薬草を探している」。
そして「薬草を探している理由」。ここを書いてみる(次回分)と、4人だと理由付けが弱く、なんで?となってしまうため、2人の兄妹とさせていただきました。
読んでくださっているみなさんを混乱をさせてしまい、申し訳ありません。 くまなの
※申し訳ありません。しばらく投稿は日曜日だけとさせていただきます。
【書籍発売予定】
書籍20.5巻 2024年5月2日発売しました。(次巻、21巻予定、作業中)
コミカライズ12巻 2024年8月3日に発売しました。(次巻、13巻発売日未定)
コミカライズ外伝 2巻 2024年3月5日発売しました。
文庫版10巻 2024年5月2日発売しました。(次巻、11巻10月4日発売予定)
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。