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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、海に行く
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77 クマさん、お店の名前を考える

 お店の準備が段々と整ってきた。

 問題が一つ。

 お店の名前が決まっていない。

 そのことをモリンさんに相談したら、


「ユナちゃんの店なんだから、ユナちゃんが決めていいよ」


 と言われてしまった。

 でも、わたしには壊滅的にネームセンスが無い。

 ゲームにも自分の名前を使うほどだ。それほどに自分のネームセンスに自信はない。

 だから、皆に名前を募集することにする。

 明日、お世話になっている人たちを集めて試食パーティーをすることになっている。

 参加するメンバーは職人のモリンさん、カリンさん、店を手伝ってくれる子供たち6人。ミレーヌさんにヘレンさん。親子共々お世話になっているティルミナさんにフィナ。いつも子供たちの面倒を見てくれているリズ。宿屋のエレナ。王都から戻ってきたノアの15人。


 それでさっそく聞いてみた。


「クマのパン屋さん」

「クマさん食堂」

「クマのピザ屋さん」

「クマさんとプリン」

「クマさんの食べ物屋さん」

「クマさんの……」

「クマの……」


 延々とクマの名前が並ぶ。


「えーと、どうして、みんなクマなのかな?」

「だって……」

「それは……」

「ねぇ……」


 みんなの視線がわたしに集まる。

 はい、理解しました。

 でも、働くのはわたしじゃないよ。


「あと、店で働く制服を考えてみたんだけど」

「制服?」


 ミレーヌさんがそんなことを言い出しました。


「王都で見なかった? 接客するときの格好」


 ああ、エプロンドレスみたいな服。

 大きな店に入ったとき、みんな同じ服を着ていた。

 確かにあれは可愛かった。

 日本のファーストフードやレストランにも制服があった。

 なら、異世界で制服にするならやっぱりメイド服、執事服?

 子供たちなら似合いそうだ。


「いいですね。制服」


 メイド服を想像しながら答える。


「でしょう」

「とりあえず、試しに一着作ってきたんだけど」


 ミレーヌさんがアイテム袋から一着の服(?)を取り出す。

 なんで、制服を出したはずなのに、毛皮をだすのかな?

 バシっとミレーヌさんが毛皮を広げる。


「クマ?」

「そう、ユナちゃんの店なら、やっぱりクマでしょう」


 そこにはクマの着ぐるみがあった。


「ミルちゃんだっけ、着てみてくれる?」


 こんな恥ずかしい格好の服を着てくれるわけがない。

 断るに決まっている。


「いいんですか!」


 嬉しそうに言う。


「いいな」

「ずるい」

「わたしも着たい」


 それを見た子供たちがそんなことを言い始める。

 受け取ったミルは嬉しそうな顔をして、他の子供たちは羨ましそうな顔をしている。

 そこにはフィナとノアの顔もあった。

 クマの制服を受け取ったミルはこの場で着替え始める。

 いくら、男の子は年下しかいないからと言って、年頃の女の子が人前で服を脱ぐなんて恥ずかしくないのかな。今まで狭い孤児院で兄弟のように一緒に暮らしてきたせいかも。

 これは今後のことも考えて男子と女子の別々の更衣室を作らないと駄目だな。

 女の子はもっと自分を大事にしないと。


「どうですか」


 クマの制服を着たミルは嬉しそうにその場を回る。

 だから、どうして嬉しそうにする!

 確かに可愛いけど。

 否定する言葉が出てこない。 


「似合っているね」

「いいな」

「かわいい」

「ウルフの毛皮で作ったけど中々の出来ね」

「これをお店で着て仕事するの?」

「ええ、ユナちゃんの許可が出ればね」

「ユナお姉ちゃん、わたし着たいです」

「僕も」

「わたしも」


 えーと、男の子たちも着たいの?

 子供たちは喜んでいるし、別にわたしが着て仕事をするわけじゃないから了承する。


「ちょっと待ってください。それ、わたしも着るんですか?」


 カリンさんがミルのクマの制服姿を見る。


「子供たちは可愛いですけど、わたしは……」

「カリンさんも似合うと思いますよ」

「ミレーヌさんは自分が着ないと思って」

「わたしは二十代ですから、カリンさんはたしか17歳ですよね。十分似合いますよ」


 わたしよりも年上だ。

 なんか嬉しいかも。

 でも、17歳か。日本で言えば高校二年生。ミレーヌさんじゃないけど高校生ならセーフだと思うんだけど。


「わたし、そんな恥ずかしい格好で接客なんてできません」


 恥ずかしい格好って、それを着ている本人の前で言いますか。


「わたし、キッチンでお母さんとパンを作ります」

「店内に子供たちだけなんてできませんよ。それに、フロアの責任者はカリンさんなんだから」

「でも」

「一応、モリンさん以外はローテーションで回しますから」

「ううぅ」


 そんなに嫌がることないのに、その格好で街を歩き王都の中を歩いていたわたしはどうなる。

 さらに、国王にもこのクマさんの格好で会ったというのに。


「制服がクマで決まったんなら、やっぱり店の名前はクマにするべきね」

「その前に質問」

「なに?」

「手は仕事の邪魔になるけど靴は作らないの?」

「確かにそうね。作りましょう。それからユナちゃん。制服の材料の提供お願いしていい? 制作費はこちらで持つから」


 ウルフの毛皮なら売っていないので沢山ある。足りなくてもこないだの魔物の群れの討伐で未解体のウルフは五千ほどある。


「いいよ。予備で多めに欲しいから、一人3着ほどお願いしますね」

「そんなに?」

「もし、人数を増やす場合があったら予備があれば着れるでしょう。子供たちの身長は同じぐらいだし」

「材料のウルフの毛皮さえ出してくれれば何着でもいいよ。でも、次回からお金払ってね」


 制服はわたしが想像していたものと違ったけど決まり、次は店の名前を決めることになる。


「店の名前はどうするの」


 みんなで再度、店の名前を考え始める。

 そして、長い話し合いの結果、決まりました。


『くまさんの憩いの店』

  

 になりました。

 接客する人は全員クマの制服。

 それに反対したのはカリンさん一人だけだったけど、却下される。

 わたしは仕事をしないから関係ないけどね。


最近、移動するときの話を考えるとクマを空に飛ばしたくなる。


「飛ばないクマはただのクマだ」と名言があるぐらいですから。


飛ばないとただのクマになってしまう。



※ 食べ物屋で毛皮の制服ですが、毛が入ることはスルーでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石に着ぐるみは邪魔そうだけど… クマ風の給仕服で良さそうなような
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