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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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773 クマさん、それぞれの家に行く

「他にも必要な物があったら言って」


 わたしはお風呂用に水の魔石と火の魔石の予備を渡した。


「ありがとうございます。ここはもう十分です。ただ……」


 ボラードさんたちが顔を見合わせる。

 なにか、言いにくいことなのかな。

 もしかして、氷竜を倒して欲しいとか?

 頑張れば、なんとかなるかもしれないけど、氷竜をこの目で見てみないことには分からない。

 わたしが想像する以上の強さを持ったドラゴンかもしれないし、なにより空を飛ばれたら、なにもできない。


「嬢ちゃんは魔法が使えるんだよな」


 お爺ちゃんの1人が尋ねてくる。


「うん、まあ。魔法使いだからね」


 ギルドカードの職業はクマだけど。


「その……家族に会わせてもらえないだろうか」


 少し言いにくそうに言う。


「以前にベンデが溶かしてくれたけど……」

「魔法が使えると言っても、一般的な魔法使いより魔力量が少ないから」

「それに年をとって」


 管理人のお爺ちゃんと鉱山のお爺ちゃんが唯一魔法が使えるベンデお爺ちゃんを見る。


「俺は、まだ若い!」

「本人はそう言っているが、無理はさせたくない」

「うぅ」


 そう言われたら、魔法が使えるベンデお爺ちゃんも文句は言えなくなる。

 会話からお互いに思いやり、助け合ってきたことが分かる。

 だから、わたしはお願いを了承する。


「いいよ」

「本当か?」

「感謝する」


 わたしの言葉に全員、嬉しそうにする。

 前々から、会いたかったんだと思う。

 でも、ベンデお爺ちゃんに負担をかけたくなかったから、言い出せなかったんだと思う。


「それじゃ、さっそく行こうか」

「まて、年寄りをせかすな」

「街までの距離もある。年寄りには準備がある」


 鉱石を運んでいたので、馬車が通れる道はある。でも、歩いて行くには距離がある。

 本人たちが言うとおりに年配者が多い。

 馬がいたそうだけど、半年前に魔物に襲われて今は一頭しかいないと教えてくれる。その一頭はバランさんが海に魚を捕りに行くときに使われているという。


「氷竜以外にも魔物がいるの?」

「たまにだが吹雪くときがある。そのときに魔物がここまで降りてくる」

「そのときに馬が襲われた」

「長いこと吹雪いていなかったから、警戒心が薄れていた」

「俺が、ちゃんと馬たちを鉱山の中に入れておけば」

「誰のせいでもない。何ヶ月も吹雪いていなかった。みんなが平和ボケをしていた」

「俺たちが、殺してしまったようなものだ」


 いつ、吹雪が起き、魔物が降りてくるか分からないので、夜は必ず、鉱山の坑道の中で寝ていると説明してくれる。


「ユナさん、皆さんをくまゆるちゃんとくまきゅうちゃんに乗せてあげることはできますか?」


 リーゼさんが申し訳なさそうに頼む。

 年配者は4名。

 わたしたちが歩けば乗れないことはない。

 でも、カガリさんは幼女だ。歩くとなると大変だ。

 まあ、カガリさんは空を飛べるから、いざとなれば誰よりも早く移動はできるけど。

 わたしは少し考え、クマバスを使うことにする。

 お風呂を作るためにクマハウスを作ったんだ。クマバスのほうが小さいから、それほど驚かれないはずだ。

 わたしはクマボックスからクマバスを出す。


「なんだこれは?」

「クマ?」

「魔法で作った乗り物だよ」

「乗り物?」

「馬車と思ってくれたら、いいよ」

「確かに、車輪がある」

「このクマが引くのか?」


 お爺ちゃんがくまゆるとくまきゅうを見る。


「わたしが魔力で、車輪を回すよ」


 少し驚かれるが魔法でお風呂を作ったわたしの言葉に納得した表情をする。

 和の国で、クマバスに乗っているカガリさんは一番初めに乗っていく。

 カガリさんが乗ってくれたことで、みなも安心した感じになる。


「みんなも乗って」

「ああ」


 わたしは運転席に座り、カガリさんが横に座り、他のみんなも座席に座る。

 くまゆるとくまきゅうは真ん中の通路にいてもらう。

 子熊化してもよかったけど、説明が面倒になりそうだったので、大きいままだ。


「それじゃ、少し揺れるかもしれないから気を付けてね」


 クマバスが動き出す。

 後ろから「おお」「動いた」と言う声が聞こえてくる。

 クマバスはゆるやかに動き、道を進んでいく。

 後ろに乗っているリーゼさんたちが騒ぐ。


「魔法でこんなこともできるのか?」

「魔力で車輪を動かしていると言っていた。魔力が多ければ可能だろう」

「魔法でお風呂も作って。本当に凄い嬢ちゃんだな」


 意外とみんな楽しそうにクマバスに乗りながら街にやってきた。


「どこから行く?」

「一番近いのは、俺の家か?」


 まずは、お爺ちゃんの一人。家族のところに行くことになった。

 わたしはお爺ちゃんの指示通りにクマバスを進ませ、一軒家にやってくる。


「ここだ」


 わたしはクマバスから降り、ドアの前に立つ。


「妾がやろう」


 わたしがドアの扉の氷を溶かそうとするとカガリさんが申し出てくれる。

 カガリさんはドアの氷を溶かす。

 お爺ちゃんは持っていた鍵でドアを開け、家の中に入っていく。わたしたちは外で待つ。

 しばらくすると、家の中からすすり泣く声が聞こえてくる。


「馬車で待とう」

「うん」


 泣いている声は聞かれてたくないだろうと察したカガリさんの言葉に、わたしは従う。

 しばらくすると、お爺ちゃんが戻ってくる。


「もう、よいのか?」


 カガリさんが優しく声をかける。


「ああ、妻に会えた。他のところもある。俺だけに時間を取らせるわけにはいかない。次に行こう」

「ドアを開けておけば、いつでも来れるんじゃ」


 お爺ちゃんはちゃんとドアを閉め、クマバスに戻ってきた。


「いや、吹雪いたときは街にも魔物が徘徊する。ドアが開いていたら、入ってくるかもしれぬ。妻になにかあれば、合わせる顔がない」


 次に来たら、壊されて粉々になっている可能性もある。

 そんなことが起きたら、悔やみきれないと思う。

 お爺ちゃんはもう一度、家を見てから「出発してくれ」と言う。

 わたしはお爺ちゃんの言葉に従い、次の家、魔法が使えるベンデお爺ちゃんの家に向かう。

 ベンデお爺ちゃんの家のドアの氷を溶かすと、わたしたちはクマバスで待つ。

 しばらく待っていると、ベンデお爺ちゃんも目を赤くして戻ってきた。

 次に向かったのは鉱山の管理人夫婦の息子さんの家。

 漁師であるバランさん以外に息子がもう一人いたと教えてくれる。

 ドアの氷を溶かし、管理人夫婦の2人と、バランさん夫婦が中に入っていく。


「ユナさんとカガリちゃんも一緒にどうぞ」


 クマバスに戻ろうとするわたしとカガリさんを止める。


「いいの?」

「はい、息子に会ってあげてください」


 家の中に入ると、抱き合うように凍っている人がいる。

 その中に10歳ぐらいの男の子がいる。


「息子です。あの日、両親に会いに行くので、兄に息子を預けていました」


 子供がいないと思っていたけど、ここにいたんだね。

 バランさんがここに残る理由はご両親だけでなく、子供がここで眠っているからかもしれない。

 わたしとカガリさんは凍っている家族に手を合わせると、家族だけにしてあげるため、家を出てクマバスに戻る。


「嬢ちゃんたち、ありがとうな」

「俺にもう少し魔力があれば、何度も連れてこれたんだが」


 クマバスに戻ってくると、お爺ちゃんの2人が話しかけてくる。


「ベンデ、なにを言っているんだ。前回、おまえが頑張って氷を溶かしてくれたことを、皆が知っている。どれだけ感謝しているか」

「そうです。あんなに苦しそうになるまで魔法を使ってくれました」


 リーゼさんはお爺ちゃんの言葉に同意する。

 わたしには分からないけど、魔力が少ない人が魔法を使うのは大変だと聞いたことがある。


「わたしたちは、ベンデさんに感謝していますよ」

「そう言ってくれると、助かる」


 ボラードさんにも言われて、ベンデお爺ちゃんは少し嬉しそうにする。

 生き残った中で、唯一魔法を使えることで、頑張ったんだと思う。

 そして、リーゼさんたちと話していると、バランさんたち4人が目を腫らして戻ってきた。

 わたしとカガリさんにお礼を言うと席に座る。

 じっくりと話すことができたみたいだ。会わせることができてよかった。

 わたしたちは最後にリーゼさんとボラードさんの家に向かう。


「やっぱり、この家だったんだね」


 わたしたちの前には、昨日侵入した大きな屋敷がある。


「わたしの家をご存知なんですか?」

「なんと言うか……この街の情報が欲しかったから、中に入らせてもらいました」


 わたしは素直に答える。


「そうなんですね」

「別に盗みに入ったわけじゃないよ。情報を手に入れるなら、大きな家がいいって、カガリさんが」

「お主、妾に責任をなすりつけるな」

「ふふ、別に疑っていませんよ」


 慌てるわたしとカガリさんが面白かったのかリーゼさんは笑う。


「でも、門が閉まっていますが、どうしましょうか」


 普通の家と違って、屋敷に向かうには高い門を越えないと中に入れない。


「門を壊せば、魔物が入ってくるかもしれぬからのう」

「前に来たときはどうしたの?」

「ハシゴを使いました。でも、今回は持って来るのを忘れてしまいました」


 リーゼさんは申し訳なさそうに言う。


「それじゃ、わたしがリーゼさんたちを抱いて、門を飛び越える?」


 ボラードさんが「できれば違う方法で」と言う。

 どうやら、わたしに抱き抱えられるのに抵抗があるみたいだ。

 わたしも、おじさんを抱き抱えるのは、少し抵抗がある。

 なので、素直に魔法で階段を作ることにした。

 わたしはクマバスから出ると、土魔法で山なりの階段を作る。

 ちゃんと手すりも付けて、安全対策もバッチリだ。


「くまゆる、くまきゅう、みんなをお願いね」

「「くぅ~ん」」


 クマバスに残る6人のことはくまゆるとくまきゅうに任せ、わたしたちは魔法で作った階段を使って、屋敷の門を越える。

前回お伝えしたとおりに、次回の水曜日はお休みにさせていただきます。くまなの


【お知らせ】

小説の更新日は日曜日、水曜日になります。

投稿ができない場合、あとがきなどに報告させていただきます。


アズメーカー様より、「アクリルキャラスタンド」「B2タペストリー」各2種、予約受付中です。 

プリロール様より、くまクマ熊ベアーぱーんちのクリスマスケーキ2023が予約受付中です。

絵柄などは活動報告にてあげさせていただきましたので、よろしくお願いします。


くまクマ熊ベアーぱーんちBlu-ray&DVD、全3巻発売日中です。

最終刊には029先生全巻収納BOXも付いてきますので、よろしくお願いします。


奥飛騨クマ牧場とのコラボが2023年12月31日まで期間延長決定しました。


【発売予定表】

【フィギュア】

フィナ、ねんどろいど 2024年1月31日予定 

KDcolle くまクマ熊ベアーぱーんち! ユナ 1/7スケール 2024年3月31日

グッドスマイルカンパニー、POP UP PARADE ユナ 発売中

【アニメ円盤】

1巻2023年7月26日発売

2巻2023年8月30日発売

3巻2023年9月27日発売

【書籍】

書籍20巻 2023年8月4日に発売しました。(次巻、20.5巻予定、作業中)

コミカライズ11巻 2023年12月1日発売予定。

コミカライズ外伝 1巻 2023年6月2日発売しました。

文庫版9巻 2023年12月1日発売予定。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 魔法の氷だったらワンチャン、スターウォーズ のカーボンフリージングみたいに解凍したら生き返る可能性を考えたがただの氷だったか、残念やね、ミリーラの街でも山賊による人死はあったけど、ユナが死体…
[一言] 凍りついた村人はもう助けられないのかな? それなら埋葬してあげることも考えるべきなんじゃ?
[一言] 「他にも必要な物があったら言って」 ん?なんでも? (頑張れば、なんとかなるかもしれないけど) 聞いてくれそうだ 「街までの距離もある。年寄りには準備がある」 おむつとか 年を取ると近くな…
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