759 クマさん、ピラミッドに行く
前話、ジェイドとハーレム男ブリッツを間違えてしまいました。
ウラガンをことを確認するために、軽く読み直していたのですが。
妖精の話でブリッツのことが頭に残っていたみたいです。
申し訳ありませんでした。
教えていただいたみなさん、ありがとうございます。
「シュリの言うとおりに、砂だらけです」
街の外を出たノアとミサが目の前に広がる砂漠を見ている。
ノアはしゃがみ込み、砂に触れる。
「熱いです」
ノアの言葉にミサ、それからシュリ、フィナも砂に触れる。
「火傷するから、気を付けてね」
前に砂に触ったけど、かなり熱かった。
「砂が、どこまでも続いています」
ノアたちは遠くを見る。
「それにしても、暑いです」
「ユナ姉ちゃん、マントないの?」
「マント?」
「涼しくなるマント」
「…………」
前回来たときは、ちゃんと準備していたのに、自分が暑さを感じないから、涼しくなるマントの必要性を忘れていた。
わたしはクマボックスから涼しくなるマントを取り出し、フィナたちに渡す。
「マントの中にある魔石に触れて」
フィナたちはマントを羽織ると、マントの中にある魔石に触れる。
「涼しくなりました」
「マントの中に魔力線が縫い込まれていて、水の魔石が冷やしてくれているんだよ」
これで街の外に出ても大丈夫だ。
「あと、喉が渇いたら、水分補給も忘れないでね」
わたしは冷えた水が入った水筒をみんなに渡す。
落ちついたノアたちは砂漠を見て、先ほどから遠くにあるものが気になっていたのか、尋ねてくる。
「一面、砂ですが、あそこにある三角の建物はシュリが言っていたものですか?」
ノアの視線の先にはピラミッドがある。
「大きいです」
「あれはなんですか? 誰か住んでいるのですか?」
「誰も住んでいないよ」
「先ほどのお話からすると、先ほど会った冒険者とあそこに行ったんですよね?」
「近くまで行ってみようか」
わたしはくまゆるとくまきゅうを召喚する。
くまゆるにはわたし、フィナ、シュリが乗り、くまきゅうにはノアとミサが乗る。
砂の中に小さいワームがいるかもしれないので、わたしは探知スキルで周囲の魔物を確認する。
少し反応こそあるが、離れた場所だ。近づいてくる様子もない。
くまゆるとくまきゅうは砂の上を走り、ピラミッドまでやってくる。
「大きいとは思っていましたが、近くにくると本当に大きいです」
「ユナさん、これはなんなんですか?」
「わたしも詳しいことは分からないけど、街ができる前からあったみたいだよ。だから、誰が作ったのか分からないみたい」
「そうなんですね」
「誰が、なんの目的のために作ったのでしょうか」
「えっと、ルイミンのお爺さんがいたでしょう」
「ムムルートさんですね」
「そのムムルートさんが、その昔、この建物の中に入って、最深部にまで行くと、湖を作る魔法陣やら魔道具があって、それを使って湖が作られたんだよ」
「あの鳥さんに乗った湖ですね」
「こんな砂だらけの場所に湖がある理由はそれだったんですね」
「湖ができたことによって、人が集まり、街ができたんだよ。その街を作ったのがムムルートさんの冒険者仲間だった人で、今は、その子孫たちが守っている感じだね」
「そんな経緯で、街が作られたのですね」
歴史とは、誰にも知られずに過ぎ去ることが多い。
普通の人にとって、街が作られた経緯は不要だ。今の暮らしに役に立たない。普通の人にとっては、現領主の人物のほうが大切だ。
「あそこが入り口ですね」
ピラミッドに入る入り口がある。
「中に入れるんですか?」
「入れるよ。でも、魔物がいるから入らないよ」
「魔物……」
「まあ、入り口は大丈夫だから行ってみようか」
わたしたちを乗せたくまゆるとくまきゅうはピラミッドの入り口に移動する。
「きゃ」
「ミサ、どうしたのですか?」
「あ、あそこに……」
ミサが指差す先にはオオトカゲ、ラガルートがいた。
「冒険者が乗ってきたラガルートだね。さっきも言ったけど、中に魔物がいるから、冒険者の狩場にもなっているんだよ」
「つまり、ユナさんはその魔物を倒すために、先ほどの冒険者さんたちと一緒に戦ったのですか?」
「少し違うけど、概ねそうかな」
ウラガンが一緒だったのはピラミッドの入り口までだ。中にはジェイドさんたちと一緒に入り、大きなスコルピオンとは、わたし1人で戦った。
「それじゃ、そろそろ戻ろうか」
ピラミッド見学を終えた、わたしたちは街に戻ってくる。
くまゆるとくまきゅうを送還して、街の中に入る。
「これから、どうしますか?」
「街の中を適当に歩きますか?」
「それとも、おすすめの場所でもありますか?」
実はピラミッド見学が終わったら、カリーナに会いに行こうかなと考えていた。そのことをノアたちに言おうと口にしようとしたとき、
「ユナさん!」
20歳前後の褐色の肌をした女性が声をかけてきた。わたしはその女性を見て驚く。
「ラサさん?」
「やっぱり、ユナさんでした」
ラサさんは嬉しそうに微笑む。
ラサさんはこの街の領主の家で働く、カリーナのメイドさんだ。
「ユナさん、いらっしゃったんですね」
「うん、この子たちと遊びにね」
わたしはフィナたちに目を向ける。
「フィナちゃんとシュリちゃんでしたね。また、会えて嬉しいです」
「ラサさん、お久しぶりです」
「うん」
フィナとシュリは挨拶をする。
「ユナさん、こちらの方は?」
ノアがラサさんを見ながらたずねてる。
「えっと、この街の知り合いの女の子がいるって言ったよね。その家で働いているメイドさんだよ」
「ラサと申します。ユナさんには街を救っていただきました」
「ノアールです。よろしくお願いします」
「ミサーナです」
「礼儀正しい子たちですね」
ラサさんはノアとミサの丁寧な挨拶に驚く。
二人は貴族の令嬢だ。挨拶一つ取っても違う。
「それで、どうしてラサさんが街の入り口に?」
ラサさんが働く屋敷は中央にあるから、ここから離れている。
「買い物をしていましたら、ウラガンさんにお会いして、ユナさんが街にいることを教えていただきました」
なるほど、情報はウラガン経由だったか。
「それで、ユナさんが歩いて行った方向をお聞きし、門番の人にユナさんが街の外に行ったことを教えていただき、戻ってくるのを待っていたのです。あとで、カリーナ様がユナさんが来たことを知って会えなかったら、悲しむと思いますので」
つまり、わたしを確保しに来たってことだね。
「ユナさん、このあとの予定は?」
ラサさん的には家に来てほしいってことだろう。
わたしはフィナたちを見る。
「ちょっと、カリーナに会いに行こうと思うけど、いい?」
フィナたちに確認する。
「はい、わたしは構いません」
「わたしもです」
「わたしもカリーナちゃんに会いたいので」
「わたしも!」
全員、問題がないようだ。
「みんなで行っても大丈夫?」
「問題ありません。ユナさんが来ないほうが問題です」
わたしたちはカリーナの屋敷に行くことになった。
ラサさんが先頭を歩き、わたしたちはその後ろを歩いて行く。
「ユナさん、カリーナさんって、どんな人なのですか?」
「この街の領主の娘さんだよ。もしかして会ったことがある?」
ノアとミサは貴族の令嬢だ。
王都で会ったことがあるかもしれない。
「いえ、お会いしたことはありません」
「父親のバーリマさんは?」
「お父様やお母様はあるかもしれませんが、わたしはありません」
「はい、わたしもです」
まあ、ノアとミサは基本、自分の街に暮らしている。カリーナもそうだ。特別な事がなければ会うことはない。
エレローラさんが仕事で会うぐらいかもしれない。
「カリーナは家族思いの優しい子だよ。あと、自分で抱え込むタイプだね」
一人で悩みを抱え込み、一人でどうにかしようとする責任感の強い女の子だ。
「ユナさんは、カリーナ様の後悔という心の中にあった気持ちを取り除いてくれました」
話を聞いていたラサさんが、わたしの説明の補足する感じで口を開く。
「大袈裟だよ」
「そんなことはありません。あのままではカリーナ様の心は押し潰され、取り返しのつかないことになっていたと思います。わたしたちにはどうすることもできなかったカリーナ様の心を、ユナさんが救ってくれたのです」
カリーナは自分のせいで、家に代々受け継がれてきた大切な水晶板をピラミッドの地下に落としてしまった。それが原因で、街の湖から水が徐々に減っていったと思っていた。
水晶板を落とした地下には簡単にいくことはできず、責任を感じていた。
「だから、わたしたちはユナさんに感謝しています」
「ユナさんは、わたしたちが知らないところでも、いろいろな人を助けていたんですね」
「和の国でもそうでした」
ノアたちが尊敬するような目で、わたしを見る。
そんな目で見ないで、たまたま、気まぐれだから。
わたしたちはカリーナの話をしながら、街の中央にある領主の家にやってくる。
次回、カリーナに会います。
申し訳ありません。
次回、お休みさせていただきます。
【お知らせ】
小説の更新日は日曜日、水曜日になります。
投稿ができない場合、あとがきなどに報告させていただきます。
奥飛騨クマ牧場とのコラボが2023年12月31日まで期間延長決定しました。
【発売予定表】
【フィギュア】
フィナ、ねんどろいど 2024年1月31日予定
KDcolle くまクマ熊ベアーぱーんち! ユナ 1/7スケール 2024年3月31日
グットスマイルカンパニー、POP UP PARADE ユナ 発売中
【アニメ円盤】
1巻2023年7月26日発売
2巻2023年8月30日発売
3巻2023年9月27日発売
【書籍】
書籍20巻 2023年8月4日に発売しました。
コミカライズ10巻 2023年5月2日発売しました。
コミカライズ外伝 1巻 2023年6月2日発売しました。
文庫版8巻 2023年6月2日発売しました。(9巻は準備中)
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。