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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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736 クマさん、ノアたちと街に入る

 わたしたちは街の入り口にやってくる。


「そういえば、わたしたちは街の中に入れるのでしょうか?」

「お金を支払えば大丈夫なのでは?」


 ノアとミサが街に入れるか心配する。

 一般的な和の国の服装と違い、さらに子供二人だったら怪しまれる。どこから来たのか、親がいないのか、いろいろと尋ねられると思う。

 街の中に普通に入れるか云々の問題ではないかもしれない。


「そうですね。お二人だけでしたら、怪しまれるかもしれませんが、今回はわたしたちがいますから大丈夫ですよ」


 サクラの言葉にノアとミサは安心する。

 まあ、怪しまれるのはノアとミサだけではない。わたしだって同様だ。なんと言ってもクマの格好だ。だから、和の国の国王は特別なカードをくれた。あのカードがあれば、怪しまれたとしても街の中に入ることができる。


 サクラとシノブを先頭に街の入り口に向かって歩き出す。


「サクラ様、それからシノブ殿、お戻りですか?」


 2人のことを知っている門番が丁重に迎える。

 流石に顔は知られているみたいだ。

 シノブなんて、何度も通るだろうし。


「はい、彼女たちも通りますが、問題はないですよね」


 サクラはカードを門番に見せる。

 門番はサクラが持つカードを見てから、わたしたちに目を向ける。


「お通りください」

 

 門番は何も聞かずに、わたしたちが通れるように体を横に移動させる。


「それでは、みなさん、行きましょう」


 サクラが門を通り、その後をシノブが通り、わたしたちも続く。


「サクラの言うとおりに通ることができました」

「サクラさんが見せたカードで、門番の人の顔色が変わりましたが、どうしてでしょうか?」

「そうですね。少し、驚いた感じでした」


 ノアとミサは門番の表情を見逃さなかったみたいだ。


「先ほど、門番に見せたカードは特別なカードになっていますので」

「特別なカードですか?」

「サクラ様の顔が知られていることもあるっすが、先ほどのカードを見せた場合、門番は、なにも問うことができないっすよ」

「なにも……」

「そんな凄いカードなんですね」

「ちなみにわたしも持っているっすよ」


 シノブは少し自慢するように言う。


「シノブは伯父様の指示で動くことがあるので、必要なんです」


 サクラがシノブがカードを持っている理由を説明する。


「サクラの伯父様……国王様」

「ただの雑用係っすよ」


 なんだろう。王都でも雑用係って言っている凄い人物をわたしは知っている。この世界では雑用係って言葉は偉い人の名称なのかもしれない。


 街の中に入ると、ノアとミサは周りをキョロキョロと見始める。それは、久しぶりに来たフィナとシュリも同様だ。


「見慣れない服装ばかりです」

「見たことがありません」

「ふふ、前に来たときのフィナとシュリみたいですね。やはり、服装が違うことに驚くんですね」

「わたしたちにとっては、見慣れた光景っすが」

「建物も違います」

「昨日泊まった家も違うとは思っていましたが」


 そんな2人の感想にサクラは微笑む。 


「それでは、移動はどうしましょうか。馬車の手配もできますが」

「歩きながら、ゆっくりと街を見たいです」

「わたしも」

「カガリ様は大丈夫ですか?」

「くまゆるに乗って移動したいところじゃが、しかたないのう」


 くまゆるとくまきゅうは送還してある。

 流石にくまゆるとくまきゅうを連れて、街の中に入れない。


「それじゃ歩いて行こうか。でも迷子になったら大変だから、離れちゃダメだからね」

「分かっています」

「はい」


 ノアとミサは返事をするが、今にも走り出しそうだ。

 ノアとミサにとっては珍しいものが多い。


「シュリもだよ」

「わたし、自分勝手に離れたりしないよ〜」


 少し、頬を膨らませる。


「ユナ様はフィナには言わないのですね」

「フィナは自分勝手に行動はしないからね」


 わたしの言葉に、フィナは嬉しそうにする。


「お主たち、いつまで喋っている。早く行くぞ」


 一番小さい、カガリさんが歩き出す。

 そのあとを、わたしたちが付いていく。


「あの大きな黒い建物が見えますが、なんでしょう?」

「来るときにも見えていましたが」


 ノアとミサの視線の先には、ひときわ大きな建物が見える。


「お城だよ」


 わたしが答える前に、シュリが答える。


「シュリは知っているのですか?」

「うん、ユナ姉ちゃんに教えてもらったから。それとあのお城に行ったから」

「行ったのですか?」

「うん。高くて、凄かったよ」

「シュリが行ったってことは、フィナも?」

「……はい」

「うぅ、ずるいです」

「羨ましいです」


 二人はお城を見つめる。


「それでは、伯父様にお願いをしてみましょうか?」

「いいのですか?」

「わたしたちはどこから来たか分からない者です。そんな人物がお城の中に……」

「大丈夫ですよ。だって、皆様はユナ様が連れてきた客人です。それに、わたしもカガリ様もいらっしゃいます」


 サクラがカガリさんを見る。


「口添えぐらいはしてやる」

「あ、ありがとうございます」

「ありがとうございます」


 ノアとミサはサクラとカガリさんにお礼を言う。


「ほれ、その前に食事をするんじゃろう。さっさと行くぞ」


 カガリさんは照れ隠しなのか、そっぽを向いて歩き始める。

 そんなカガリさんを追いかけるように、わたしたちも歩き始める。


「そうですね。まずは、食事をしましょう」

「シノブの奢りでね」


 昨日のかくれんぼで勝った。

 約束は守ってもらおう。


「経費で落ちるっすかね?」

「ふふ、足りないときは、わたしも出しますよ」

「冗談っす。サクラ様に出してもらうわけにはいかないっす」


 そして、やってきたのは前回、納豆を食べた店。ノアのリクエストでやってきた。


「ふふ、ここに納豆って、変な食べ物があるのですね」

「別に変なものじゃないっす。普通に、みんな食べるっす」


 ノアの好奇心が吉と出るか凶と出るか。

 シノブを先頭に、わたしたちは店の中に入る。


「シノブちゃん、いらっしゃい。それから、前に来た女の子たちも」

「よく覚えているっすね」

「一回しか来ていなくても、クマの格好した女の子のことは忘れないわよ」


 インパクトが強くて、覚えていたってことだね。

 つまり、わたしがクマの格好してなかったら、気付かないってことだ。


「それと、あのときの姉妹の子も」


 フィナとシュリのことも覚えていたみたいだ。


「それから、新しい女の子が二人。珍しい服を着ているわね。他の国から来たのかしら」

「そうっす」

「それから、サクラ様も」

「お久しぶりです」


 サクラも、この店に来たことがあるみたいだ。


「あなたは……。どこかで見たことがあるかしら?」


 女性がカガリさんを見ながら言う。


「気のせいじゃろう。ほれ、席に案内しないか」

「ええ……」


 女性は首を傾げながら、わたしたちを席に案内してくれる。もしかすると、大人のときにカガリさんは来たことがあるのかもしれない。


「それで、注文は何かしら」

「いつものでと言いたいところっすが、みんなに確認っす。本当に納豆を食べるっすか?」

「もちろんです」

「少し、怖いですが」

「わたしは今回は……」

「わたしもお姉ちゃんと一緒」


 ノアとミサは挑戦し、フィナとシュリは断る。


「わたしはいただきます」

「もちろん、妾も食べる」

「それじゃ、納豆なしを四つでお願いするっす」

「4つ?」

「わたしとユナも無しっす。ノアとミサが食べられなかったら、代わりに食べるっすから」


 すでにノアとミサが食べられない前提らしい。


「もし、二人が食べるなら、後で追加で注文すればいいっす」


 納豆二つは食べられなくはないけど。多いのは確かだ。


 そして、しばらくすると、料理が運ばれてくる。

 和の国の朝食らしい料理がテーブルに並ぶ。


「焼き魚、海苔、味噌汁、ご飯ですね」


 アンズの店にも出ているので、この辺りはノアも知っている。

 でも、一つだけ見慣れないものがある。


「この茶色っぽい色をした豆が、納豆ですか?」


 ノアがジッと納豆を見ている。


「はい。醤油を少しかけて、ネバネバが出るまで掻き回します」


 サクラがお手本を見せるように、納豆に醤油を入れるとおもむろに掻き回し始める。

 納豆はネバネバが出て、糸を引く。

 その光景にノアとミサは驚くように見ている。


「そして、ご飯の上に乗せて、食べます」


 サクラは納豆をご飯の上に乗せて、食べる。カガリさんもすでに納豆を掻き回している。

 サクラとカガリさんが食べる姿を見て、ノアとミサはお互いの顔を見て、小さく頷く。

 ノアとミサはサクラがしたように納豆に醤油を入れ、ゆっくりと掻き回す。


「本当に、ネバネバしてきました」

「まずは一口だけ、ご飯に乗せるといいよ」


 ノアとミサは納豆を少しだけご飯の上に乗せる。

 そして、ご飯と納豆を口に入れる。


「あまり、無理をなさらないくださいね」

「無理だったらわたしが食べてあげるから」


 ノアとミサは静かに口を動かす。


「思っていたよりも美味しいかもしれません」

「確かに、口の中に入った感触は、なんとも言えませんでしたが、食べられないほどではないです」


 あれ、思っていたよりも好評?


「無理はしないで大丈夫だよ」


 シノブやサクラに気を使って、お世辞を言っているのかもしれない。


「いえ、大丈夫です」


 そう言うと二人は食べ始める。

 どうやら、杞憂だったみたいだ。

 わたしとシノブは納豆を追加で頼み、美味しく朝食をいただいた。

 



アニメを見てくださった皆さん、ありがとうございます。

6月5日(月)は10話の放送日です。引き続きよろしくお願いします。


【お知らせ】

奥飛騨クマ牧場とのコラボが決定しました。

詳しいことは活動報告にてお願いします。


6月6日(火)21時~

クマアニメ公式Twitterより、スペース配信があります。

ユナ役 河瀬茉希 さん

ミサ役 天野聡美 さん

がでますので、よろしくお願いします。


キャラアニ様にてクマのBlu-ray、DVD購入者様に、ユナ役の河瀬茉希さんとフィナ役の和氣あず未さんの特製ミニ色紙のサイン会が行われます。詳しいことは活動報告にてお願いします。


小説の更新日は日曜日、水曜日になります。

投稿ができない場合、あとがきなどに報告させていただきます。


【発売予定表】

コミカライズ10巻 2023年5月2日発売しました。

コミカライズ外伝 1巻 2023年6月2日発売しました

文庫版8巻 2023年6月2日発売しました。



※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 納豆の話ということで、納豆の種類を調べていたら、 パウダー納豆とか粉末納豆とかあるんですね。 それより、書きたかったのは 北海道産に「くま納豆」がありました。
[一言] 納豆は刻みネギを入れれば臭みは緩和され、薬味として、納豆自体の甘味などが引き立ちます。 いろんな銘柄の納豆の味も分かりやすい。 自分としては、醤油のみの単体は考えられないです。 隠し味程度の…
[良い点] 新しい環境を体験するノアとミサにほっこり。 [気になる点] 納豆は食べれるが、好んでは食べない。 酢醤油で軽く混ぜるくらいかなぁ。ネバネバが得意ではないのですぐ熱めの味噌汁を飲んだり […
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