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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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735 クマさん、ノアたちと和の国の街に行く

 早朝、家の外に出る。


「どうやって、行きますか? くまゆる様とくまきゅう様もいますが」

「ハヤテマルもいるっすよ」


 ハヤテマルはシノブの馬の名前だ。

 街に向かうのはフィナ、シュリ、ノア、ミサ、サクラ、シノブ、それからわたしにカガリさんの8人。

 まさか、カガリさんまでついて来るとは思わなかった。

 カガリさん曰く、暇つぶしだそうだ。

 そして、移動手段はくまゆる、くまきゅう、ハヤテマル。

 3、3、2って感じで乗ろうと思えば、乗れる人数だ。


「くまゆる、妾を乗せるのじゃ」

「くぅ〜ん」

「えっと、わたしは」


 サクラがくまきゅうを見ている。

 もちろん、フィナやシュリ、ノアとミサもくまゆるとくまきゅうに乗りたそうにしている。

「「くぅ〜ん」」


 くまゆるとくまきゅうが「どうするの?」って表情で、わたしを見る。

 くまゆる、くまきゅう争奪戦が起きれば、みんなの仲が悪くなるかもしれない。

 それにハヤテマルもいる。シノブ以外乗りたがらなかったら、ハヤテマルが可哀想だ。

 ここは、争いが起きないように対処しないと、大変なことになる。

 わたしは考える。

 大人数の移動なら……。


「クマ馬車で移動するよ」

「クマ馬車ですか?」


 正確にはクマバスだけど、バスは通じないので、馬車としている。

 口で説明するより、見せたほうが早いので、クマボックスからクマ馬車もとい、クマバスを出す。


「なんじゃ、これは?」

「クマさんの顔をしています」

「大きいっす」


 クマバスを初めて見たカガリさん、サクラ、シノブの3人は驚いている。


「くまゆる様とくまきゅう様が引くのですか?」

「ふふ」


 サクラの言葉を聞いたノアが笑う。


「わたしと同じことを言っています。サクラ、違いますよ。ユナさんが動かすんです」

「ユナ様が?」

「詳しい説明は乗ってからするから」


 わたしは横にあるクマバスのドアを開ける。


「好きなところに座って。でも一番前はわたしの席だから、それ以外ね」


 一番前は運転席だから、座られると困る。


「ミサ、乗りますよ」

「はい」


 ノアがミサとクマバスに乗り込む。

 そして、後ろを振り返る。


「サクラも」

「は、はい」


 サクラもノアと一緒にクマバスに乗る。


「お姉ちゃん、わたしたちも」

「うん」


 フィナとシュリも続き、そのあとをカガリさん、シノブが続いてクマバスに乗り、わたしはくまゆるとくまきゅうを子熊化して、最後に乗り込む。

 クマバスに乗り、後ろの席を見るとノアたちが座っている。


「ノアが後ろなんて珍しいね」


 前回のときは、奪い合うようにわたしの隣に座っていた。


「後ろなら、みんなと一緒に座れますから」


 ノアが左右を見る。

 左からシュリ、フィナ、ノア、サクラ、ミサと座っている。

 カガリさんはクマバスの真ん中あたりに一人で座り、シノブはカガリさんとノアたちの真ん中にいる。

 護衛って立場上、その位置なのかな?


「それじゃ、動き出したら危ないから、立ったりしないでね」


 わたしは注意事項を伝えると、子熊化したくまゆるとくまきゅうと一緒に前の席に座る。

 そして、後ろを振り向き、全員がちゃんと座っているのを確認すると出発する。

 ゆっくりとクマバスは動き出す。


「おお、動いたっす」

「魔力で動かしているのか?」

「土魔法のゴーレムの応用だよ」

「なるほど。こんな使い方があったとはな」

「魔力で動かす考えなんて、誰でも思いつくと思うんだけど」


 魔力で車輪を動かすだけだ。

 簡単な指示なら、自動運転も可能だ。


「思いついても、活用はせぬ」

「どうして?」

「それは、魔力には限界があるからですよ」


 ノアが答える。


「その娘の言うとおりじゃ。もし、冒険者が同じ馬車を使うとしたら、魔力が多い魔法使いが動かすことになるじゃろう。でも、いざ、魔物が現れたとき、残りの魔力が少なかったり、魔法が使えないほど消耗しておれば戦いに参加することができぬ。それでは役に立たないのじゃ」


 確かに、戦うための魔力を移動のために使ってしまえば、魔物と戦うことはできない。


「その逆もあるっすよ」

「逆?」

「魔物との戦いで魔力を使って、魔力を消耗しすぎれば馬車を動かすことはできなくなるっす」

「魔力が回復するまで、移動ができないってことですね」


 サクラがシノブの説明に付け足す。

 わたしはクラーケンと戦ったときのことを思い出す。クラーケン討伐のとき、魔力を使い果たした。あのときにクマバスを動かせと言われても、できなかったと思う。

 馬なら、魔力が無くなったり、体力が無くても移動することはできる。


「だから、思いついても、やろうとは思わん」

「馬を使うのが現実的っすからね」


 わたしが他の人より魔力量が多いことは分かっていたけど、言われてみて納得だ。


「あとは魔石などで活用する方法があるが、どれほどの魔石が必要になるか分からない」

「コストに合うかどうかですね」


 カガリさんの言葉にノアが付け足す。


「お主、貴族の娘と言っておったが、頭が良いのう」

「えっと、ありがとうございます?」


 年下に見えるカガリさんに褒められて、ノアは返答に困る。


「実は、わたしの考えではないんです。前に、このクマ馬車に乗って旅行に行ったとき、お父様に話したんです。そのときにカガリさんと同じことをお父様に言われました。ただ、移動手段だけなら、有りとも言っていました」

「それには同意じゃな」


 カガリさんを中心にクマバスの討論が始まる。


「ですが、問題点が多いって言っていました」

「重量と距離じゃな」

「はい。重たければ、多く魔力を使います。距離が長ければ、それに比例して使う魔力量も増えます」

「ユナお姉さまは簡単にしていますが、簡単なことではないのですね」

「そうじゃな。普通の者にはできぬな」

「カガリ様でもですか?」

「他の者と比べれば可能じゃろう。まあ、妾には必要はないがな」


 まあ、カガリさん一人なら、空を飛ぶことができる。

 それを言ったら、わたしだって一人なら、くまゆるとくまきゅうがいるので、必要はない。

 あくまで、クマバスは大人数を早く移動させるためだ。


「それじゃ、少し速度を上げるよ」


 わたしはハンドルに魔力を込める。

 車輪の回転が速くなり、移動速度が上がる。


「速くなりました」

「馬車より速いです」

「魔力切れだけは起こすんじゃないぞ。もし止まっても妾は動かさんからの」

「大丈夫だよ」


 わたしは証明するために、さらに速度を上げる。

 ノアたちは喜びながら外を見ている。

 そんなクマバスは何事もなく進み、目的地が見えてくる。


「このまま行っても大丈夫かな?」


 街の入り口が見える。


「流石に騒ぎになると思いますので……」

「やめておいたほうがいいと思うっす」


 サクラとシノブの忠告を受けて、クマバスを止める。


「ここから、歩くの?」


 シュリが眠そうだ。

 フィナに手を引っ張られて、クマバスを降りる。

 ノアとミサも続く。


「カガリ様、起きてください」

「もう、着いたのか?」


 途中で眠ってしまったカガリさんはサクラに起こされる。


「はい。街まで少し距離がありますが、ここから歩いて行きますよ」


 サクラはクマバスで行くと驚かれる理由を説明する。


「なんじゃ、くまゆるとくまきゅうにも乗っていかぬのか?」

「クマ馬車も驚かれるのに、クマで近づけば、驚かれるでしょう」

「面倒じゃのう」


 カガリさんは渋々とクマ馬車から降りる。

 全員降りたのを確認すると、わたしはクマバスをクマボックスに仕舞う。

 そして、みんなで街に向けて歩き出す。


「ふふ、楽しみです」

「どんな街なんでしょうか?」


 ノアとミサは楽しみで仕方ないみたいだ。

 でも、サクラとシノブの反応は違う。


「その、楽しみにされているところ申し訳ありませんが、普通の街です」

「そうっす。なにもないっすよ」


 サクラとシノブが少し申し訳なさそうにする。

 でも、シュリが否定する。


「そんなことないよ。いろいろ珍しい物があって、楽しかったよ」

「はい。見たことないものがたくさんあって、ノア様とミサ様も楽しまれると思いますよ」

「でしたら、嬉しいです」


 ミリーラの町でクリフが言っていたけど、住んでいる人には、それが当たり前のことで、なにも変わらない景色や食べ物でも、他の場所から来た人にとっては魅力的である。


「美味しい食べ物もあるけど、臭い食べ物もあるよ」


 シュリが何気なく言った言葉にノアが反応する。


「臭い食べ物?」

「うん、ネバネバして、気持ち悪くて、臭いの」

「それって、納豆っすか?」


 ああ、そういえば、フィナとシュリと来た時に納豆を食べたね。


「あれは、美味しいっすよ」

「和の国以外では、食べないとお聞きしていますから」

「そのネバネバして、気持ち悪くて、臭いものを食べるのですか?」

「食べるっす。美味しいっす」

「わたしもそれには同意ですが、他の国から来た人には抵抗があるみたいです」

「これは、食べてみないと分からないですね」


 ノアがそんなことを言い出す。


「ノア様、やめたほうがいいかと」

「フィナも食べたことがあるのですか?」

「はい。その、なんともいえない不思議な味でした」

「そう言われると、挑戦したくなります」


 ノアは納豆を食べる気でいる。

 これは、残った納豆をわたしが食べる流れかな。

 まあ、納豆は嫌いじゃないからいいけど。


 そんな会話をしながら、街の入り口が近づいてくる。




申し訳ありません。少し、仕事があり、次回の水曜日の投稿は休みにさせていただきます。


5月29日(月)は9話の放送日です。引き続きよろしくお願いします。


5月26日(金)21時~

クマアニメ公式Twitterより、スペース配信がありました。

ユナ役 河瀬茉希さん

ノア役 日高里菜さん

公式サイトTwitterより、いつでも聞くことができますので、よろしくお願いします。


小説の更新日は日曜日、水曜日になります。

投稿ができない場合、あとがきなどに報告させていただきます。


【発売予定表】

コミカライズ外伝 1巻 2023年6月2日発売予定です。

文庫版8巻 2023年6月2日発売予定



※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせさせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 他の方の指摘にあるようにカガリはスライムの時に馬をバスに乗せて浮かせてくれましたね クマ馬車ではなくクマ車ではいけないのかな [一言] 納豆は納豆太巻きだと苦手な人も食べれるみたいだ…
[一言] クマバスをクマ馬車にか・・・。 便宜上はいいけど、馬がいなければ馬車とは呼べないはず・・・。
[良い点] サクラ達もクマバスを体験しましたが、本当にしばらくはこういうのんびりお出掛けする話で良いと思います [気になる点] 果たして納豆チャレンジでどんな反応が見られるのか楽しみですw 自分も小さ…
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