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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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716 クマさん、フィナに妖精を紹介する

 久しぶりに家でまったりしている。

 あれだけのことをしたのだから、わたしには休む権利がある。働き過ぎは良くない。過労で死んでしまう。わたしはのんびりしたい。まったりしたい。

 そんなわたしの気持ちに反して、わたしの前に二匹の虫が楽しそうに飛んでいる。


「ユナお姉ちゃん、妖精って綺麗だね」


 フィナが飛んでいる虫を見ながら言う。

 これは今から、少し時間を遡る。

 今日、フィナがウルフを解体しにやってきた。

 その間、わたしはくまゆるとくまきゅうとでまったりモードだ。

 今日はまったりすると決めたわたしはソファの上でだらけている。

 まったりと午前中を過ごしたわたしは、そろそろお昼になるので、フィナを休憩へと誘いに解体場にいく。


「フィナ、解体のほうはどう? そろそろお昼にしようと……」


 解体場に繋がるドアを開けながらフィナにかけた声が止まる。

 フィナの周りに大きな虫……でなく、プリメとローネが飛んでいた。

 もちろん、フィナにはプリメたちのことは見えない。


「ユナお姉ちゃん? うん、解体なら終わったところだよ」

「ユナ、この子、こんなに小さいのに魔物を解体しているわよ」

「それも、ものすごい速さで」


 プリメとローネはフィナの肩に乗る。

 もちろん、フィナは気づいていない。

 思わず頭を抱えてしまう。


「ユナお姉ちゃん、どうしたの?」


 フィナは肩に妖精が乗っていることに気付いていないので、わたしが頭を抱える理由は分からない。


「フィナ、大丈夫? なにもされていない?」

「…………?」

「失礼ね。なにもしてないわよ」


 フィナの肩に乗っているプリメが文句を言う。

 その言葉が信用できないから困る。

 わたしは少し考え、今後のこともあるし、フィナにはプリメたちのことを紹介することにした。


「プリメ、ローネ。この子に見えるようにして」

「いいの?」

「この子は大丈夫。わたしの秘密も知っているし、信用ができるから」

「ふ〜ん、そうなのね」


 プリメとローネはフィナの肩から飛び立ち、フィナの周りを飛び回る。


「ユナお姉ちゃん?どこを見て、誰と話しているの?」

 それはそうだ。いきなり部屋に入ってきて、「プリメ」とか「ローネ」とか声を上げて、1人で話し始めれば意味が分からないと思う。


「ユナお姉ちゃん。もしかして、幽霊が……?お父さんに聞きました。ユナお姉ちゃんが冒険者ギルドの依頼で、幽霊が出るお屋敷に行ったって……」


 見る見るフィナの顔が青ざめていく。

 そして、わたしから一歩後ろにあとずさる。


「失礼ね。幽霊じゃないわよ」

「えっ」


 どこからとなく聞こえてくる声に、キョロキョロと周りを見回し始める。

 自分の肩にプリメが乗っているけど、見えていない。

 まるで、コントみたいだ。

 でも、フィナ本人は真剣に怖がっている。


「……ユナお姉ちゃん?」

「プリメ、ローネ。そこじゃ見えないから、こっちに来て」


 わたしがそういうと、プリメとローネはわたしのほうに飛んでくる。

 すると、怖がっていたフィナの表情が驚きの表情に変わる。


「……ユ、ユナお姉ちゃん!?」


 フィナがプリメとローネに指を向ける。

 驚きのあまりに、その指先が揺れている。


「紹介するね。妖精のプリメとローネ。二人は姉妹で、こっちが妹のプリメで、こっちが姉のローネ」


 それぞれを紹介する。


「よ、妖精!?」

「この子はフィナ。わたしの秘密を知っている数少ない子だよ」

「フィナね。わたしはプリメ。よろしくね」

「ローネよ」


 フィナは口をアウアウさせて、わたしとプリメを交互に見ている。


「この子、喋れないの?」


 プリメはくるくるとフィナの周りを飛ぶ。


「二人に驚いているだけだよ。フィナ、大丈夫?」


 わたしの言葉にフィナは我に返る。


「ユナお姉ちゃん! 妖精! 妖精だよ!」


 驚いた表情で目が輝き始める。


「うん、妖精だよ」

「どうして、ここに妖精が?」


 段々と興奮し始める。そんなフィナを落ちつかせる。


「驚くのは分かるけど、落ちついて」


 そんなわたしとフィナの気持ちに関係なくプリメとローネはフィナの周りを飛び始める。


 解体も終わっているとのことなので、プリメたちのことを話すためにフィナたちを連れて場所を移動する。

 くまゆるとくまきゅうがソファで寝ている部屋に戻ってくると、プリメはくまゆるの背中にダイブして、寝そべる。


「この子たちの上は最高ね」

「それには同意ね」


 ローネもゆっくりとくまきゅうの背中に降りて、感触を楽しんでいる。

 まあ、くまゆるとくまきゅうの抱き心地がいいのは、わたしも同意だけど。

 プリメとローネはくまゆるとくまきゅうの上でまったりし始める。

 くまゆるとくまきゅうは起きるが、振り落とすことはしない。


 そして、部屋を移動したことで、少し落ちついたフィナにあらためてプリメとローネのことを紹介し、どうしてこの家に妖精がいるのか、簡単に説明する。


「あの幽霊屋敷の正体は妖精で、それでノア様と……。だから、この数日間いなかったんだね」

「このことは秘密だからね」

「はい」


 フィナは頷いてからプリメとローネのほうを見る。


「プリメさん、ローネさん、よろしくお願いします」

「よろしくね」

「ええ、よろしく」


 無事に紹介が終わる。

 プリメとローネは部屋を飛び始める。


「ユナお姉ちゃん、妖精って綺麗だね」


 わたしたちの周りを飛び回るプリメたちを見ながら言う。

 綺麗だけど、うるさいのが難点だ。

 今日はまったりするつもりだったから、静かにしてほしいところだ。


「フィナだったわね。あなた見る目があるわね。でも、あなたも可愛いわよ」

「あ、ありがとうございます?」


 妖精に可愛いと言われて、戸惑うフィナ。


「でも、妖精って本当にいたんだね」


 初めて見る妖精にフィナは不思議そうに見ている。

 存在こそは確認されているが、一般的に妖精はおとぎ話のような存在だ。


「わたしたちと相性がよくないと見ることはできないからね」

「ユナお姉ちゃんとノア様はプリメさんとローネさんを見ることができるんですよね?」

「わたしはユナと相性がいいのよ」

「わたしはノアとリヤンよ。ユナは特別な人間みたいだから、誰でも見えるんじゃないかしら?」

「うぅ、お姉ちゃん、意地悪だ」


 プリメはわたしとだけだけど、ローネはノアとリヤンさんと相性がよく、見ることができる。

 さらにはローネの言うとおりに、妖精、全員を見ることができる可能性が高い。だから、プリメと相性が良いってわけではないのかもしれない。

 もっとも、そこは未確認だから、プリメとローネしか見えないという、奇跡的な可能性もあるけど。

 それから、一つ分かったことがある。

 クマ装備をしてなくても、プリメとローネが見えたことだ。

 お風呂に入っているとき、プリメとローネを見ることができた。てっきり、クマの加護のせいで見えるものだと思っていたが、わたしの予想は外れた。

 それとも、わたしが異世界人だからなのかな。

 考えても答えが出ないので、これ以上は考えないことにしている。


「それで、プリメたちは何しに来たの?」

「なによ。用事がないと来たらいけないの?」

「悪くはないけど」


 つい先日、別れたばかりだ。

 今日のまったりの予定が台無しだ。


「ユナ、ごめんなさい。この子、遊びに行くって言い出して……」

「お姉ちゃんだって、行きたいって言っていたでしょう」

「そうだけど……」


 姉妹喧嘩が始まる。

 確かに妖精は綺麗だけど、静かにしてほしいものだ。

 あのときは、お互いに大切に思い合い、姉妹愛を感じたのに、いま目の前で繰り広げられているのは、なんてことのない普通の姉妹喧嘩だ。


「妖精の森とこっちを頻繁に行き来していいの? 女王様に怒られないの?」

「大丈夫よ。女王様からは許可はもらっているし」


 あの女王様が許可を出したなら、わたしから言うことはない。

 ローネがノアに会えるように自由に行き来しても良い許可は出している。


「別に遊びに来るのはいいけど。絶対に他の人には見られちゃダメだからね」


 街で見られでもしたら大変だ。住民全員で妖精捜しが始まるかもしれない。

 そのうちに他の妖精たちも来そうで怖い。

 だから、プリメたちにはしっかりと釘をさしておく。


「それから、他の妖精を連れて来ちゃダメだからね」

「ダメなの?」

「逆にわたしがダメじゃない理由を聞きたいよ。他の妖精を連れて来て、女王様が怒らないの?」

「自分たちの行動は自分の責任だから。でも、みんな女王様が好きだから、ダメと言ったら来ないと思う」

「逆にいえば、女王様が許可を出したら、来るってことだね」


 今度、女王様に会うことがあったら、他の妖精が来ないようにお願いをしておこう。

 こちらに妖精が来ても、普通は妖精を見ることができない。

 ただ、わたしが魔力を全員に与えたら、全員が見えそうで、それが怖い。


「ユナお姉ちゃん。妖精さん、たくさんいるの?」

「妖精が住む森があるんだよ。そこにはたくさんの妖精がいるよ」

「妖精さんの森。そんな夢のような場所があるんだね」


 フィナはプリメとローネを見ながら、想像を膨らませている。


「そうだ。ユナ。鏡の場所を変えて。あの場所だと出ることができないよ」


 妖精の鏡はクマの転移門の場所に置いてある。

 まあ、倉庫みたいな場所だ。ドアを閉めるとプリメたちは部屋を行き来できない。もちろん、外にでることもできない。

 鏡はこの居間の壁に掛けられた。

 外に自由に出入りしたいというプリメの我儘を聞き、プチリフォームすることになった。

 まあ、リフォームと言ってもプリメたちが移動できる小窓を作って、外へ出ることができるようにしてあげただけだ。

 でも、その小窓を見て、プリメとローネは嬉しそうにしていた。

 流石に、妖精でも壁のすり抜けはできないみたいだ。



 フィナとプリメとの遭遇でした。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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― 新着の感想 ―
信用できるし、私の秘密を知っているから。 おまけに守秘義務契約の呪い付きだよ(笑)
[一言] 冒険者ギルドに案件の結果報告に行く話も読みたかった 感謝されたのかな なんと説明したのか
[良い点] 妖精の再登場、早いなww
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