表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

728/940

705 クマさん、ベルングと戦う その3

「どうやったら、戻るの!?」


 ベルングの攻撃を躱しながら尋ねる。

 今のベルングは正気ではない。本能のままローネを奪う者を敵と認識している。プリメのことは頭から消え去っている。だから、手加減が消えた。


「こうなったベルングは魔力が尽きるまで止まらない。今は住民、リヤン、わたしを通して魔力が流れているの」


 ローネは胸を押さえて、苦しそうに答える。


「それじゃ、前の時はどうしたの?」

「あのときはリヤンが自分の魔力を止めて、ベルングを止めたの」


 そのリヤンは地下で寝ている。リヤンに頼むことはできない。


「ローネは止めることはできないの?」


 リヤンができるなら、その中間にいるローネにも止められる可能性はある。


「ごめんなさい。昔はできたけど、今は無理やりに魔力を奪われているから」


 あの体の魔法陣か。

 ベルングの体には魔法陣が描かれ、魔石まで埋め込まれていた。

 あの魔法陣には、魔力の強化、魔力を奪うと、いろいろあるみたいだ。


「だから、この街の人間の魔力が無くならない限り、止まらないの」


 住民の魔力が無くなるまで……。


「今も住民の魔力が奪われ続けているってこと?」


 それって、かなりまずいんじゃ。

 クラーケンを討伐するときに魔力を使い切った時は倒れた。

 和の国でサクラやルイミンが大蛇の封印を強化するために魔力を使った。2人とも意識を失って倒れる寸前だった。

 もし、意識を失った後も奪い続けられることがあれば……。

 想像もしたくない。


 ベルングが手をかざすと竜巻が起こり、周囲を巻き込みながらわたしに向かってくる。

 わたしは同様に竜巻を作り上げる。竜巻がぶつかり合い、草、石などが舞い上がる。

 地面が盛り上がったと思った瞬間、地面から無数の槍が飛びだし、わたしを襲う。

 右に躱し、そのまま走る。

 風の刃を飛ばすが、ベルングも同じような風の刃を飛ばして、相殺される。

 想定済み。

 わたしは相殺された風の中を突っ込む。

 手には電撃を纏っている。

 今度は痺れる程度じゃない。

 当たれば、死ぬかも知れない。

 でも、ここでベルングを止めないといけない。

 ベルングは逃げるように後方に下がる。

 未知の魔法、電撃魔法が怖いのか、ベルングは近寄らない。

 でも、クマ装備があるわたしは、逃げるベルングを追う。どんどん距離が縮まっていく。

 間合いに入る。

 ベルングの持つミスリルの剣とクマさんパペットがぶつかり合う。


「なんだ。その手袋は……」


 わたしに問い掛けたものじゃない。ベルングが独り言のように言う。だから、わたしも答えない。今のベルングの目には、わたしを生かして、プリメを研究する思考はない。

 ただ、目の前にいる邪魔者を排除しようとしている。

 ミスリルの剣が襲いかかってくる。

 わたしは地面からクマを出現させるがクマは斬られる。

 ミスリルの剣が光っている。

 魔法特化のミスリルの剣!?

 ベルングがクマを斬ったまま、わたしに襲いかかってくる。

 わたしはミスリルナイフを出し、ベルングの剣を受け流す。それによって、ベルングがバランスを崩す。わたしは足の裏でベルングを蹴り飛ばす。

 ベルングは吹っ飛び、地面を転がっていく。


「ふぅ」


 呼吸する間もなかった。

 手加減して戦っていたツケが回ってきた。

 そのせいで、ローネが苦しみ、街の住民たちも苦しんでいる。

 わたしの責任だ。

 でも、初めから本気で戦っていたとしても、同じ状況になっていただけかもしれない。 

 ベルングが立ち上がる。

 あの程度の蹴りじゃ、ダメか。

 全てが強化されている。

 ノアを帰らせて正解だった。

 危険なのもそうだけど、人と人が殺し合う戦いをノアには見せられなかった。

 やるしかない。

 わたしが自分で決めたことだ。

 プリメを助ける気持ちは変わらない。

 ただ、悪人とはいえ、人を殺すことになるかもしれない。


「ふぅ」


 息を整え、深呼吸すると踏み出す。

 ベルングは火の魔法を使い、周囲に炎の渦を作りだして、わたしを近づかせない。炎は周囲を燃やす。木々が燃える。

 わたしは水流を作り、炎の渦を消すと足に力を入れ、踏み込む。クマさんパペットに電撃を纏わりつかせてある。

 でも、ベルングはミスリルの剣と魔法を使って、わたしを近づかせない。

 ベルングの炎の魔法が横から襲いかかってくる。

 クマの土壁を作り、炎から身を守る。

 近寄れない。

 なにも考えなくなったベルングは強い。


「ベアーカッター」


 3本の風の刃がベルングを襲う。

 ベルングのミスリルの剣が光り、振り下ろすと、クマの風の刃が切れる。切られたクマの風の刃はベルングの後ろに抜けていく。

 クマの風魔法を切った。

 クマの土を消すことができることを考えれば、不思議ではない。

 でも、クマ魔法に対抗するのに、どれだけの魔力を使っているの?

 わたしが強力な攻撃をすればするほど、住民の魔力が使われることになる。



※ローザ視点※


「ここまでだな」


 ブリッツが男に剣を向ける。

 男は剣を落とし、腕から血を流し、うずくまっている。


「いてぇ、いてぇよ」


 初めは粋がっていたけど、ブリッツに剣で負け、周りに助けを求めたが、わたしたちが、そんなことをさせるわけもない。他の騎士たちも、男同様に地面に倒れている。

 騎士たちは強かったが、自分よがりの戦いばかりで、連携は皆無だった。一人一人襲い掛かってくるだけなら、強くても対処のしようはある。


「動けば、血が流れて死ぬから動かないことだ」

「ふざけるな。俺が負けるなんて」

「力はあるが、動きは平凡だ。妖精の力に頼って、鍛錬を怠ったのが原因だ。いくら力があっても、技術がなければ、戦いに負ける。力だけで戦うのは魔物と同じ。いや、生きるために考えている魔物もいるから、お前たちはそれ以下だ」


 魔物だって、考えて戦う。

 死に物狂いで襲いかかってくる魔物もいる。

 少し、剣で切られたからといって、戦うのをやめたりしない。

 この騎士たちは戦う心構えができていない。

 それも、妖精の力を得たせいもあるのかも知れない。


 ブリッツが倒れている騎士たちを縛るように指示を出す。わたしとランは土魔法で騎士たちを縛り上げる。


「ブリッツ、これからどうする?」


 わたしたちの受け持ちは2箇所。

 その2箇所の破壊は終わった。

 もし、他が手こずっているようだったら、そちらに向かうことになっているが、上を見ると、他の場所も煙が出ている。

 順調に進んでいる。


「ユナのところに行く。他の場所はギルマスたちに任せれば大丈夫だろう」

「そうね」


 今回のことが知られているなら、現状で一番危険なのはお屋敷に向かったユナちゃんたちだ。

 ユナちゃんが強いことは知っているけど、ノアちゃんとプリメちゃんが一緒だ。守りながら戦うことになれば、いくらユナちゃんでも危ないかもしれない。

 ランとグリモスからも反対は出なかったので、お屋敷に向かおうとした瞬間、体から何かが吸い取られる感覚に襲われる。

 体から力が抜け、膝を突く。


「なんだ」


 わたしだけではなく、みんなも膝を突いている。


「魔力が奪われている?」

「どうして? 魔力を奪う装置は壊したはずでしょう」


 わたしとランは魔力量が多いので、違和感を感じるのも大きかった。


「でも、これは体から魔力が消えていっているわ」


 大きな魔法を使ったあとの感覚。

 言葉にするのは難しいが、魔力が減った感覚だけが残る。


「おい、どういうことだ。魔力を奪う装置はここだけじゃなかったのか」


 ブリッツは立ち上がり、縛られている騎士に尋ねるが、騎士たちも苦しんでいる。


「知らねえよ。ただ、領主様が1人で出かけることがあったから、他にも魔力を奪うものがあったんだろう。俺たちもその場所は知らねえ。つまり、俺たちも信用されていなかったってことだ」


 男は苦しみながらも答える。

 わたしたちがやったことは無駄だったってこと?


「でも、どうして、あなたたちまで魔力を奪われているの?」

「魔力が奪われない場所は、屋敷のある敷地内だけだ」


 だから、魔力が奪われるのは夜中だったわけだ。

 屋敷にいれば魔力を奪われることはない。


「でも、どうして、今、魔力を奪われるの?」

「考えられるのは、ユナだろう。その領主、もしくは屋敷にいる騎士に力を与えるために魔力が必要になったのかもしれない」


 つまり、ユナちゃんが一人で戦っているってことだ


「みんなは動けるか?」

「どうにか動けるけど」


 わたしは立ち上がる。


「わたしも大丈夫」


 グリモスも答える。


「動けるけど、戦うことはできないと思う」


 ランが自分の体内にある魔力を調べる。

 わたしも魔力を確認するが、かなり持っていかれている。


「なら、俺一人で向かう」

「まさか、一人で行くつもりなの?」

「魔法が使えない二人を置いていくわけにはいかない。だから、グリモスは二人を頼む」


 ブリッツの指示の理由に納得したようでグリモスは頷く。

 でも、ブリッツ一人に行かすのも心配だし、ユナちゃんのことも気になる。


「わたしも行くわ」

「だが、お前は」

「魔石があるから、少しなら戦えるわ」


 魔石は少しなら魔法を補佐してくれる。


「だから、足手まといにはならないわ。それに屋敷の敷地内に入れば、魔力を奪われることもないし」

「……分かった。だが、危険と察したら、逃げる約束だけはしてくれ」

「わかったわ」


 ブリッツとわたしがお屋敷に行くことになった。


「ローザ!」


 ランがわたしの名前を呼ぶと、小袋を投げ寄越す。

 わたしは小袋を受け取って中を見る。


「これは?」


 小袋の中には魔石が入っていた。


「わたしは残るから、持っていって」

「ありがとう」


 ありがたく受け取る。


「2人は、ギルドマスターたちと合流してくれ」

「分かった」


 わたしたちは二手に分かれて、移動を開始する。



ブリッツたちのほうも決着。ユナのところに向かいます。


【お知らせ】

活動報告にて、書籍19巻、店舗購入特典のお知らせを書かせていただきました。

もし、お近くのお店がありましたら、よろしくお願いします。


【告知】書籍19巻の発売日は10/7となっています。(活動報告にカバーイラスト公開中です)

【告知】コミカラズ9巻の発売日11/4となっています。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とりあえずここでユナのせいにしてるヤツは異常者の自覚をした方が良い 最初から選択肢の中に人殺しがある日本人設定の主人公とか嫌すぎる
[一言] 19巻待ちかねましたぞ、楽しみです
[気になる点] ユナが手を汚す覚悟出来ないせいで、簡単に終わらせられる勝負が無駄に長引いてるなぁ これまではそこをクレフや国王が引き受けてくれてたから問題が表面化しなかったけど、冒険者としては悪人や早…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ