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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける

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720/939

697 クマさん、ローネに会う

 騎士をクマの檻に閉じ込めたわたしはお屋敷に向かうが、窓から見られる可能性があるので側面に回る。


「ユナさん、壁が高いです」


 当たり前だけど、侵入防止のため、屋敷の周りは高い塀で囲まれている。魔法で階段を作ってもいいけど、降りるときに反対側にも作らないといけない。

 なので、


「ノア、ちょっとおいで」

「なんですか?」


 近づいてくるノアを抱き抱える。

 お姫様抱っこだ。


「ユ、ユナさん!?」

「静かに」


 わたしの行動にノアが声をあげるので注意する。


「……」


 ノアは手で口を押さえる。


「それじゃ、塀を飛び越えるから、しっかり口を閉じていて」


 舌を噛んだら大変だから、注意はしておく。

 わたしは、探知スキルで近くに人がいないことを確認すると、ジャンプして塀を飛び越える。そのあとをくまゆる、くまきゅうも跳び越え、プリメは飛んでくる。


「ユナさん、いきなり、抱き抱えないでください。驚きます」


 ノアを地面に下ろすと小声で文句を言われる。


「それに、いきなり飛び上がって塀を越えるなんて、心の準備が」


 バンジージャンプに似たようなものかもしれない。

 でも、ノアの気持ちを待っていたら、いつまでたっても塀の中に入れなかったと思う。


「次は言ってから跳ぶよ」


 ノアの抗議は聞き流し、探知スキルを使いながら、人がいない方へ歩き出す。

 ノアはなにか言いたそうにしていたが、黙ってついてくる。


「ノア、騎士があと何人いるか分かる?」


 わたしの探知スキルでは、人の人数は分かっても、騎士と一般人の区別は表示されない。わたしが尋ねると、ノアは目を閉じる。


「散らばっていますが、5人ほど繋がりを感じます」

「ローネの反応って分かる?」

「はい。ここまで近づいてくると分かります。1つだけ強い繋がりを感じます」


 ノアはローネがいる方向を指さす。


「お姉ちゃんが、この先に」


 プリメは飛び出そうとする気持ちを抑えている。プリメには勝手に行動しないことを言い聞かせている。その代わりに必ずローネに会わせる約束をした。

 わたしは探知スキルで人がいないことを確認すると、裏口のような場所からお屋敷の中に侵入する。

 探知スキルのおかげで、人がどこにいるか分かるので、通路も、曲がり角も、安心して進むことができる。


「ユナさん、そんなにどんどん進んで大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよ。人がいないからね。でも、わたしが止まるように言ったり、静かにするように言ったら、指示に従ってね」


 ノアはコクリと頷く。

 わたしたちはノアが示すローネの居場所にゆっくりと進む。わたしとノアの力を使えば、ローネを簡単に見つけられそうだ。


「この部屋の中に人がいるから、静かに通るよ」


 ノアとプリメは頷く。くまゆるとくまきゅうも小さく「くぅ」と鳴く。

 探知スキルで、この部屋の中に人がいることが分かる。ノアが繋がりはないと言うので、ここで働く使用人なのかもしれない。

 そんな感じでお屋敷の中を順調に進んでいく。


「どう、ローネは?」

「近くから感じます。もう少し先です。でも、近くにもう一つの反応を感じます。多分、弱いので騎士だと思います」


 確かに、人の反応がある。

 しかもこちらに向かって移動している。このまま進めば、騎士に見つかることになる。

 回り道しようにもお屋敷の中だ。簡単にできることじゃない。

 漫画みたいに、背後に回って首をトンと叩いて、気絶させることができればいいけど。あいにく、そんな技術は持ち合わせていない。

 そもそも、あれって本当にできるものなのかな?

 どこかに隠れる場所を探していると、子熊化したくまゆるが小さく鳴く。探知スキルで確認すると、後ろからわたしたちがいる方へやってくる反応がある。


「くまゆるちゃんは、どうかしたのですか?」

「後ろから、誰かがやってくる」


 わたしの言葉にノアはすぐに目を閉じる。


「わたしには分かりません」


 ノアが分からないってことは騎士ではない。使用人?

 このままじゃ、挟まれる。

 わたしは廊下を見渡す。

 目の前にドアがある。

 わたしはドアの前に移動して、ドアノブを回す。鍵はかかっていない。

 わたしはノアたちを連れて部屋の中に入る。

 そして、ドアに耳をあてる。


「ドリト!」

「レナか」

「さっき、騎士たちが出ていったけど、何かあったの?」


 ドアの前で男性と女性が話し始める。

 話していないで、さっさとどこかに行ってよ。


「なんだ、知らないのか。街から煙が上がった。それで数人の騎士が出ていった」

「ドリトは?」

「騎士全員が屋敷からいなくなるわけにはいかないだろう。領主様は、街の人から嫌われているから、何が起きるか分からない」

「そうね。旦那様が亡くなり、息子のベルング様が王都から戻ってきたと思ったら、妖精の研究をし始め、ローネ様が現れてからは、人がお変わりになったわ」

「ああ、住民の中には妖精のせいで狂った領主を恨んでいる者もいる」

「昔は幸せを運んでくる妖精とか言われていたけど、幸せになっているのは領主様と、力を与えられたあなたたち騎士ぐらいね」

「だからと言って、この力が永続的に続くわけじゃない。ローネ様から継続的に与えられなければ、その力も失う。その程度の力だ。でも、その力に心酔する騎士もいる」

「あなたは?」

「初めは喜んださ。でも、その力を振るう相手が、街の住民。あとは近場の魔物ぐらいだ。王都にいる強い騎士や、強い魔物と戦うことができれば、楽しんだかもな。それでも、こんな俺に力を与えてくれたローネ様に報いるためお守りするさ」

「そのローネ様は?」

「知らない。滅多にお見かけはしないからな。まあ、ローネ様なら、姿を見えなくすることもできるから、何かあっても大丈夫だろう」

「そうね。このお屋敷に侵入する人もいないだろうしね」


 足音がして声が徐々に遠くなる。探知スキルでも離れていくのを確認する。

 まさか、ここに侵入している人がいるとは思わないよね。


「何が力を与えてくれたお姉ちゃんに報いるためよ。自分の力じゃないのに」


 プリメが騎士の言葉に文句を言っているが、その言葉は、わたしにも突き刺さるからやめて。

 わたしも神様からもらったクマ装備のおかげで強くなった。もし、その神様が襲われでもしたら、わたしはどうするんだろう。神様のために戦うのだろうか。このクマ装備の力が人から奪ったもので成り立っていたら、わたしはクマ装備を捨てることができるのだろうか。くまゆるとくまきゅうと別れることになったら、別れることはできるのだろうか。


「ユナさん、どうかしたのですか?」

「なんでもないよ」


 自分と騎士を重ねてしまったが、今のわたしには答えを出すことはできない。

 今はローネに会うことだけを考える。


「それじゃローネのところに行こうか。場所は分かる?」

「はい。確認済みです」


 わたしたちは部屋から出ると、改めてローネの場所に向かう。


「この扉の先から感じます」


 目の前には鉄の扉がある。

 扉は固く閉じられている。でも、何か不自然に妖精が通れるほどの穴が上の方に開けられている。


「この先にお姉ちゃんが」

「プリメ!」


 扉の先にローネがいると知って、プリメは鉄の扉にあった穴から扉の先に行ってしまう。


「ユナさん、どうしますか?」

「そんなの後を追いかけるに決まっているよ」


 鍵があると思う扉と壁の隙間にミニベアーカッターを使い、接合部分を切る。

 扉は開く。


「行くよ」

「はい」


 わたしたちは扉を開けプリメを追いかける。

 鉄の扉の先は階段があり、地下に続いていた。

 どこかに明かりがあると思うけど、わたしは魔法で光を作り、階段を下りていく。


「お姉ちゃん!」


 プリメの叫び声がする。

 わたしとノア、くまゆる、くまきゅうは階段を駆け下りていく。


「お姉ちゃん、帰ろう」

「プリメ、どうして来たの。わたしのことは忘れて、あなただけで帰りなさいって言ったでしょう」

「そんなことできないよ!」


 階段を下りると、広い部屋に出る。

 その部屋の中心にプリメとローネがいた。


「あの妖精がプリメさんのお姉さんのローネさん……」


 ローネが宿屋に来たときノアは寝ていたので、ローネを見るのは初めてだ。


「人間も一緒に連れてきたのね」


 ローネがわたしたちに気づく。


「どうして、あんな人間のためにお姉ちゃんが……もう、悪いことはしないで! そんなの、わたしが知っているお姉ちゃんじゃないよ」

「ごめん。彼を捨てて、離れることはできないの」


 ローネはそう言って、何かの上に降り立つ。


「ユナさん、誰かが寝ています」


 ノアの言う通りに、祭壇? ベッド? のような場所に人が寝かされている。

 ローネはそのベッドのような場所で寝ている人に寄り添う。

 わたしたちは近づく。

 男が寝ている。

 領主?

 どうして、地下のこんなところで領主が寝ているの?

 床には魔法陣のようなものが描かれ、床のあちらこちらに魔石が嵌められている。

 混乱する頭をフル回転させる。

 もしかして、いろいろと勘違いしている?


「一ついいかな」

「なに?」

「その眠っている男は誰? 領主じゃないよね」

「この人を、あんな人間と一緒にしないで」


 やっぱり、領主ではなかった。


「それじゃ、誰?」

「わたしのことが見えた人。わたしの大切な人よ」


 ローネは優しく男の顔に触れる。


「ユナさん、これは……」

「どういうこと? お姉ちゃんのことが見えるのは、この街の領主って人間じゃ……」

「冗談でも、そんなこと言わないで。あんな人間が」


 ローネは怒鳴るように言う。

 勘違いしていた。

 わたしたちは領主がローネのパートナーと思っていた。でも、それは違った。そこで寝ている男がローネのパートナー。だけど、どうして、ローネのパートナーが地下で寝ているの。それも痩せ細っている。

 入ってきた鉄の扉、地下室、魔法陣、魔石、痩せ細り、起きない。

 嫌な想像しかしない。


「どうやら、わたしもプリメも、街の人たちも、いろいろと勘違いしていたみたいだね。ローネ、その寝ている男とローネの関係を教えて、それとこの街の領主についても。それを聞かないと、プリメもわたしたちも、これからの行動をどうしたらいいのか、分からないから」


 ローネはプリメ、わたしたちを見る。


「……お姉ちゃん」

「分かった」


 ローネは話し始める。





やっとローネに会うことができました。

ノアも頑張りました。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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― 新着の感想 ―
まぁ、城に入る前から何となく予想はしていた展開
[一言] クマの檻とは一体どういうモノなのか、少しだけ興味があります。
[良い点] 漫画版でもにもにかじられてるのが甘噛みされてるみたいでなんかかわいかった><
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