684 クマさん、ギルマスに実力を示す
「それでギルマスは、なにか知っていることはあるの?」
「悪いが、俺も妖精のことは見たことがないから噂程度と、騎士たちが話していることを聞いたぐらいだ。だが、妖精はまちがいなく実際にいると思っている。近くに妖精が見える奴がいて、他の奴らも見えている」
「それが、領主ってこと?」
「可能性は高い」
プリメのお姉さんが、領主の魔力を使って、他の人に見せている?
そうなると、プリメのお姉さんは領主に力を貸していることになる。
囚われている線は薄い?
う~ん、分からない。
「カーラさんは領主のことは知らないみたいだけど、ギルマスは領主のことは知っているの?」
プリメのお姉さんのことも気になるが、今は領主の情報だ。
「子供のときは頭の良い少年だったな。魔法にも長けていた」
「でも、王都に行ってから、詳しいことは分からないんですよね」
「ああ、だから調べさせた」
ノアの問いにギルマスが答える。
「ギルマス、いつのまに?」
カーラさんは知らなかったみたいだ。
「別に俺が調べたわけじゃない。冒険者ギルドの伝手を使って、少し調べてもらっただけだ」
「それで」
「王都の学園でも、優秀だったらしい。魔法も勉学も」
天才ってやつ?
「それで、学生時代。あることを熱心に研究していたことがあるらしい」
「それって、もしかして」
「ああ、妖精だ。妖精のことをいろいろと研究していたらしい」
「それで、プリメのお姉さんに出会い、連れてきたと」
少しだけ、2人の関係が繋がった。
「研究していたからといって、わたしたち妖精が見えるようになるとは思えないけど」
「妖精だって、一人や二人しかいないわけじゃないだろう。たまたま多くいる妖精の中から、おまえさんのお姉さんが見えたんだろう」
ギルマスの言葉に、みんな納得する。
たしかに、妖精の森に行ったとき、たくさんの妖精がいた。あそこに集まっていた以外にもいるはずだから、かなりの数の妖精はいると思う。
それで、プリメのお姉さんと波長が合った可能性が高い。
「それでも、分からないことがあるわね。それだけなら、どうして住民から魔力を奪い、その力を騎士たちに与えて、魔石を集めさせているのか」
ローザさんの言葉にギルマスは首を横に振る。
「そこまでは俺も分からないが、妖精に関することなのかもしれない」
妖精の研究をしていたなら、十分にあり得る。
ただ、カーラさんの言葉通り、理由が分からない。
「妖精から力を抜き取るためとか……」
「お姉ちゃんの!?」
ふと、頭に浮かんだことが口から漏れ、プリメが反応する。
「いや、可能性の一つだから、そうと決まったわけじゃないよ。だから、落ち着いて」
ファンタジーものでは、妖精は特別な存在だ。
不思議な力を持っていたとしても、おかしくはない。
わたしたちが知らないだけで、妖精には凄い力がある可能性は十分にある。
妖精の研究をしていた人だ。妖精の力について知っている可能性はある。
でも、プリメの前で下手なことは口にできないね。
プリメのお姉さんが、もっと酷い目にあっている可能性もある。そんなことを言えば、一人で飛び出すかもしれない。
「そういえば、カーラさんはどうして、領主のことを聞こうとしたら危険だと言ったの?」
「この街で領主の悪口を言うと、粛清されるのよ。過去に魔力を奪われることに反対した人が酷い目にあったわ。だから、みんな領主のことは口にしないようにしているの。騎士たちに聞かれでもしたら大変だからね」
「酷いです。住民が幸せに暮らせるようにするのが領主としての役目なのに。魔力を奪ったり、酷い目にあわせたりするなんて」
話を聞いたノアがなんとも言えない表情をする。
「あなた、まだ子供なのに、立派な考え方をするのね」
「いえ、その、そう思っただけです」
だって、ノアは領主の娘だし、クリフも孤児院の件では失敗はしたけど、基本的に街の住民のために頑張っている。その親の背中を見て育ったノアにとって、この街の領主は酷い領主に映るんだろう。
わたしとしては、住民からお金を搾り取る悪政をする領主とか、女を自分の物にする領主とかを小説や漫画で見てきたので、そんな領主もいる程度には思っている。
領主に限ったことではないが、どこにでも良い人、悪い人はいるものだ。
「それで結局のところ、どうするんだ? やることは領主の目的を調べること。それから妖精の居場所を調べることはもちろんだが、魔石を集めている理由も調べたいな」
「それじゃ、俺の嫌がらせを手伝わないか」
ブリッツの言葉にギルマスが提案する。
なんでも、ギルマスは1人で魔物討伐をしているらしい。
そういえば、カーラさんがそんなことを言っていたっけ。
基本的に、冒険者ギルドに魔物討伐の依頼が来たり街道などに魔物がいたら、冒険者ギルドから騎士団に伝わることになっているらしい。
それで、ギルマスは騎士団の仕事を奪い、魔石を少しでも住民たちに回していたという。
魔石のほとんどが騎士団、領主に持っていかれるため、住民が困っていたので少しでもと思って始めたらしい。
「それでも、俺1人じゃ焼き石に水だがな。でも、少しでもと思ってな」
「他の街から魔石の購入はしないのですか?」
領主の娘らしい考えだ。
足らなければ、他の街から買えばいい。
「やっているみたいだが、それは商人や商業ギルドの仕事だ。俺が口を出すことじゃない」
それは、ごもっともな話だ。
それぞれには役割ってものがある。
国語教師が数学教師に勉強の仕方に口出しをするようなものだ。
「それじゃ、つまりわたしたちで魔物を騎士たちより先に倒して、魔石を奪うってことね」
「そっちの兄ちゃんたちの実力があればの話だが。死なれても困るからな」
ギルマスがブリッツたちを見る。
「そこのユナほどではないが、それなりに場数を踏んできたつもりだ。足手まといにはならない」
ブリッツがわたしに目を向けながら言う。
「おいおい、そのクマの嬢ちゃんほどじゃないって。それって当てにしていいのか、分からないぞ。いや、普通に考えれば、当てにならないってことになるぞ」
ギルマスがわたしを指さしながら言う。
人に指をさしちゃダメって教わらなかったのかな。
でも、ギルマスの気持ちも分からなくもない。クマの格好した女の子と比較されても、困ると思う。
だけど、ブリッツたちは顔を見合わせると笑う。
「そうね。ユナちゃんの格好を見たら、そう思うわよね。そもそも小さい女の子だし」
「ユナ、最強」
「ユナ、強い」
「そこにいるクマは、俺が知っているどの冒険者よりも強く、心優しい冒険者だ」
ローザさんの言葉に、ラン、グリモス、ブリッツたちが続ける。
「ちょ、何を言い出すの!」
恥ずかしいから、やめてほしいんだけど。
わたしは私利私欲で動くような人間だ。ブリッツたちが言うほど優しい人間ではない。
「はい、ユナさんはとっても強い冒険者です」
わたしが否定しようとするが、ノアまでがブリッツたちに同意する。
「面白い。そこまで言うなら、嬢ちゃんの実力を確認してやる。判断はそれからだ」
「ちょ、勝手に決めないでよ」
ブリッツたちの実力を確かめるはずなのに、どうしてわたしの実力を確認することになるの?
「ユナ。冒険者として、おまえが実力を隠したい理由は分からないが、ここでは隠さないほうがいい。本心を隠す者には、誰も心を開いてくれないぞ」
「うぅ」
ブリッツは、わたしの心を読んだのか、そんなことを言い出す。
だけど、ブリッツの言葉は正しいので、なにも言えなくなる。
「それに、なにかしら行動するときがあれば、いちいち心配されるのも面倒くさいだろう。ユナは一人で行動するのが好きだからな」
ブリッツはわたしの心が分かっているかのように言う。
人の心が読めるスキルなんて持っていないよね。
それで、女性の心を手玉にとって、ハーレムを築いているとか。
「それに、ユナの実力を知らずに待たせる人の気持ちも考えるべきだ。ユナのことを普通の女の子だと思えば、危険なことはさせたくない。危険なことが起きれば心配もする。でも、実力があると知っていれば、不安も心配も無くなるとは言わないが、少なくとも減るはずだ」
ブリッツの言う通りだ。
もし、騎士たちと戦うことがあれば、カーラさんやギルマスに心配をかけることになる。でも、わたしの実力を知っていれば、心配をかけることもなくなる。
もしかして、ブリッツはわたしの実力をギルマスたちに教えるために、あのようなことを言ったのかもしれない。
ブリッツの言いたいことが分かったので、ギルマスにわたしの実力を証明することにした。
わたしは冒険者ギルドに裏にある広場に移動し、ギルマスと手合わせをした。
「…………」
ギルマスが地面に手を突いている。
「信じられないわ」とカーラさん。
「流石、ユナさんです」とノア。
「やっぱり、ユナは強いな」とブリッツ。
「魔法も使えるんだから、凄いわよ」とローザさん。
「一人で、剣士と魔法使いの役目ができるしね」とラン。
「わたしもユナと手合わせしたい」とグリモス。
わたしとギルマスの試合を見ていた、ブリッツたちが、それぞれ感想を漏らす。
「クマの格好した女の子に負けた……」
わたしは不安にさせないためにもギルマスに実力を示した。
もちろん、クマ魔法などの最強魔法は使っていないよ。
使ったら、死んじゃうからね。
「ちなみに、そっちの少女は」
ギルマスは、わたしより年齢が低いノアに目を向ける。
まさか、って気持ちになっているのかもしれない。
「魔法の勉強はしていますが、戦うことはできません」
その言葉にホッとした表情をするギルマスとカーラさん。
「ノアールちゃん、魔法が使えるのね」
「はい、ユナさんに基本的なことを教わりました」
そう言って、手のひらサイズのクマの土人形を作ってみせる。
その土で作られたクマを見て、みんな感心する。
形が精密であればあるほど、魔力操作とイメージがちゃんとしていることになる。
ちゃんと、あれからも勉強はしているみたいだ。
それから、ついでに、くまゆるとくまきゅうが大きくなることを教え、ノアの護衛をしていることも伝えておく。
「俺の常識が崩れていく」
そんなことを言われても困るが、わたしにとっては異世界そのものが常識外れの存在だ。
魔法? 非常識だよ。
「嬢ちゃんの実力は分かった。ついでに、おまえたちの実力も見せてもらおう」
ブリッツたちもギルマスに実力を見せることになった。
ギルマスも強かったが、ブリッツたちも強かった。
遅くなり申し訳ありませんでした。
ワクチン3回目、副反応があり、二日ほど寝ていました。
でも、そんなに酷くはありませんでした。少し、熱が出て、寒気がして、腕が痛かったぐらいです。
二日もしたら、治りました。
あとは書籍確認作業、コミカライズの確認作業、アニメの確認作業などをしていました。
2週間休んだだけなのに、一ヶ月休んだ気分です。
あと、ユナのフィギュアが発売しました。気になる方がいましたら、活動報告にてお願いします。
それから、アプリのピッコマの漫画にて、コミカライズを描いてくださっている「せるげい先生」のイラスト色紙のプレゼントをしています。ピッコマのアプリを使って漫画を読んでいる方がいましたら、よろしくお願いします。応募期間は4/28(木)迄となっています
こちらも、活動報告にてお願いします。
※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。
一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。




