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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい依頼を受ける
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673 クマさん、ノアに転移門のことを話す

「ねえ、わたしは?」


 わたしがノアを連れて、クマの転移門が置いてある部屋に移動しようとすると、プリメが声をかけてくる。


「もしかして、わたしはお邪魔?」


 プリメは仲間外れされた子供のような表情をする。


「話を聞いていたと思うけど、誰にも話さないって約束してくれればいいよ」


 人には話せないと思うし。


「王女様にも?」

「う~ん」


 もし、妖精の森の近くに、クマの転移門を置いてもらうことなれば、説明をしていたほうがいいかもしれない。

 それに妖精の王女様に知られたからと言って、なにかがどうなるとも思えない。

 でも、言いふらされても良いこともないので。


「とりあえずは、話さないでもらえると助かるよ」


 妖精の森にクマの転移門を置くことがあれば、あらためてそのときに王女様に話せばいい。


「うん、分かったわ。わたしも約束するわ」


 あらためて、クマの転移門がある部屋に移動する。

 クマの転移門は、一応カモフラージュとして、壁際に置いてある。クマの転移門を見られても隣の部屋に繋がっているように見せるためだ。でも、普通のドアと違って大きいので違和感はありまくりだ。


「クマさんの立派な扉です。大切な物が仕舞ってあるのですか?」


 クマの転移門の扉にはクマのレリーフが彫られている。


「それがユナの秘密?」

「違うよ。実は、この扉の先はクリモニアにあるわたしの家に繋がっているんだよ」


 実際はそれぞれのクマの転移門が設置している場所だけど、そうなると説明が面倒なので、とりあえず、そう説明する。


「……ユナさん、冗談でもそれは」


 ノアの表情が「ユナさん、なにを言っているんですか?」って顔をしている。

 ここで、いくら言っても信じてもらえないので、論より証拠。

 わたしはクマの転移門の扉を開く。

 その扉の先はクリモニアにあるクマハウスの中だ。

 でも、扉の先を見ただけでは、部屋の奥に行っただけにも見えるので、ノアを連れてクマの転移門を通り、クリモニアのクマハウスに移動する。そして、窓から外を見てもらう。


「……信じられません。本当にクリモニアです」


 外は街の光が灯っている。今、お出かけ用のクマハウスがある場所は、何もないところなので、外に街の光が見えるわけがない。


「本当に、あなたたちの街なの?」


 プリメが窓に張り付き、外を見る。


「はい。間違いありません。わたしが生まれ育った街です」


 ノアは何度もわたしの家に来ているので、間違えようがない。


「人間ってこんな凄いことができるの?」

「いえ、扉を開けたら、別の場所に移動できるなんて、わたしは聞いたことがありません」


 ノアがプリメの言葉を否定する。

 今のところ、わたしも聞いたことがない。


「魔道具の一種だよ。お互いの門を繋げることで、行き来することができるんだよ。だから、ノア。もし、危険なことがあったら、この扉の中に入って、クリモニアに逃げてもらうから覚えておいてね」

「ユナさん……」

「もしもの場合だよ。ノアの身の安全が優先。だから、わたしがこの扉に入ってと言ったら、迷わずに入って。約束して」


 これだけは譲れない。

 ノアはわたしのことをジッと見てから、小さく頷く。


「わかりました。そのときは、ユナさんの指示に従います。でも、ユナさんがこんな大切な秘密を話してくれて嬉しいです。フィナにも言えないのは残念ですが」

「フィナは知っているよ」


 黙っておいても、あまり意味がないので、教えておく。


「えっ」


 わたしの言葉にノアは驚く。


「フィナには前に教えたからね」

「わたし、フィナから聞いてません」


 少し、頬を膨らませる。


「いや、フィナにも、誰にも話しちゃダメって言ってあるから。聞いてたら困るよ」

「そうですが。他に知っている人はいるんですか?」

「何人かいるけど、ノアが知っている人だとシュリとティルミナさんぐらいかな」


 ノアは和の国のサクラたちのことや、エルフのムムルートさんたちのことは知らないので、伏せておく。


「シュリと、ティルミナおばさまですか。わたしとユナさんの秘密ではないのは残念ですが、分かりました」

「あと、ついでに、これも渡しておくね」


 わたしは新しいクマフォンをノアに渡す。

 クマの転移門を教えたら、クマフォンのことも教えておいたほうがいい。後で、必要になったときに面倒だ。


「可愛いクマさんです」


 ノアは嬉しそうにクマフォンを受け取る。


「これはクマフォンって言って、遠くにいるわたしと話すことができる魔道具だよ」


 ノアは信じられないようにクマフォンを見る。

 これも論より証拠ってことで、確かめることになった。とは言っても、夜遅くに外に出かけるわけにもいかないので、クマハウスの1階と2階でだ。

 使い方を説明して、わたしは2階に上がって、クマフォンをつかってみせる。


「ノア、聞こえる?」

『あっ、はい、聞こえます』

『本当に、このクマからユナの声が聞こえるわ』


 ノアの傍にいるのか、プリメの声も聞こえてくる。

 どうやら、ちゃんと使えているみたいだ。


「こんな感じで、どんなに遠くにいても、わたしとなら話をすることができるから」

『どんな遠くでもですか?』

「とりあえず、クリモニアから王都まで離れていても、大丈夫だよ」

『そんなにですか!?』


 実際は和の国から、クリモニアまで話すことができた。


『それじゃ、王都にいるお母様とも話すことができるのですか?』

「わたしがエレローラさんと一緒にいれば、話すことができるけど。この魔道具のことも秘密だから、エレローラさんやクリフには言わないでね」

『少し残念ですが、分かりました。お父様やお母様が知ったら、使わせてほしいと言いそうですからね』


 この魔道具が実際にあるかは分からない。もしかすると、超一級品の魔道具として、王家の宝物の中にあるかもしれない。

 ただ言えることは、一般にはないので、広めても良いことはなにもない。

 それから、ノアからも使ってもらい、わたしに繋がるのを確認をすると一階に戻る。すると、ノアがはしゃぐように近寄ってくる。


「ユナさん、凄いです。このクマさんから、ユナさんの声が聞こえてきました」

「もし、わたしと離れ離れになったり、わたしがいないときに危ない目にあいそうだったら、これを使ってね」

「わかりました」


 緊急でノアと離れることがあるかもしれない。なにかの拍子で離れてしまい、迷子になる可能性もある。何事も用心しておいて損はない。

 使うことはないかもしれない。別に無駄になってもいい。後で、教えておけばよかったと後悔はしたくない。


「凄いわね。お姉ちゃんが、これを持っていれば、どこにいるか聞けるのに?」


 プリメがノアの持っているクマフォンの周りを飛びながら言う。

 確かにそうだけど。クマフォンは、わたしにしか繋がらない。


「ちなみに、フィナはこのことは?」

「知っているよ」

「うぅ、やっぱり知っていたんですか。なにかズルいです。どうして、わたしには教えてくれなかったんですか」

「クリフやエレローラさんに知られたら、困るかなと思って」

「わたし、黙ってほしいと言われれば、言いません」

「ごめん。だから、ノアのことを信用して、話したんだよ」

「なら、許してあげます」


 ノアはニコッと微笑む。


「ユナさん。先ほどの扉もそうですが、この魔道具はどこで手に入れたのですか?」

「どこで手に入れたかは秘密だよ。これはフィナどころか誰にも教えていないことだからね」


 流石に、神様から貰ったスキルで作り出せるとは言えない。


「フィナにも……分かりました。詳しいことは尋ねません」


 ノアはフィナ同様に物分かりがよくて助かる。


「それじゃ、話も終わったし、お風呂に入ろうか」

「はい」


 わたしはノアとお風呂場に向かうと、子熊化したくまゆるとくまきゅうも付いてくる。そして、なぜかプリメも付いてくる。


「人間って、温かいお湯の中に入るのね」

「妖精って、入らないの?」

「水浴びぐらいね」

「それじゃ、どうしてついてくるの?」

「わたしも一緒に入っていいでしょう。ダメなの?」

「そういうわけじゃないけど」


 わたしとノアが服を脱ぐと、プリメの服がパッと消える。


「服が消えました」

「魔力で作ってあるから、自由に消せるのよ」


 そう説明をすると、わたしたちの後を飛びながら、風呂場に入ってくる。

 確かに、羽があるから、普通に着替えたら、大変かも。


「クマの口からお湯が出ているわ。ユナって本当にクマが好きなのね」


 ここで「別にそんなじゃないよ」と否定すると、くまゆるとくまきゅうが悲しむのを経験上知っているので、そんなことは口にしない。


「クマ、可愛いでしょう」

「ユナ。あなた、変わっているわね」


 いや、くまゆるとくまきゅうは可愛いよ。

 そして、わたしたちは一日の疲れを取るために、お風呂に入る。もちろん、くまゆるとくまきゅうも一緒だ。今日、一日、乗せてくれたお礼を込めて洗ってあげる。

 プリメはお湯が入った桶に入って、気持ち良さそうにしている。


「お湯って、気持ちいいのね。ユナ、お湯がぬるくなってきたから、お願い」

「はい、はい」


 わたしは桶でお湯を掬って、プリメが入っている桶にお湯をゆっくりと入れてあげる。

 プリメは新たなお湯で気持ちよさそうにする。


 そして、ゆっくりと、お風呂に入ったわたしたちは、お風呂をあがる。


「ああ、気持ちよかったわ」


 プリメはそう言うと、パッと服が現れる。

 自由に着替えることができるみたいだ。

 ノアの髪を乾かし、くまゆるとくまきゅうも乾かしてあげて、わたしたちは寝室に移動する。


「ユナさん、一緒の部屋で寝てもいいですか?」


 少し恥ずかしそうにノアが言う。

 遠く離れた場所。両親とは離れ、不安なのかもしれない。前はフィナが一緒に寝ていたけど、今回はいない。わたしは了承して、ノアと同じ部屋で寝る。もちろん、プリメも一緒だ。

 ノアはくまゆると一緒に、わたしはくまきゅうと一緒に寝る。プリメにはカゴの中に布で作った簡易ベッドを作ってあげると、嬉しそうに布の中に入る。

 光の魔石を消し、わたしたちは眠りに就く。



遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

今年もクマをよろしくお願いします。


申し訳ありませんが、来週、もう一度、休みをいただくかと思います。

年末年始、体調を壊し、寝ていました。書籍作業もあるのに……。

でも、この3週間、ゆっくりと休ませていただきました。

たぶん、2月からは普通に週一で投稿できるかと思いますので、よろしくお願いします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字? 前話では 「女王様」 今話では 「王女様」
[気になる点] ユナはリスクを冒し過ぎては?いくら信頼のおける仲であってもここまでの情報共有は恐らく両者にリスクを背負わせることになると思います。 何にでも絶対はないので、言うにしても絶対の念押しや釘…
[気になる点] ノアが「他に知っている人はいるんですか」 の質問でエルフの村でのことを知らないからとありますが、 506章 「クマさん、ノアに会いに行く」 508章 「クマさん、ユーファリアの街を散策…
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