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くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい大陸を発見する
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661 クマさん、お城に行く

 サーニャさんから素材とお金を受け取ったわたしは、フィナたちがいるギルマスの部屋に戻ってくる。

 部屋に入ると、フィナとシュリはサーニャさんが用意してくれたお菓子を美味しそうに食べ、ティルミナさんはお茶を飲んでいた。


「お待たせ」

「終わったの?」

「うん」


 わたしが帰ろうと言うと、シュリが残ったお菓子を名残惜しそうに見ている。サーニャさんは、そんなシュリを見て、残ったお菓子を紙に包んで、シュリに持たせてくれる。

 そして、サーニャさんはギルドの外まで見送ってくれる。


「ユナちゃん、ありがとうね」


 サーニャさんがお礼を言う。

 今回のことで、クマボックスがスッキリしたし、お金も増えた。


「わたしこそ、ありがとう」


 お金が増えたからといって、何かをするわけではないけど。いざ、お金が必要になったときにないと困るものだ。お金はないよりはあったほうがいい。


「夕方までどうする?」


 冒険者ギルドを出たわたしは、ティルミナさんたちに尋ねる。


「そうね。わたしたちはゲンツや孤児院の子供たちにお土産でも買っていこうかって話していたんだけど」

「う〜ん、それじゃ、わたしはお城に行ってくるよ」


 少し、悩んでから答える。


「お城?」

「ちょっと、国王様に呼び出しを受けてね」


 後回しにして、再度呼び出されても困るし、面倒ごとは先に片付けたほうがスッキリする。


「ユナちゃん、何をしたの」


 ティルミナさんが顔を真っ青にして尋ねてくる。


「いや、別に悪いことは何もしてないよ。ちょっと、今回のイベントで提供した魔物について呼ばれたみたい」

「そうなのね」


 ティルミナさんはホッとした表情に変わる。


「ユナちゃんのことだから、国王様に何かしちゃったんだと思ったわ」


 人のことをなんだと思っているのかな。

 もっとも、とんでもない国王だったら、敵対して、何かしらしていた可能性は十分にあるけど。この国の国王はわたしが知る中(漫画、小説、アニメ)では、良い国王だと思う。横柄な態度ではないし、わたしが普通に話しても怒ったりはしない。

 ただ、仕事をサボって、食べ物を食べに来るのは、国王としてどうかと思うけど。

 上の者が仕事をサボれば、下の者の仕事が遅れると聞く。その辺りのことは周りの人が補佐をしていることを祈ろう。


 ティルミナさんたちと別れたわたしは、1人でお城にやってきた。

 お城の門の前に立つ兵士が、わたしを見る。

 そういえば、いきなりやってきて、国王に会えるものなの?

 漫画や小説だと一般人が簡単に会いたいと言って、会える人物ではない。

 まして、紹介状や手紙もない。サーニャさんから、聞いただけだ。

 エレローラさんに頼むと、貸しが作られそうだし、門番に国王に会いに来ましたと言うのもあれだ。

 わたしは思いついた。

 フローラ様のところに行けば、国王のほうから来るだろう。来なかったら、そのときに考えよう。

 そう決めたわたしは、フローラ様に会いに来たことを兵士に伝える。

 そして、いつものように顔パス、もといクマパスで門を通ると兵士の1人が駆け出す。これで、わたしがお城に来たことが国王に伝わるはずだ。

 わたしは何度も通った通路を歩き、フローラ様の部屋にやってくる。

 フローラ様の部屋のドアをノックすると、フローラ様のお世話をしているアンジュさんが部屋から出てくる。


「ユナさん?」

「えっと、数日ぶり?」


 王都に来たときにエレローラさんに拉致されて、ティルミナさんたちとお城に見学したときに会っている。


「今日はどうかしたのですか? フローラ様にお会いに来てくださったのですか?」

「国王様に呼ばれたんだけど、ここに来れば来てくれるかなと思って」


 わたしが本音を言うと、アンジュさんは驚いた表情をする。


「国王陛下に呼ばれることにも驚きましたが、国王陛下に会うためにフローラ様のところに来るのも驚きです」

「門番のところで聞こうと思ったけど、国王様のところに連絡が行ったみたいだから、いいかなと思って」

「ユナさん……」


 わたしの話を聞いたアンジュさんは、今度は困った表情をする。


「わたしがユナさんが来たことを、国王陛下にお伝えに行くわけにもいきませんし」

「別に、ここで待っていれば、来るから大丈夫だと思うよ」

「国王陛下を、そんな扱いするのはユナさんぐらいです。いえ、エレローラ様もいますね」

「えっ、わたしエレローラさんと同じ扱い?」

「とりあえず、お入りください」


 アンジュさんは、わたしの問いを笑顔で受け流し、部屋の中に入れてくれる。


「くまさん?」


 部屋の中に入ると、フローラ様がわたしのことに気付き、駆け寄ってくる。


「きてくれたの?」

「フローラ様のお父さんに会いに来たんだけど、ここで会おうかなと思って」

「おとうしゃま?」

「うん、だから、少しだけいいかな?」

「うん!」


 フローラ様は満面の笑みになる。

 そして、くまゆるとくまきゅうにフローラ様の遊び相手になってもらい、わたしはアンジュさんが入れてくれたお茶を飲みながら、国王を待つ。


「ユナさん、国王陛下がお越しにならなかったら、どうするんですか?」

「そのときは、帰るけど」


 なにを当たり前のことを。

 あの門番の兵士が国王のところに行ったのは間違いない。わたしが来たことは連絡がいっている。

 ここに国王本人が来ないにしても、呼び出しぐらいはあるはずだ。

 わたしの返答にアンジュさんは困った表情をするが、国王がフローラ様の部屋にやってきた。


「どうして、おまえはフローラの部屋にいるんだ?」


 部屋に入ってくるなり、そんなことを言われた。


「ここに来れば、会えるかと思って」

「おまえは、国王をなんだと思っているんだ」

「だって、国王様にどうやって会えばいいか、分からなかったし」

「エレローラから話をつければいいだろう」


 それも考えたんだけど。


「さっき、冒険者ギルドのサーニャさんに聞いてきたばかりだったから。それで、呼び出し理由は?」

「あの大きなスコルピオンを冒険者ギルドに渡したそうだな」

「イベントで必要だと言われたし、わたしもいつまでも持っていても邪魔だったから」

「もし、売るようなことがあれば、俺が引き取ると言っただろう」


 そんなことを言っていたような気がする。


「でも、昨日の今日でよく知っていたね」

「エレローラから報告を受けたからな。エレローラと一緒に見ていたのだろう?」


 そういえばエレローラさんは視察とか言っていたっけ。てっきり、サボる口実で言っているもんだとばかりと思っていた。

 ちゃんと仕事をしていたんだね。


「それと、コカトリスも聞いた」

「そっちのは、サーニャさん。ギルマスとエルフの村に行ったときに遭遇して倒した魔物だから」


 国王とは約束はしていない。


「ワイバーンも持っていたみたいだな」

「魔物一万匹倒したときに一緒に倒したワイバーンだよ、それも欲しかったの?」

「別に責めているんじゃない。おまえさんが倒した魔物だ。どうするかは自由だ」


 要領がつかめない。


「それじゃ、呼び出し理由はなに?」

「お前さんに確認だ。魔石は譲らないと聞いたが、誰かに売るつもりか?」

「ん? 別に誰にも売るつもりはないけど」


 単なるコレクター気質なだけだ。

 レアモノを確保しておくのは、ゲーマーとして当たり前のことだ。

 スコルピオンの甲殻とかもそうだけど、素材は本来防具にしかならない。防具は神様からもらったクマ装備があるから、これ以上の防具が存在しない限り、わたしには防具の素材は不要だ。それに、必要になったときのことを考えて全ては売らずに、一部は確保してある。

 でも、魔石は一部だけ売るってことはできない。魔石は基本的には魔物の中に一つしかない。他の素材と違って、貴重だ。

 それに、魔石はいろいろと活用の場がある。

 さらにいえば、大きい魔石はもっと貴重だということは知っている。

 大きな魔石がいきなり必要だからといって、巨大な魔物を探すのは簡単じゃないし、倒すのも大変だ。お金で簡単に買える物でもない。


「そうか、誰にも売らないんだな」

「その予定はないよ」

「それじゃ、もう一度言わせてもらう。もし、お金に困って売るようなことがあれば、魔石は俺に売れ。他に売るな」

「どうして?」

「大きな魔石は貴重だ。良いことに使用されることもあれば、悪用されることもある。お前さんも見てきただろう。デゼルトの街では水の恩恵を授け、ユーファリアの街では魔物を呼び寄せることに使われた。誰にでもできることではないが、この世には信じられないことに使う者がいる。魔石が小さいなら規模は小さいが、大きいなら規模は大きくなる」


 小さい魔石ではデゼルトの街に水を供給するのは不可能だった。クラーケンの大きな水の魔石だから可能だった。ユーファリアの街でも魔物を呼び寄せるためには、小さい魔石ではできなかったはずだ。


「国として、国王として、お前さんが持っている魔石をどうするか聞きたかったんだ」


 だから、呼ばれたのか。


「とりあえず、誰かに売る予定もないし、悪いことに使う人に渡すつもりもないよ」

「だが、お前さんが、そのことに気づかないこともある。この世には見た目は善人ぶっていても、裏では悪人ってこともある」


 それは否定はできない。

 人の本性なんて、簡単に知ることができるものではない。

 心を読むことができない限り、初対面で善悪の判断はできない。


「もし、間違った人に渡したら、そのときはわたしが責任持って対処するよ」


 言っておくけど、フラグじゃないよ。

 そもそも、渡す予定はないし。


「強い力を持つ者。強い道具を持つ者。強い権力を持つ者。間違った使い方をすれば、周りを不幸にするだけだ」


 国王は自分に言い聞かせるように言う。

 もし、クマ装備を悪意を持った人が使えば、人なんて簡単に殺せるし、街も破壊できるし、悪いことをしても、クマの転移門を使えば、簡単に逃げることもできる。

 逆に、人の命を救う勇者にもなれる力でもある。

 力は使う人によっては善にも悪にもなる。

 まあ、わたしはどっちにもならず、自分と周りの人が幸せなら、いいと思っているような人間だ。魔王の素質も、勇者の素質もない。

 でも、もし、わたしの身の回りで、脅威が迫っているなら、全力でクマ装備を使って守るつもりだ。


「話は以上だ。それで、今日は美味しい食べ物はないのか?」


 国王らしく、格好よく話していたのに、最後の一言で台無しだ。

 お昼も近かったので、わたしは和の国で買ったうな丼を出し、フローラ様を含め、3人で食べた。

 料理長のゼレフさんに謝罪をして、うな丼を渡したら、喜ばれた。

 そういえば、エレローラさんと王妃様は来なかったね。


魔石は良いことにも悪いことにも使えますので、国王の呼び出しは魔石についてでした。

でも、最後は食べ物でした。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 鰻の再登場はあるのかなと思ってたらここでか 黄金鰻は特別としてまだ出さないのかな 魔物一万ってメイドさんに聞かれていいのかな
[一言] そういえばゲーマーでしたねユナさん…
[一言] あの可愛いクマ装備に、そんな力があるとは・・・?
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