表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい大陸を発見する
656/928

633 クマさん、キングスパイダーと戦う その1

 村の中に戻ると、入り口近くに倒れていた蜘蛛が無惨な姿になっていた。


「食われているな」


 共食い。


「運が良かったな。蜘蛛の死体がなかったら、村人が食われていたかもしれないな」


 その危険もあったので、キングスパイダーが村の中に逃げ込んだときから探知スキルで位置を確認していた。

 でも、今のところキングスパイダーと思われる反応は人に近づいていない。思われるというのは、探知スキルの反応は蜘蛛扱いなので、区別がないからだ。前から何度も言っているけど、強さが違う場合は区別をしてほしいものだ。


「それじゃ、わたしはキングスパイダーと戦ってくるよ」

「簡単に死ぬんじゃないぞ」


 デボラネの口から出た予想外の言葉に驚く。


「心配してくれるの?」

「ふっ、貴様が死んだら、誰がキングスパイダーの相手をするんだ。俺様のために戦ってこい。死ぬなら、キングスパイダーを道連れにしろ」


 デボラネは勝手にわたしの死に方を決めて、ランズと一緒に村長の家に向かう。

 心配しているのか、していないのか分からない言葉だ。

 ツンデレに訳すと、「あなたのことなんて心配していないんだから、でも、気をつけてね」とデボラネが言ったと思った瞬間、身震いした。

 変な想像はやめよう。精神にダメージを受けてしまった。

 わたしは、くまゆるとくまきゅうと一緒にキングスパイダーのところに向かう。


「いた」


 家の近くに倒れていた蜘蛛を食べている。

 音が聞こえてくる。

 うぅ、気持ち悪い。

 せめてもの救いは後ろ姿で、食べている口元が見えないってことぐらいだ。

 でも、倒すチャンスでもある。

 不意打ちで悪いけど、後ろから攻撃をさせてもらう。わたしは、蜘蛛の食事が終わるのを待ったり、正面に移動して、気付いてもらってから攻撃をするなどの、正義感は持ち合わせていない。そういう役目は正義のヒーローに任せればいい。

 倒せるときに倒すのがわたしのモットーだ。


 わたしは手に魔力を集め、食事中のキングスパイダーに向けて、クマの風魔法を放つ。キングスパイダーの動きが止まったかと思うと、横に移動して躱す。

 後ろに目でも付いているの!?

 蜘蛛は目が複数あるものもいる。この蜘蛛は4つある。

 わたしが見えているのか、魔法を感じたのか、気配を感じたのか分からないが不意打ちは効かないみたいだ。


 攻撃を避けたキングスパイダーは口をカチカチさせながら、わたしたちの様子を窺っている。

 観察をされているみたいで、嫌な気分になる。

 動かないなら、もう一度攻撃をしようと腕を動かした瞬間、キングスパイダーが動く。

 読まれた?

 風魔法を放つが、速くて当たらない。

 キングスパイダーは左右に動き、動きも不規則で的を絞らせない。一瞬で止まるし、方向も変える。

 ゴキを相手にしているみたいだ。いや、わたしの家にはいなかったよ。誰に言うのでもなく、否定しておく。


 キングスパイダーは軽くジャンプすると同時に糸を出す。

 しかも一箇所ではない。

 キングスパイダーの8本の足先、さらにはお腹と口から同時に糸を出した。

 糸は網目のように大きく広がる。

 逃げ場がない。自分だけなら、避けられるが、傍にはくまゆるとくまきゅうもいる。

 頭の中で、風で切り裂く、火で焼くことが脳裏に浮かぶが、すぐに却下する。キングスパイダーの後ろには家があった。

 とっさに、土の壁を作って、蜘蛛の糸を防ぐ。

 危なかった。

 攻撃魔法で防いでいたら、糸を切るだけではなく、家を壊し、家を燃やしていたかもしれない。

 そんなことになれば、家の中にいる人が大変なことになっていた。

 安堵を浮かべていると、土壁が溶け落ちる。

 蜘蛛の糸が付いている場所から土壁が溶けていた。

 痺れ糸だけじゃないの。

 もし、森の中で痺れ糸や、こんな糸まで張られていたら、討伐は難しい。糸を切ったとしても残るし、森の中で糸を燃やせば、木々に火が移って大変なことになるかもしれない。

 村の中で戦うのも厄介だと思ったけど、森の中よりはマシかもしれない。


 溶けた土の壁の先にはキングスパイダーが家の壁に張り付いて、わたしを見ている。

 目玉がギョロッと動く。

 わたしを見ていたかと思うと、くまゆるとくまきゅうを見ている?

 家の壁に張り付いているので、どうしようかと思っていると、キングスパイダーが動き、くまゆるに向けて、糸を出す。くまゆるはとっさに後ろに躱す。

 キングスパイダーはわたしを無視して、くまゆるに向かう。


「くまゆる!」


 くまゆるは逃げる。

 くまゆるとキングスパイダーが戦い始める。わたしとくまきゅうは追いかける。くまゆるは爪から風魔法を放つが当たらない。キングスパイダーは糸を吐き出しながら、くまゆるを追い詰めていく。

 くまゆるとキングスパイダーは動き回るので、戦いに加入できない。

 わたしをガン無視だ。

 もしかして、くまゆるをわたしの弱点とみた?

 それとも、わたしより弱いところを攻め始めた?


「くまゆる、くまきゅう、送還させるよ」


 なら、送還すればいいだけだ。


「「くぅ〜ん」」


 でも、わたしの提案にくまゆるとくまきゅうは首を振って嫌がる。

 くまゆるとくまきゅうがあの糸に絡まり、溶けでもしたら困る。


「今回はごめんね」

「「くぅ~ん」」


 わたしは抗議して鳴くくまゆるとくまきゅうを送還させる。

 終わったら、撫でて、ハチミツをあげるから許してね。

 目の前で消えたくまゆるにキングスパイダーは魔力で体を真っ赤にさせる。

 言葉が通じなくても、怒っているのは伝わってくる。

 怒っているのは、わたしのほうだよ。

 大切なくまゆるとくまきゅうを殺されかけたら、わたしでも怒る。

 それから、わたしとキングスパイダーとの戦いが始まる。

 キングスパイダーは小回りが利く。村の中にあるあらゆる障害物を利用して動き回る。

 また、家の裏手に逃げる。わたしは探知スキルを使って追い、不意打ちで攻撃されることだけは避ける。キングスパイダーは身を隠すのが得意なのか、隠れた場所からの攻撃が多い。

 そして、攻撃を仕掛けると、逃げてしまう。

 ヒットアンドアウェイ。

 攻撃しては逃げ、攻撃しては逃げ。

 ヒットアンドアウェイ、わたしが嫌いなタイプの相手だ。

 もし、これが森の中だったとしたら、今以上に戦い難い相手だったはずだ。

 そして、戦う時間が長くなっていくと隠れ方が巧妙になっていく。

 屋根にいたり、回り込んだら壁に張り付いたり、物と物の裏から攻撃を仕掛けてくる。

 探知スキルはあくまで、およその位置しか分からない。屋根の上や壁に張り付いていると驚く。

 今まで、クマ装備の力で、力技で倒してきたので、逃げまわる相手は苦手だ。

 ゲームでもちょこまか動き続ける敵は嫌いだったから、この手の敵は苦手なのかもしれない。

 魔法で、家ごと吹っ飛ばしたい気持ちになるが、家の中に人がいるので、そんなことはできない。

 動きを止めた瞬間に何度も魔法を放とうとするが、家が邪魔をする。

 難しいタイミングで魔法を放てば、避けられるし、攻撃のチャンスかと思うとキングスパイダーの後ろに家があったりして、攻撃ができない。

 家がなければ、超強力なクマ魔法で倒してやるのに。

 土魔法で、閉じ込めようとするが、動きが速くて捕まえることができない。穴も躱す。落ちたとしても、すぐに登ってくる。

 壁魔法で閉じ込めようとも考えたりしたが、動きが速いので閉じる前に逃げてしまう。

 イラついてくる。

 さらにイラつかせるのは、糸を出して、わたしの行動を阻害してくることだ。

 何度か、避けられずに蜘蛛の糸を踏んだが、クマ靴のおかげで、被害はない。

 もし、普通の靴だったら、粘着力があったり、先程の酸だったりしたら、大変なことになっていたかもしれない。

 普通の冒険者じゃ相手にするのはかなり厄介な相手だ。

 ただ、キングスパイダーもわたしのことを嫌っているようで、威嚇や怒る口をカチカチさせたり、目を赤く光らせたりしている。


 でも、改めて考えると、おかしい。

 キングスパイダーが動きを止めたとき、魔法を放とうとするとき、必ず後ろに家がある。

 強力な魔法を使えば、建物ごと壊し、家の中にいる人が被害を受ける。崩れた家の下敷きになれば、命を落とすことにもなる。

 もしかして、わたしが家に攻撃できないと理解した?

 探知スキルで確認すると、キングスパイダーは家の中に人がいる家を移動している。

 まただ。

 証明するかのようにキングスパイダーが人がいる家の前で動きを止める。

 もし、本当にそうなら、この蜘蛛、知能が高い。

 魔物は人よりも強い。でも、人が魔物を倒せるのは知能があるからと言われている。

 罠を仕掛けたり、自分たちが有利な場所に追い込んだりして戦う。もちろん、動物や虫だってするが、人質をとりながら戦うとは思わなかった。

 これは、思っていた以上に厄介な相手なのかもしれない。

 わたしが、どうやって倒そうかと考えながらキングスパイダーの相手をしていると、何かが屋根の上から飛び降りてくる。蜘蛛? と思ったら剣を握ったゴブリンが屋根から降ってきた。


「おりゃ!」


 いや、ゴブリンキングだ。いや、デボラネだ。



空から美少女でなく、ゴブリンが降ってきました。


【お知らせ】

2/24にTVアニメくまクマ熊ベアーの2巻が発売します。

書き下ろし小説もありますので、よろしくお願いします。

内容は1巻の続きになります。


本日2月21日(日)19:00~24:10より、ニコニコ動画にて『くまクマ熊ベアー』#1~#12の一挙配信が行われるので、よろしくお願いします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
クモは普通に益獣扱いですがみつけたらなるべく逃すようにしてますGに対抗出来るのは猫とクモですからねー!
[一言] この戦いの本当の敵は、クモとデボラネ(の精神攻撃)かも知れない。
[一言] いえいえ、スパイダーはゴキを退治てくれる、いかした奴ですぜ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ