表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くまクマ熊ベアー  作者: くまなの
クマさん、新しい大陸を発見する
650/902

627 クマさん、くまゆると共同作業する

 一体目のタイガーウルフに少し手間取ってしまったから、二体目のタイガーウルフのところに早く向かわないと。

 探知スキルを使い、もう一体のタイガーウルフの居場所を確認する。


「うん?」


 同じ場所にタイガーウルフとくまゆるの反応がある。

 もしかして、戦っている?

 くまきゅうの反応を確認すると、こちらはウルフと戦っているようで、くまきゅうの近くにあったウルフの反応が消えていく。

 くまきゅうは大丈夫と判断して、わたしはくまゆるのところに向かう。

 くまゆるのところに駆けつけると、くまゆるとタイガーウルフが戦っていた。

 タイガーウルフがくまゆるに襲いかかる。だが、くまゆるは腕を薙ぎ払って、タイガーウルフを近づけさせない。


「くぅ~ん」


 タイガーウルフが離れたタイミングでくまゆるは爪に魔力を集め、腕を振るう。くまゆるの爪から風の刃となってタイガーウルフを襲う。タイガーウルフは躱し、さらに距離を取る。

 くまゆるの攻撃に違和感を覚える。くまゆるならタイガーウルフぐらい倒せるはずだ。まるで、手加減をして、時間稼ぎをしているみたいだ。

 くまゆるが、わたしのほうを見る。

 もしかして……。

 

「くまゆる!」

「くぅ~ん」


 わたしが叫ぶと、くまゆるはタイガーウルフに向けて駆け出す。タイガーウルフもそれに合わせるように走り出す。お互いの距離が一気に縮み激突する。タイガーウルフの爪が、くまゆるの爪がお互いを襲う。

 同時かと思われた攻撃は、くまゆるの腕が早く振り抜かれ、タイガーウルフが吹っ飛ぶ。

 くまゆるはそのまま走り出し、吹っ飛ばされて倒れているタイガーウルフの体に脚を乗せて、動きを封じ込める。


「くぅ~ん!」


 くまゆるがわたしに向かって鳴く。

 わたしはくまゆるの考えを理解して、水の魔法を作り出し、タイガーウルフの顔に水を放つ。

 タイガーウルフは暴れるが、くまゆるに押さえつけられて動けず、溺死する。


 くまゆるならタイガーウルフぐらいなら倒せたはずだ。でも、そうしなかった。

 この村に来る途中でサーニャさんから綺麗な状態でタイガーウルフを討伐してきてほしいと言われたことを、くまゆるとくまきゅうに話しながらやってきた。

 だから、くまゆるはタイガーウルフを傷つけないで倒すために、わたしを待っていてくれたみたいだ。


「くまゆる、ありがとう」

「くぅ〜ん」


 この嬉しそうな顔を見ると、わたしの考えは間違っていなかったみたいだ。


「でも、サーニャさんとの約束を守るより、くまゆるとくまきゅうのほうが大切だから、危険なことはしないでいいからね」


 サーニャさんとの約束より、くまゆるとくまきゅうのほうがずっと大切だ。

 倒せるときに倒さないで、ちょっとしたミスで怪我をしたり、逆にやられでもしたら、目も当てられない。


「くぅ〜ん」


 くまゆるが悲しそうに鳴く。

 別に怒ったわけではない。


「でも、ありがとう」

「くぅ〜ん」


 わたしがお礼を言って、頭を撫でると、今度は嬉しそうにする。


「それじゃ、村の中にいる残りのウルフも倒しちゃおうか」

「くぅ〜ん」


 くまきゅうが頑張ってくれたようで、ウルフの数はかなり減っていた。

 もしかすると、2人で話し合って、役割分担でもしていたのかもしれない。

 わたしとくまゆるがウルフ討伐に加わると、サクッと村の中にいたウルフの討伐が終わる。


「くまゆる、くまきゅう、ありがとうね」


 わたしは2人の頭を撫でてあげる。


「「くぅ~ん」」


 ウルフとタイガーウルフの回収は後にして、わたしは一番初めに会った男性の家に向かう。


「もう、大丈夫だよ。村にいた魔物は全て倒したよ」


 家に向かって言うと、ドアがゆっくりと開く。


「本当か?」


 ドアの隙間から尋ねてくる。


「本当だよ。できれば確認してもらって、討伐証明書のサインがほしいんだけど」


 男性は少し不安そうにドアを開け、家から出てくる。


「本当に、あれだけの数のウルフを倒したのか?」

「自分の目で見てもらえる?」


いくら、わたしが倒したと言っても、信じてくれなければ意味がない。それなら、倒した魔物を見てもらったほうが早い。

 男性は家から出て、倒した魔物を見ると、村長の家や他の家に向かって、安心だと言葉をかける。

 そして、村長や他の村の人が魔物討伐の確認をしてくれる。


「本当にありがとうございます」


 村長にお礼を言われる。

 初めは、わたしの格好を見て、怪訝そうな表情をしていたが、わたしとくまゆる、くまきゅうの戦いを見ていた人が村の中にたくさんいた。

 物音がして、窓から外を見ていたらしい。その人たちの言葉もあって、わたしのことを信じられなさそうにしていた人たちも、信じてくれた。

 どちらかというと、わたしではなく、くまゆるとくまきゅうが倒したと思っている人が多いみたいだ。

 まあ、実際にくまゆるとくまきゅうも倒しているので、間違いでもない。


「他に魔物はいないんだよね?」

「はい、確認されていたのは、タイガーウルフ二頭とウルフの群れだけです」


 なら、依頼完了だ。

 村に大きな被害が出る前に討伐ができてよかった。

 そして、約束どおりに討伐したタイガーウルフとウルフはいただいていく。

 せっかく、くまゆるのおかげで綺麗に討伐したのだから、持って帰らないとね。


「それじゃ、わたしは帰るね」

「もう、お帰りになるのですか? お礼もまだですが」


 村長が引き留めようとするが、おもてなしは不要だ。

 わたしの言葉に、村の子供たちが残念そうにする。

 わたしが村長と話している間に、くまゆるとくまきゅうに懐いている。

 一言、言いたい。お父さん、お母さん、子供をクマに近づけさせちゃ危ないよ。


「仕事だから、お礼は気にしないでいいよ」


 子供たちにはくまゆるとくまきゅうから離れてもらい、くまゆるに乗ろうとしたとき、村の外から誰かがこちらに向かって走ってきて、わたしたちの前までやってくる。

 長時間走っていたのか、汗だくで、息を切らしている。


「うわぁ、クマ!」


 くまゆるとわたしを見て、汗だくの男が驚く。

 いや、近くまで来る前に気づくでしょう。

 でも、息を切らして、ふらついていたから、ちゃんと前を見ていなかったのかもしれない。


「おまえは、隣村のジミー。どうした? そんなに慌てて」

「そ、村長……」


 ジミーと呼ばれた男性はくまゆるとくまきゅう、それから、わたしを見る。


「このクマたちなら安心だ」


 そのクマたちとは、わたしも含まれているのかな?


「本当に大丈夫なのか?」

「ああ、村の恩人だ。それでどうした? そんなに慌てて」

「村が魔物に襲われた」


 また、魔物?

 多くない?

 話によると男性は近くの村の人だと言う。

 その村が蜘蛛(スパイダー )という魔物に襲われたそうだ。

 名前から嫌な予感しかしない。

 蜘蛛だよね?

 都会生まれの、都会育ちのわたしは虫が苦手だ。

 特に、足がいっぱいある虫は超がつくほどに苦手だ。

 蜘蛛はゴキに続き、嫌いな虫、上位に入る。


 男性は村について教えてくれる。

 村の仕事をしていると、蜘蛛(スパイダー )が現れたそうだ。初めは村の全員で倒そうとしたが、一匹だけでなく、何匹も現れて、混乱し始めたと言う。

 そんな中、村長に隣の村に助けを求めに行ってくれと頼まれて、ここまで走ってきたと言う。

 そして、この村に来るときに蜘蛛(スパイダー )に襲われたが、冒険者に助けられたそうだ。


「あの2人が助けてくれなかったら、俺は蜘蛛(スパイダー )に殺されていた」

「その冒険者は?」

「分からない。通りすがりだった。一応、村の現状は説明したが、村に助けを求めに行けと言われて」


 冒険者とは別れ、村に向かったと言う。

 その冒険者が強くて、蜘蛛(スパイダー )討伐に行ってくれていたらいいんだけど。

 さて、どうしたものか。

 足がたくさんあり、あの口に、あの気持ち悪い動き。いくらクマ装備があっても、精神は守ってくれない。


「……ユナさん」


 村長が困った表情でわたしを見る。

 普通の魔物なら、気兼ねなく倒しに行ってあげるけど、蜘蛛(スパイダー )だ。聞かなかったことにして、帰りたい。

 蜘蛛だ。できれば戦いたくない。

 他の人に任せられるなら、任せたい。

 でも、見捨てるわけにはいかないよね。

 わたしは小さくため息を吐く。


「あっちに村があるんだよね」

「ユナさん!?」

「行ってくるよ。でも、無理そうだったら、他の冒険者に頼むよ」


 見捨てて、後から蜘蛛(スパイダー )に食われたと聞いても後味悪いし。


「村長、本当にこの嬢ちゃんに頼むのか? 危険なんだぞ」

「ユナさんは、このような格好をしているが、タイガーウルフとウルフの群れから村を救ってくれたお強い人だ」

「だが……」


 だけど、村長の言葉を後押しするように、村の人たちが声を上げる。


「その嬢ちゃんなら、強いから大丈夫だ」

「俺、タイガーウルフと戦うところを見た」

「くまさん、強いよ」

「別にわたしのことは信じられないならそれでいいよ。他の冒険者に頼めばいいだけだし」

「すまない。村にも嬢ちゃんぐらいの娘がいる。とても、あんな魔物と戦えるとは思えなくて。もし、嬢ちゃんが蜘蛛(スパイダー )に食われでもしたら……」


 どうやら、わたしのことを心配してくれていたみたいだ。


「魔法は使えるし、この子たちもいるから大丈夫だよ」


 わたしはくまゆるとくまきゅうに目を向ける。

 男性はくまゆるとくまきゅうを見ると、頭を下げる。


「村を頼む」


 男性を助けた冒険者が蜘蛛(スパイダー )を討伐してくれていたら、ラッキーと思うぐらいにして、村に向かうことにする。

 とりあえず、現状の確認だ。

 わたしはくまゆるに乗る。


「くまゆる、くまきゅう。行くよ」

「「くぅ〜ん」」


 男性に聞いた村に向かってくまゆるとくまきゅうを走らせる。

 お互いの村の位置を考えると、もしかして、タイガーウルフとウルフは蜘蛛(スパイダー )から逃げてきたのかもしれない。

 はた迷惑なこともあったものだ。



あけましておめでとうございます。

去年はクマをありがとうございました。

後半は投稿が遅くなったり、できなくなったりして申し訳ありませんでした。

アニメ2期も決まりましたが、今後の予定は分からない状況です。

今後も投稿が遅くなったりするかもしれませんが、その辺りはご了承ください。

今年も、時間がある限り、投稿していきたいと思いますので、今年もクマをよろしくお願いします。


※活動報告にて、コミカライズ6巻のSSのリクエストを募集中です。

51話から60話までのお話で、SSを読みたいとおものがありましたら、よろしくお願いします。

パッシュUPの公式サイトにて51話~59話まで公開中です。60話は1月27日となっています。

もし、リクエストがありましたら、活動報告のほうにお願いします。



※年末調整などをしないといけないため、投稿はしばらく、日曜日にさせていただきます。

楽しみにしている読者様には、ご迷惑をおかけします。


※誤字を報告をしてくださっている皆様、いつも、ありがとうございます。

 一部の漢字の修正については、書籍に合わせていただいていますので、修正していないところがありますが、ご了承ください。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  クマさん、くまゆると初めての愛の共同作業? おめでとう!おめでとう!おめでとう!(パチパチパチ)
[気になる点] 先に向かった冒険者2人は誰かな? [一言] あけましておめでとうございます。 更新ペースを気になされているようですが、週刊連載と思えば速いペースと思います。
[良い点] くまゆるくまきゅうは手加減も出来るのか・・・! [気になる点] 次回、もしかしてユナ史上最大のピンチ(精神的に)になるのでは? [一言] タイガーウルフ、ゲットだぜ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ